※5話くらい(ゲーム本編開始前)のお話
※男装名前の設定をお願いします



 ・ポレンディーナは、実家であるリンドブルムの商業区にある合成屋で店番の傍ら、趣味である兵器の開発に勤しんでいた。スパナを持つ手は器用に部品たちを固定させ、あと少しで完成する……はずだった。

ーッ! ウチらを助けたってや!!」

 店の扉をけたたましく開けて飛び込んできた突然の来訪者によっての手が止められる。は間延びした返事をしながらカウンターまで出向いた。
 来訪者――タンタラス団の紅一点であるルビィは、今にも泣きそうな顔でカウンター越しにの肩を掴んでを激しく揺さぶった。

「ルビィ、ルビィ、落ち着いてくださいー。そんなに慌ててどうしたのですー?」

 慣れとは恐ろしいもので、はルビィの揺さぶりに動じることなく彼女を宥める。
 というのも、ルビィがタンタラスに入りと知り合って以来何度も同じような事があった。ブランクがルビィの機嫌を損ねた時、みんなが芝居に集中しない時……最初はも慌てて対応していたが、何度も同じようなことがあれば流石に冷静でいられるようになる。

「あんなぁ、ボスや男共がギャンブルに手を出してボロ負けして帰ってきたんや! おかげでタンタラス団の貯蓄が底を尽いてん……ほんま、貧乏まっしぐらやねん!」

「ええっ!?」

 いつもは微笑ましい愚痴ばかりをこぼすルビィだったが、今回ばかりはいつものようにルビィの話に相槌を打つだけで済まされる内容ではない。

「劇場は今月いっぱい別の劇団が使うからウチらは使えへんし、かといって盗賊業も程々にせんとやし……」

 ルビィの言葉に、は自分の金銭事情を思い出す。自分の貯金は多少はあるが、タンタラス団を養えるだけの金額はない。

「すみません、何とかしてあげたいのですがわたしの稼いだお金はほとんどトーレスおじさんに渡してしまっているので……」

「いややわ、に養ってもらうつもりなんてないんよ! ただ、商人様の人脈でタンタラス団みんなの分の仕事先の斡旋をお願いしたいんや」

 頼った人物が天才技師とはいえ流石に一人の少女に養ってもらうつもりはない。ルビィは苦笑いを浮かべると、の頭を優しく撫でた。
 は顎に人差し指を当てて考える。しばらくして、口の端を上げた。

「でしたら、タンタラス団で劇団でも盗賊でもない新しい仕事を始めてみるというのはどうでしょうか? わたし、機会があったらやってみたいなって思っていたことがあるのですよー!」

 胸の前で両手を合わせてにこりと微笑むに、ルビィは一筋の光明を見た気がした。



※ ※ ※ ※ ※



 が提案したのは、目標金額に達成するまでの間タンタラス団のアジトで『執事喫茶』を営むことだった。
 主に女性をターゲットにした、新しいタイプの喫茶店だ。

「タンタラスのメンバーは男性ばかりですので、女性をターゲットにしたお店なんてどうかなと思ったのですよー」

 最初は乗り気ではなかったメンバーたちも、いつもと違う服を着てテンションが上げながら準備に取り掛かっている。

「それで、この格好か」

 燕尾服姿のジタンがくるりと回ると上着の燕尾が翻り、はうっとりとしながら嘗め回すようにジタンを見つめて感嘆の息を漏らす。

「はぁ、やっぱり素敵なのです。ジタンに執事の格好をして欲しいがために提案した甲斐があったのですー」

「相変わらずジタンしか見えてへんのね、この子」

 隣でルビィが半笑いを浮かべるが、彼女の言葉はジタンに夢中になっているには届いていないようだった。

「お嬢様、お茶は如何ですか?」

 の態度に気を良くし、調子に乗って執事になりきるジタンがに微笑む。は顔を真っ赤にしながら胸元を抑え、興奮したように黄色い声を発した。

「きゃー! やめてくださいです! ドキドキしすぎて胸が苦しいのですー!」

「お嬢様、それは一大事です! この私が胸をさすりましょう!」

「すみませんありがとうございますたった今不思議と治ったので大丈夫なのです」

 のテンションが戻り、ジタンのセクハラ作戦は失敗に終わる。二人のやりとりを半ば呆れながら見ていたルビィとブランクは――

「何であの二人付き合ってないのん?」

「もどかしいだろ。見てると段々イラついてくるぞ」

「大丈夫や、もうとっくにイラついとるわ」

 二人が人目を憚らずにイチャつくくせに全くくっつかないことに若干苛立っていた。

「ところで、喫茶店といってもオレたち大した料理なんて作れないぞ? 大丈夫なのか?」

「料理はオーソドックスにオムライスやサンドイッチ等の軽食といった普通のもので構いません。この喫茶店は料理も提供しますがメインは接客なのですよ。おもてなしを……いいえ、萌えを売るのですよー!」

