■Innocent victims 番外編■
今日の私はめちゃくちゃご機嫌だ。
何故かと言うと、うまく城から抜け出すことができたから。
どうして城を抜け出すのかと聞かれると…私は24時間お城で働いてる。
ていうか私は、普通の7歳児である。青春もまだなケツの青い7歳児である。
それなのに、国の大臣を務めているうちのクソオヤジのせいで
私よりひとつ下のお姫様の面倒を見なくてはならないことになった。
これがまた我侭でやんちゃなミーティア姫様で。
毎日彼女の面倒を見て…早くも人生に疲れてしまった。
毎日毎日すごく疲れて、以前勇気を振り絞って城を抜け出したときに見つけた洞窟。
花畑はあるわ泉はあるわで、人生に疲れた私を癒してくれる場所。
その洞窟で昼寝したりお菓子を食べるのが生き甲斐だ。
そう、私の唯一の安らぎの場所。
城を抜け出してはその場所に逃げ込む。
けど、おなかがすいたらちゃんとお城に戻るのだけど。
最近、家出(?)の常習犯になってしまって、兵士たちが私を見張ってたから
なかなか抜け出せなかったけれど、今日やっと抜け出せたのだ。
ふふっ、奴らのメシに眠り薬仕込んでおいた甲斐があるってもんだよね。
そんな物どこから入手したかというのは企業秘密ということで。
最近はモンスターもでるらしいけど、この大量の聖水と
兵士と姫様とのおっかけっこで鍛え上げられた私の逃げ足があれば平気。
さーて、やっと洞窟に着いた。
「は?」
洞窟に入ると、私の目には一人の少年が映る。
幻覚かと思って、一旦目をこすってみたけど幻覚じゃないらしい。
少年は明らかにそこにいる。しかも堂々と寝ちゃってるし。
「わ、私の憩いの場…。」
どうしてやろうかこのガキ…。(自分も子供だけどさ)
子供というものは独占欲が強いってこと、知ってますか?
子供は動物と同じなのよ。
自分のテリトリー侵されるのが嫌いなのよ。
そう、姫様に私の部屋を独占されたときはそれはもう頭にきましたとも。
そんなわけで、私は少年に起きてもらうことにした。
「ちょっと君!人の憩いの場で堂々と寝てんじゃねぇよ…じゃなかった。
こんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ?ほーら、起きて起きて!」
とっととどこかに消えて欲しい。
せっかく苦労して城を抜け出してきたんだもん。早くくつろぎたいよ。
「んー…。」
少年は眠たそうに両目をこすり始めた。
そして、ダルそうに焦点の合っていない目を開ける。
次に、少年の黒い瞳が私を映した。
「誰?」
「あんたこそ誰さ。」
一国の大臣の娘たる者がすんごく失礼なセリフ吐いてしまったと思う。
ごめんなさい。姫様のせいで結構性格歪んだと思う。
人のせいにするなとよく言われるけど、私は本当のことを言っている。
「ごめん。僕はエイト。で、君は?」
「私はよ。見かけない顔だけどどこから来たの?家は?」
「わかんない。」
「そう、わかんないの。…は?」
一瞬流してしまったけれど、「わかんない」って何?
迷子ってワケ?うわぁ、やっかいなのに関わっちゃったなぁ。
「迷子ってこと?」
「…違う。僕、記憶がないんだ。気づいたらここにいたんだ。
自分の名前はわかる。あと、一緒にこのねずみが一緒にいた。」
エイトはポケットから一匹の可愛らしいねずみを私に見せた。
エイトに懐いている様子で、とてもおとなしくて賢そうなねずみだ。
ていうか、何。エイトは記憶喪失ってこと?
自分でこけて頭打って記憶喪失になっちゃったなんてアホなオチじゃないよね?
でも、本当にエイトはどこから来たんだろう。
城内の子供はみんな知ってるしエイトは今日初めて見るし絶対に城の人間じゃない。
かといって、他の町から来たとしても子供だけでここまでこれる距離じゃない。
もしかして、捨てられた、とか!?
可愛そうに。それしか考えられないよね。
今ここでエイトを助けてあげられるのは私しかいない…。
放っておいてもいいけれどそこらでのたれ死なれちゃなんとなく私が困るし。
「行くところがないなら私の住んでるお城に来る?トロデーン城っていうんだけどね。
食べ物もあるし、寝るとこもちゃんとあるから。私がトロデ王様に頼んであげるよ。」
私はエイトに手を差し伸べてあげると、溜息をついた。
一方、エイトは目を輝かせながら嬉しそうに私の手を取った。
人助けをしたことに、ちょっとだけ鼻が高くなった私だった。
昔話。
執筆:04年12月13日
修正:04年12月30日