1話 神鳥に導かれた少女



ドラゴンクエスト8。
スクウェア・エニックスの誇る日本の代表的なRPG。
流石に最新作とだけあって、
今までのドラクエとは比べ物にならないくらい素晴らしい物だ。
何といってもエイトがかっこいい。エイト可愛い。エイトステキ。
エイト最高。ああ、エイト様v・・・なんて。私、エイトが大好きだよ。
実は、初恋だったりしちゃうというのは秘密です。

そうそう。レティスを手に入れてから、何故だか鳥が飼いたくなってしまって
私は先日ペットショップで鳥を買ってきました。何の種類かはよくわからないけど
レティスに似た可愛らしい鳥。しかもレティスと名づけました。
ドラクエ8の影響はすごいです。

そんなドラクエ8も、もうエンディング。
あとはラプソーンを倒すだけ。

長かった・・・。
レベル上げなんて本当に面倒で、お金もすぐなくなるし。

レティスを手に入れてからはスライムの高台でメタル狩りしまくりで
私もメタル狩りが得意になってしまった。
やっぱり、メタルを狩るときはヤンガスの大まじん斬りが一番。
あとはエイトとククールによるメタル斬り!
エイトかククールには、はぐれメタルの剣を装備させておけばOK!
はぐれメタルを倒すときはいつもエイトに期待しちゃいます。

ふ、思わず熱くなってしまったわ。
とにかく、私が熱くなれるくらいメタル狩りは楽しいって事ね。

さってと、オーブも7個集めたしそろそろレティスに
ラプソーンのところまで連れて行っちゃってもらおうかな。
よーしよし。ククールは賢者の石を持たせてあるわね。
ゼシカには光のドレスを装備させてないよね。
あんな味方の回復呪文を跳ね返してしまうものはラスボス戦には厳しいからね。
さ。行くか。

ああ、ドキドキする。
レティスの上で戦うエイトたち。全員が7回、杖に祈りを捧げる。
攻撃開始。回復。攻撃。回復。攻撃。回復・・・。
そして、ついにラプソーンは倒れた。

なんっだ!意外と弱いじゃないラプソーン!!もう、ドキドキして損した!

図体がでかいだけね、ラプソーン。
まぁ、はぐれを制覇した私(ていうかエイト)に、もはや敵はなしってことだろうか。
とにかく、いよいよ待ちに待ったエンディングが拝める。

「やっぱエイトはカッコイイvいいなぁ。私もエイトと一緒にレティスの上に乗ってみたいよ」

と、なぜかスタッフスクロールはまだ始まらないようだ。

レティスがエイトたちをトロデーン城に連れて行ってくれる。
トロデとミーティアの呪いが解ける。

ミーティア姫・・・私は彼女を好きにはなれない。
だって、ミーティアは絶対エイトのこと好きだもん。
あーあ、私がゲームの中に入れたら、絶対・・・。
って、そんなこと、絶対にありえないんだけどさ。
だから、せめてエイトにはフリーでいてほしいんだ。

トロデーンではパーティーが開かれ、大騒ぎ。
その後、ミーティアの結婚式。
どうやらエイトが、ミーティアの護衛をするらしい。

・・・行きたくない。嫌な予感がする。

私は渋々エイトを操作する。
もう、早くエンディングを見てしまいたい。
ミーティア、やっぱチャゴス王子と結婚するのかな。
してよ。しないと・・・やだ。エイトを取らないでよ。

サヴェッラ大聖堂で執り行われるミーティアとチャゴスの結婚式。
さー、拝むとしますか。クソ王子と馬姫のご結婚の瞬間を。
・・・って。何!?ミーティアが逃げたーーー!!?
うわうわ!!やっぱり嫌な予感的中ー。
このままじゃ・・・







『ヤバイ!このままじゃ・・・』







突然、聞こえてきた誰かの焦った声。

そう、このままじゃヤバイんだよ!