 突如二人の世界から戻ったジタンとがビジネスの話を進め出すと、手を止めていたメンバーたちが再び準備を再開する。

「萌えが何なのかよくわからないけど、接客なら任せろ! オレのおもてなしでレディたちを癒してやるぜ!」

「はい、その辺りはジタンのお力を存分に発揮して頂けると助かるのです!」

 ――わたし的には、少々複雑な心境ではありますが。

 の小さな呟きは誰かの耳に届いたのだろうか。

「ブランクたちも演技力で乗り切ってください。普段通りではダメです。今回のコンセプトは執事なので、女であるわたしとルビィさんと調理担当なのです。あと、コーヒーに詳しいシナさんも調理に回って欲しいですー!」

 の説明を聞いていたマーカスが申し訳なさそうに挙手をし、が「マーカスさん、どうぞ!」とマーカスを指名する。発言権を得たマーカスは頬を掻いた。

も手伝ってくれるッスか?」

「はい、初日は様子を見させて頂きながら改善点等を模索していきたいので手伝うのですー! 合成屋の方は、修行中のウェイン兄さんに実践させるいいチャンスだとトーレスおじさんからの了承を得ていますのでご安心を!」

「流石、は抜かりないずら!」

 ジタンが絡むと特に手回しが早い、ということはジタンと以外の全員が思ったが、あえて誰も口にしなかった。

「ところで、ボスは接客枠でええのん?」

 ルビィの疑問に、静寂が生まれる。果たしてあの豪快なバクーに執事なんてできるのだろうか。否、できるはずがない。
 が目を瞬かせた後、ニッコリと笑った。

「ボスには、ビラ配りをお願いするのですー!」

「ガハハハハ! 任せろ!!」

 の名案に、一同はホッと胸を撫で下ろす。

 かくして、翌日からタンタラス団は期間限定で執事喫茶に変身するのだった。



※ ※ ※ ※ ※



「今日の成果ですが……思ったより盛況ではありましたが明かに人材不足ですね。接客は人気のあるジタンに集中しがちでしたし、ブランクも余裕がなくなるとたまに地が出てしまったので、最悪接客枠をもう一人増やしたいところですねー……」

 初日を終えたタンタラス団の会議で、顧問によりリザルトが報告される。目新しい喫茶店という事もあり、客足は上々ではあったが、肝心な執事の人材不足になってしまい、それをどう補うのかが課題だ。

も料理を焦がすわ皿を割るわで大変そうだったけど……体調悪かったのか?」

「はうう、体調は悪くないのですが、面目ないですー……」

 ジタンが心配そうにを見るが、はジタンから目を反らした。

「女どもに群がられるジタンを見てたらも冷静じゃいられねぇよな」

 に耳打ちをするブランクが悪戯っぽく笑う。言い返せないはただただ俯いて反省するしかできなかったが、自棄を起こしてブランクに向かって啖呵を切る。

「わかりました、今日の失敗を挽回するために、本気出しちゃいますから!!」

「おい、ブランク! に何を言ったんだよ! 、元々お前は手伝ってくれてるだけでもありがたいんだから、それ以上頑張らなくてもいいんだぜ!?」

 タンタラスのメンバーではないはずなのに誰よりもやる気の炎を燃やすを必死で宥めるジタン。

「とにかく、だ。人材の件は今からじゃどうにもならねぇし、今日だって悪くなかったんだ。明日もこのメンバーで頑張ろうや」

 ガハハハと豪快に笑いながら部屋を出て行くバクーを合図に会議はお開きとなった。
 は腕を組み、自分の記憶から執事を頼めそうな知り合いを思い出す。しかし、なかなか難しい問題だった。
 やはりバクーの言う通り明日も今日の延長という形でやるしかないのだろうか――それは商人としてのプライドがそれを許さない。

、人材補充の件で提案があるねんけど、ちょっと……」

「え? は、はい」

 会議の時からずっと黙ったままだったルビィが笑みを浮かべながらの腕を引く。
 外に出て、周囲に誰もいないことを確認すると、ルビィはようやく口を開いた。

なら、接客も慣れてるやろ?」

 その質問の意図がわからなかった。
 は首を傾げ、小さく「はい」と答えるが、何故か不安を抱かずにはいられない。

「女性ならではの細やかな気配りもできて、お姉様方に愛されそうな雰囲気を漂わせとるし、めっちゃええ物件やと思う」

「まさか……」

 ようやくルビィの思惑を察したが顔を引き攣らせると、ルビィは興奮気味に捲し立てた。

、調理係はクビや……そして、明日からは男装して接客係や!」

「ええ?! そんな、無理ですー!!」

 ルビィの突飛なアイディアに、は目を回した。
 男装して、自分が接客をする――そんなこと、きっと上手くいくわけがない。そう決めつけて。
 しかしルビィには自信があった。会議中にずっとの顔を見つめ、シミュレートして、何故か絶対に上手くいくという確信が沸いたのだ。そのためにはを説得しなくてはならない。その策とは――

はジタンが女の子たちに囲まれるんは嫌なんやろ? それは今日一日隣にいてひしひしと伝わってきたで。明日もきっとジタンは女の子たちに囲まれて、は同じ失敗を繰り返す……それなら、ジタンの客も奪えばええ。ならそれができるって、ウチの勘が言ってるんや」

「ジタンのお客様を、奪う……」

 ジタンという餌をチラつかせれば、の攻略なんて余裕だ。それはジタン以外のタンタラス団全員の常識であった。もちろん、はそんな常識があることなんて知らないし気づいてはいない。

「わかりました。わたし、引き受けるのですよ!」

 チョロいヒロイン、略してチョロイン。はその言葉がお似合いである。



※ ※ ※ ※ ※



 翌日、時間になってもが現れないことに不安の声が上がるタンタラス団。その中で特にジタンは落ち着きなく動き回っていて、すぐにでも彼女を迎えに行く勢いだった。しかし、どっしりと構えたバクーがそれを制止する。

「寝坊でもしたんだろ? 今ルビィに迎えに行かせてるからお前は大人しくしてろ」

「……わかった」

 ジタンは苦虫を噛み潰したような顔で俯いた。
 そこへ、丁度ルビィが帰ってくる。ジタンはぱっと顔を上げるが、の姿はなかった。代わりにルビィの隣にいるのは見たこともない大人しそうな少年だ。

「残念なお知らせがあるんや。なんと、今日は本業の方のお客さんの急な依頼が入ってしもて、手伝いに来れなくなったんや。そこで、の代打で来てくれはった、くんや!」

「えっと、です。皆さま今日はよろしくお願いします」

 と名乗った少年は、周りを見回して一礼をする。顔を上げると、ジタンと目が合った。

 ――雰囲気はどことなくに似ている。

 ジタンはに近づいて手を差し伸べ、は微笑みながらジタンの手を取った。

「よろしくな! はこの辺りじゃ見ない顔だけど、旅人か何かなのか?」

「あー……そうですね、行商人をしているのですよ。とはその縁で知り合い、今日は代わりにお手伝いに来ました」

「……を呼び捨てかよ」

 急にジタンの表情が険しくなったことに、少年ことは焦り始めた。口調も表情も普段の自分とは違うように演じている。もしかしたら、演じることを仕事にしているジタンにはそれがわかってしまったのだろうかと不安になる。

 ――ジタンだけにはバレて欲しくない。

「はいはい。かて年頃の女の子やし、あんな可愛いんやからジタン以外にも仲のええ男の子の一人や二人おるやろ。それに……」

 ルビィがすかさずフォローに入り、そしてジタンの耳元で呟く。

のこと、狙ってるかもしれんやん?」

「――っ!?」

 それは結果的にジタンの闘争心に火を点けただけだった。

 は自分にべったりだし、絶対に自分の事を好きだと安心しきっていた。しかし、はまだ自分の恋人ではない。何がきっかけで他の男に奪われてしまうかわからないのだ。この目の前の少年だって、のことを好きかもしれない。だからこんな仕事を引き受けたのかもしれない。

 ジタンはルビィの言葉に目を丸くした後、不敵に微笑みながらの前で仁王立ちした。はたじろぎながらジタンを見つめる。

の知り合いだからって、負けないぜ?」

 そう宣言して、の肩を軽く叩く。一方は頭にハテナを浮かべながら口元に人差し指を当て、首を傾げた。

「そろそろ開店の時間ッス!」

 マーカスの一声で、それぞれの所定の位置につく。
 定刻になり、扉が開かれて二日目が始まった。

 もう、昨日のような失敗はしない。少しでも多くジタンと女の子たちをくっつけないように、頑張らなきゃ。

 は拳を握り、決意する。今日の自分は女性たちをもてなす癒し系執事になるのだ。それはもう、全力で。
 本日一組目の客――女性二人が入店すると、は即座に姿勢を正す。そして女性客二人の目をしっかりと見ながら微笑むと、

「おかえりなさいませ、お嬢様」

と、柔らかな声で迎えた。そんなの柔和な態度と中性的でまだあどけなさの残る少年のような容姿に口元を緩めた女性客二人は、お互いの顔を見ながら黄色い声を上げる。
 が早速女性客二人を席まで案内する姿を見たタンタラスの面々は感嘆の声を上げるが、ジタンだけは眉間にしわを寄せた。

 それから、執事喫茶はすぐに満員になり外には若い女性を中心とした列ができ始める。
 接客担当で着慣れない給仕服に身を包んだブランクは忙しさが増すにつれて徐々に態度に粗が出てしまい、とうとう料理を運ぶことに専念するようになってしまった。しかし、ジタンとは変わらずに執事らしく女性客たちをもてなしている。

「おかえりなさいませ、お嬢様。こちらのテーブルへどうