子作りの仕方



それは唐突過ぎることだった。

「ねぇ、子供ってどうやったらできるの?」

純粋なリディアの瞳が好奇心でキラキラと光っていた。
セシルたちはぽかーんと口を開けてアホヅラを曝している。
そうか…リディアは体は大人になったけれど、一般知識は子供並みなのか。
私はリディアの肩にぽんと手を置き、微笑んだ。

「せっくs」

バシンッ!といい音が、私の上の方から聞こえた。
それと同時に頭部に激しい痛みが伴う。

!直球すぎる!」

私はセシルに思いっきり叩かれたのだった。
小声で怒鳴られた私は頬をふくらます。

「じゃあ!どう答えればいいの!」

リディアに聞こえないように会話のやり取りをする私とセシル。
当のリディアは怪訝そうに私達を見ていた。

「もっと穏便に表現しよう」

そうセシルに言われたものの…。
私は悩んだ。とっても悩んだ。この子相手にどう答えればいい。

「そうね…私は口で説明するのは下手だからとりあえず皆に説明してもらおうよ」

私の言葉に、リディアは首を傾げたが、何とか了解してくれたみたいだ。
ふふふ、こうなりゃ他力本願だ。
あとは頼んだぜ、仲間達!
セシルとエッジ、カインが苦笑する中、ローザだけは楽しそうに笑っていた。






「じゃー、まずはセシルが説明してよー」

ケッ、と悪態をつき、セシルに振った。
セシルは「僕!?」という顔をした後、眉間に皺を寄せて唸り出した。
しばらくした後、何かを思いついたのか口の端がつり上がった。

「お互いに愛し合うんだよ」

「うーわ、あながち間違ってはいないけど結局リディアには具体的に伝わらなそうな答え」

セシルの回答に即座にイチャモンをつける私。
そしてセシルは無言のまま笑顔で私を見た。
怒ってる。明らかに怒ってる。

「そうね、の言うとおり、具体的にわからないわ」

そう言ってリディアが苦笑した。
どうやらリディアも私の意見に賛成のようだ。ほーれ見ろ!

「じゃあ次は俺様が教えてやるぜ!」

エッジはどんと自分の胸を叩く。
そして、服の中から何やらごそごそと取り出した。
そこから出てきたのは…エッチな本だった。
表紙の時点でハダイロが目立つ。
それをリディアに手渡すと、「これを読めばわかるぜ」と笑った。
リディアは何のためらいも無くパラパラとページを捲り、しだいに顔を真っ赤にしていった。

「やだ…女の人の裸がいっぱい…!!エッジのえっち!!」

即座に詠唱し、サンダガをエッジに使うリディア。
エッジは黒焦げになってその場に倒れた。
いや、リディア。えっちって…、赤ちゃんはそうしてできるものだから…。

次に挑戦するのはローザだった。
ローザは優しく微笑んでリディアの頭を撫でた。

「赤ちゃんはコウノトリさんが運んでくるのよ?」

ローザの一言で、一瞬場の空気が凍った。
リディアは困った顔をして

「でも、コウノトリさんはどこから赤ちゃんを連れてきてくれるの?」

と訊ねた。
ローザは「そうね…」と呟いた後

「コンニャク畑じゃないかしら?」

というテキトーな答えを返した。
…コンニャク畑?コンニャクは畑では取れないと思うんだけれど。
そして、その「つまらなくなってきたわー」的な顔はやめてくれ。
結局、ローザの答えには納得しないリディアだった。
いや、これは流石に私も納得できないけれど。


「で、残りはカインだけなわけだけど」

セシルが興味深々にカインを見ていた。
カインは「仕方が無いな」と言って鼻で笑った。

「リディア、しっかり見ていろ」

カインの言葉に頷くリディア。
ん?カインは一体何をする気だ?

「好き合ってる男と女が合体すればいい」

「合体だ」という掛け声を上げて、カインは私に抱きついた。





何  コ  レ  。





「何だ、その顔は。不満か?」

そう言ってカインは私の服に手をかけた。
おま…っ!何をする気だ!
コラコラコラ!脱がすな!脱がすんじゃない!!
どこを触っている!!?

「……」

私は一瞬微笑んだ。そしてカインの顎めがけてバンチを繰り出す。
パァンといい音を出しながら私の拳はカインの顎を直撃。
カインはそのままその場に倒れこんだ。

「カイン。、嫌がってるよ?好き合ってないし、カインの一方通行だよ?」

リディアが倒れているカインを哀れな目で見下ろす。
カインは「そ、そんなはず…!」と涙目だ。

「真っ昼間から…しかも僕達の目の前で何をしようとしていたのかな?カイン」

セシルは指をボキボキと鳴らしながら真っ黒な笑みでカインを見下ろす。
その後ろではローザがホーリーの魔法の詠唱をしている。

「いや…だからリディアに子供の作り方を的確に教えようと…」

カインが起き上がり、顔を真っ青にしている。
私はそっとカインの前にしゃがみ込み、目線を合わせた。
私と目が合ったカインは少しだけ照れくさそうに笑う。
私も、ニッコリと笑った。

「それだったら私が最初から”セックス”と言ってもよかったんじゃない?」

私はセシルとローザに習い、釘バットを構える。

「え…ちょ…待っ…!」

カインが制止をかけるけれど、私達はそれを無視した。
カインの叫びが木霊する。

「そもそも”せっくす”って何かしら…?結局、子供ってどうやってできるんだろう」

リディアは一人、親友のポーチカと一緒に首を傾げていた。





執筆:08年1月26日