成長過程



「ねーぇーマルチェロ、…私この町嫌。早く帰りたい。」

「…そうだな。」

マルチェロの部下であるは、マルチェロと一緒に仕事でパルミドに来ていた。
は、マルチェロをとても気に入っていてマルチェロもまた、のことを気に入っていた。

二人は修道院内で知り合った少し年が離れた幼馴染みでもあり、昔から仲がよかった。
親がいない者同士、すぐに馴染めたし、互いの性格も考えも似ているところがあった。
そのため、二人はそろって聖堂騎士団に入団して苦楽を共にするなど
まるで本当の兄妹のように振る舞ってきた。

今ではマルチェロは聖堂騎士団の団長、も副団長を務めている。

「ねぇ、マルチェロ」

「どうした

「早く仕事終わらせて早く帰ろうね?」

「ああ。そうだな。」

マルチェロはあたりを見回して眉をしかめた。
ごろつき、不良、盗人…。
このパルミドのことは噂には聞いていたが、予想以上に酷かった。










一人で町中を歩くことになってしまったは警戒しながら歩いていた。

いざとなれば腰元にある剣がある。
それに自分はマルチェロと何度も剣を交えてきた。
何があっても平気。

そう何度も自分に言い聞かせながら。

はパルミドの町を少し歩いて、眉間に皺を寄せた。

早く仕事を終わらせて帰ってしまいたい。

たち聖堂騎士団の今回の仕事は、ニノ大司教のパルミドでの警護だった。
ニノ大司教がパルミドに何の用があるのかは知らないが
とにかく今は早く用事を済ませてほしいとは思う。

その時だった。
ふと、視線を感じて横をちら見すると、ガラの悪そうな男達がいやらしい目付でを見ている。

関わり合いになりなくないと、が急いで道を曲がろうとした時。

「おい、姉ちゃん。お前、マイエラの聖堂騎士団だろ。」

最悪だった。

関わり合いになりたくなかったのにと目を細める
ここで無視すれば話がややこしくなるかもしれないと思い、は男達に向き合った。

「そうですが。」

が答えると男達はにやついた。

「へへ、それは勇ましいことで。
天下の聖堂騎士団も女が副団長じゃナメられて当然だよなぁ?」

「な…っ!私は…」

ちゃん、だっけか。聖堂騎士団がけなされて悔しいか?けどな、本当のことなんだよ。」

男達はの様子を見てあきらかに楽しんでいた。
しかし、は聖堂騎士団を馬鹿にされて黙ってはいられない。

斬り殺してやる。

は自分の剣を即座に引抜いた。
しかし、背後から体を押さえ付けられて身動きが取れなくなってしまう。

「まだ仲間が…!?」

「しまった」と思っても、もう遅かった。
剣は取り上げられて、体はそのまま壁に押さえつけられた。

「ほーら、やっぱり弱い。所詮女だな。」

男達がけらけらと笑う。

悔しくて、悔しくて。

は抵抗しながらこの道を通ったことを後悔した。

男達が躊躇いなくの頬に触れてくる。
は身動きが取れないため、ただされるがままだった。

虫酸が走る。

「やめ…っ!」

どんなに抵抗しても、男達には敵わない。
相手は複数、こっちは一人。

「へへっ、いつもマルチェロ団長に触ってもらってんだろ?この可愛い唇も、体も。」

マルチェロはこんなことしない…!

は強く念じた。

いつだってマルチェロは自分に優しくしてくれて、
いつでも助けてくれて…
そんなマルチェロのことを、自分はいつも尊敬している。

「マルチェロは…こんな馬鹿みたいなこと…しないんだからっ!!」

が叫ぶと、男達た一瞬黙ったが、すぐに笑いだした。

「しない?マルチェロ団長はこういう気持ちいいことしないのか!!
なら、お前の処女は俺達のものか!」

突然、ゲラゲラと笑う男達の顔つきが変わる。

ごめん、マルチェロ…!

はぎゅっと目を瞑った。
男達の手が、の服の中に侵入しようとした…その時。

「私の部下に何をするつもりだ。」

がそっと目を開けて、その瞳に映ったのは

マルチェロ、だった。

今まさに、間一髪のところでマルチェロが助けに来てくれたのだ。

男達は、マルチェロの鋭い眼光に怯え始め、から手を放した。

「いや、このお嬢さんが迷子…みたいだったんで。へへ…。」

「なら、私が冷静でいられるうちにどこへなりと立ち去れ。
…次に私の部下に手を出したら、私も何をしだすかわからんからな?」

男たちを睨み、マルチェロは不敵な笑みを浮かべて剣を抜いた。
一瞬にして顔を真っ青にした男たちは、悲鳴を上げて逃げていく。
残されたは、怖さのせいか、未だにしゃがみ込んで震えていた。
マルチェロはに手を貸し、ゆっくりと立たせてやる。

「大丈夫か、。」

「べつに。でも…」

は言葉を切り、マルチェロを睨んだ。
小さな体が、小刻みに震えている。
マルチェロは、を「意地っ張りだな」と思いつつ「何だ」と訊ねた。

「助けに来るのが遅い!すごく怖かったんだから!!」

「バカ!」とマルチェロの胸に殴りかかり、は涙を浮かべた。
マルチェロは、そんなの頭を優しく撫でる。

「よしよし。すまなかったな。」

「子ども扱いしないで。バカ。」

ついには子供のように大声で泣き出してしまう。
マルチェロは「みっともない」と呟き、自分の胸にの顔を押し当てた。

が不意をつかれるなど、珍しいこともあったものだ。」

「だ、だって。複数いるなんて思わなくて。」

「もっと考慮すべきだ。考えが甘い。」

「…はい。」

見下すようなマルチェロの言葉に、は俯いてしまう。
しかし、マルチェロは優しく笑んだ。

「とにかく、間に合ってよかった。
の処女は、がもう少し大人になってから私が奪う予定だったからな。」

「…え。それってどういう意味…」

「…さあ、どういう意味なのだろうな。」

マルチェロは口元を緩ませ、小さく笑う。
しばらくして、マルチェロの言った意味を理解したは真っ赤になってしまった。

「子ども扱いしないでって言ったじゃない!!」

「…そういうところが子供なんだ。」

違う意味で理解されてしまったマルチェロは、深くため息をつく。
まだまだ、と結ばれるまでの道のりは遠いようだ。


執筆:05年1月11日