は?何これ。誰かの声が聞こえる。
この部屋には私一人なんだけど・・・?
あとは、うちのペットのレティスだけ。

「誰?誰なの?!」


『あれは・・・レティス?頼む・・・レティス!』

その瞬間、プレステ2の電源がブチッと切れた。
ぎゃああああああああああ!!!!何でさーーーーーーー!!!?
せっかく、せっかくもうすぐED…。

私の目の前は真っ暗になった。

一体何が起きたのか、私には理解できなかった。
突然、どうして。ああ、ショックだ…。

そして、今の声は誰の声なの?











「うそん」

気がつけば私は宙に浮いていて。
そして、誰かの上に落ちた。

「ぎゃあ!!」

「痛ってーーー!!」

腰がとても痛む。

ていうか、誰だか知らないけどごめんなさい。でも、ありがとう。
私の下敷きになってくれた人にちょっぴり感謝。

その私の下敷きになってくれた人は私を助けてくれた代わりに気を失ってしまったようです。
ていうか・・・ここ、は・・・どこ。

「誰だか知らんがナイスじゃ!」

私は目の前の人物に絶句した。
自分の目を疑ったけど、これは現実で。
なななななんと、人間の姿に戻ったトロデが私に
親指をおったててウインクをしていたからだ。

ちょっぴりキモイとか思ってしまったことは秘密☆

いやいや、それよりも、どうしてこんなところにトロデがいるのさ。
しかも周りを見てみればみんな鳥山先生の絵・・・?
ていうかドラクエ8の世界の住民たち。
あのちょっとだけ、ぱっと見がドラゴンボールのトランクスに似たような人もいれば
ドラクエ7のマリベルに似ている人もちゃんといる。
さらにはトロデの後ろに花嫁姿のミーティアもいるし。

どうなってる、の?

もしかして、もしかしなくとも、ここってドラクエ8の世界ってヤツですか?
そうとしか考えられないよね。この場所、まるっきり見覚えがあるもん。
ここ、サヴェッラ大聖堂入ったところの階段だし。うんうん。
さっきまで、私がやっていたところだもん。ちゃんと覚えている。

でも、何で。
何がどうなって私はここに来てしまったんだ。
どうやってゲームの中に入ってきたの?!
スクエニ、そんな技術ありませんよね!?

ふと、上を見れば、ちゃーんと聖堂と法皇様の住居がでーんと構えていた。

そういえばゴルドの一件以来マルチェロを見ないけれど
彼は一体どこに行ってしまったのか。
・・・って今はそんなことじゃなくてこの状況を何とかしなくちゃ。
このなんだかわからないけれど兵士に囲まれているという最悪な状況を・・・。

襲い掛かる兵士たち。

どうやら私を敵とみなしたらしい。

「ヤダーーーーー!!こっちくんなーーーーーー!!」

武器も防具も持たない少女に武器振り回すなんて卑怯だ。

私はキャーキャーと絶叫しながら武器を振り回してくる兵士たちから逃げ回る。
咄嗟に、さっき私が下敷きにして気絶させた兵士の
持っていた武器を手にとって私に襲い掛かってくる兵士に対抗する。
でも、やっぱりトロデとミーティアを後ろに庇いながらじゃ
防ぐのが精一杯で反撃ができる状態じゃない。
こんな状態が長引けば体力のない私が確実に負ける。

そんなのは嫌だ。せっかくドラクエの世界にきたのに。
帰ったら友達に自慢できると思ったのに。
せっかくエイトとお話できると思ったのに。
まだ会ってすらいないじゃないーっ!!!

「いい加減やめてよ!!!!」

ていうか、帰れるなんて保障は一切ないんだけどさ!!!

私は武器をぶんぶんと振り回す。
すると、運良くスキができて、私に襲い掛かってきた兵士のデコに直撃。
打ち所が悪かったのか、その兵士は気を失ってしまった。

あ、れ?これってチャンスかな。

私が今倒した兵士がいなくなったおかげで逃げる道ができた。

「でかしたぞ娘!よし今のうちだ!!」

突然、私の後ろからトロデがミーティアの手を引っ張りながら走り抜ける。
と、そのとき私の手が誰かに掴まれた。

「君も走るんだ!早く!!」

「え・・・あなたは・・・」

あまりに突然のことに、持っていた武器を思わず落としてしまう。
この人のオレンジ色のバンダナを巻いた頭、肩から下がっているはぐれメタルの剣。
ま、ま、まさか・・・この人は・・・エイト・・・。
私、今エイトに手を引っ張られながら走ってる。

うわぁ、どうしよう!なんかすげぇぞ!ホンモノのエイト!!

「誰だかはわからないけれど、助けてくれて有難う!」

傷だらけの顔で、振り返って優しげに私に微笑んでくれるエイト。
ヒー!ヒー!ホンモノのエイト!!(落ち着け私)
喋ってるよ!しかも私、話しかけられちゃったしっ!!

う、うそぉ!これ本当に現実?私、すごく幸せだわ!!
何が嬉しいって、片手はエイトに掴まれてて、エイトが私に微笑んでくれている。
只今有頂天ウハウハです。お父さん、お母さん。私、今死んでも悔いはありません。
・・・って、ここで死んでしまったらダメだよね。せっかく萌えてる真っ最中なのに。












エイトに手を引かれて、そして逃走して数分。
兵士が追いかけてこなくなったところでエイトは走るのをやっとやめた。

はい、私どちらかというと文系なので、体力ないんですよね。
だから今ものすごく息が切れているわけで。
もう、恥ずかしいです。でも、苦しいです。
こんな疲れきった姿をエイトに見られちゃうなんて。はぁ。

エイトたちはいいわよね。
いつも動いてるからこんだけ走っても苦しくないでしょうよ。

「ぜぇぜぇ・・・」

「大丈夫?無理に走らせてごめんね。」

「ええ、まぁ・・・・・・あ、いえ。大丈夫。」

息を切らして辛そうな私を心配そうに見つめるエイト。
ていうか、個人的にはどうしてミーティアとトロデが息切らしてないのかが不思議だ。
どう見たってこの二人は私と同タイプだと思ったのに。
やっぱり旅をしてこの二人も体力をつけたのだろうか。特にミーティアは。

「それにしても・・・君は突然空から降ってきたよね。もしかして、僕がレティスに祈ったから・・・?」

レティス?
レティスって、あのラプソーン戦で
エイトたちを上に乗せてくれてた神鳥レティス?
「祈った」って何?何のこと?エイトがレティスに?
わけがわからないんですけれど。

「あのさ、話が見えないんだけど詳しく説明してくれないかな?」

冷や汗をかきながら首を傾げる私に、
エイト、トロデ、ミーティアの全員が哀れみの眼差しを向ける。

え、ちょっと、何でそんな目で見るのですか。

「そうだね。この子にも事情を説明しないとな。」

コホン、と咳払いをするのはエイト。

そんな仕草が間近で見れてとても嬉しいです。
いや、ドラクエの世界に来れたこと自体嬉しいです。
普通の子は「帰りたい」って思うかもしれないけど・・・
私、ドラクエ好きッ子だし。腐女子だし。何よりもエイトに会えたことが、嬉しい。
そのせいなのか不思議と帰りたいとは思わなかった。
変、なのかな私。でも、本当のことなんだから仕方がない。

「僕はエイト。君は・・・たぶん神鳥レティスに召喚されたんだと思う。
君を召喚したのは、このミーティア姫の結婚を阻止するためだったんだ。
僕が、レティスにミーティア姫とトロデ王を助けて欲しいって
レティスに祈ったから・・・君が召還されたのかも知れない。
でも、レティスはもう何処かに行ってしまった。
・・・もしかしたら君は家に帰れないかもしれない。」

エイトが申し訳なさそうに言う。
ああ、そういえばあの時部屋で声を聞いたっけ。
あの声、今思えばエイトの声だったんだね。

「そっか、帰れないのか・・・。」

ていうか、レティスって召喚なんて技、あったっけか?
いや、そもそもリアルの世界とゲームの世界を繋ぐ事なんて無理のはず。
仮に繋がっていたとしても、何故私が召喚されたのか。

どうでもいいけど、帰れなくていいからエンディングが見たいんだけど。
このまんまで通常エンディングを見れるのかな?
私がこの世界に来てしまったことでストーリーが変わっちゃったかも知れない。

せっかくラプソーンを倒したのにな。
折角メタル狩りしまくったのにな。

「ゴメン・・・僕、近衛隊長のくせにまだ未熟で…
僕が自分の力でどうにもできなかったばっかりに君を…。」

もう、通常エンディングは諦めた方がいいかもね。
とにかく今はこの状況を大いに活用して萌えよう。
エイトが、今、ここに、私の目の前にいるんだもんね。

「いや、過ぎちゃったこと仕方ないよ。それに、私は別に困ってないし。
だから、そんなに自分を責めないで?」

「本当にごめん」

ミーティアは悲しげな表情をするエイトに視線を向けた。
その後、ミーティアは私を見て微笑みながら頭を下げた。

「あなたのおかげでミーティアはチャゴス王子と結婚せずに済みました。
本当に感謝しています。でも、ミーティアのせいであなたに迷惑をかけてしまって。
エイトのせいではなく、これもミーティアが婚約者の
チャゴス王子との結婚を躊躇ったせいなの。」

しょんぼりと俯いてしまったミーティア姫に、トロデが駆け寄った。
ていうか、今何気にミーティアってばエイトを庇ったよね?
もしかしてそれってミーティアがエイトのことを好きだからだったりしちゃうかな。
・・・なんか、悔しいな。好きな人(キャラ?)と目の前でラブコメされるのって。

「いや、あのさ。別に私はミーティア姫のこと責めてないし恨んでもないから。」

不意に。私の声のトーンは低く、暗くなってしまった。
私に言葉に、しーんと沈黙してしまう。
私ははっとして、無理やり明るく振舞ってみせた。

「えっと、とにかく気にしないで、ね?私、帰れなくても平気だから!
誰のせいでもないし。運命だよ運命。デスティニー!人生もっと楽しまなくちゃ!」

自分、何言ってるんだろう。馬鹿馬鹿しい。

だけど、ミーティア姫は「ありがとう」と囁いた。
そして、エイトが申し訳なさそうな顔をした。

なんか、虚しいよ。
そんな顔しないでよ、エイト。

「・・・そうじゃ!そういえば、おぬし名前はなんというのじゃ?」

突然笑顔なトロデに訊ねられて、私は小さく答えた。

「えと・・・っす」

「わしはトロデ。こっちはわしの一人娘のミーティア。
こっちはわしの城の近衛隊長を勤めているエイトじゃ。」

私の両手を取って、ぶんぶんと握手を交わすトロデ。
もしかして、私を元気付けようとしてくれてる?
ありがとう、トロデ。でも緑のモンスターのときのほうが可愛かったよ。

ああ、私、せっかくドラクエの世界に来れたのにこんなに
ショボーンとしてちゃダメだよね。もっと楽しまなくちゃ。
家にだって、いつか帰れるはず!何か方法があるはず!!
うん、プラス思考だ。

・・・つか、これからどうすればいいんだ。
うげふっ。プラス思考だと決めた途端マイナス思考になってしまった私を許してください。
でも、本当にどうすればいいのかわからないのです。
まさかこのまま一人帰る方法を探せなんて鬼のような発言をしないことを願います。

「あの。私はこれからどうすれば・・・」

「それなんだけどさ。」

エイトが、突然私の手を取った。
あまりの不意打ちに、私はビクっと反応してしまった。
あ、あの・・・エイトさん??

「僕が責任を取って、エイトを元の世界に戻してあげたいと思うんだ。」

優しく微笑みかけてくれるエイト。

「ということは・・・?」

「トロデ王、僕はと一緒にレティスを探す旅に出ます」



トリップ夢ってすっごい書きやすいと思いました。

執筆:04年12月28日
修正:06年1月9日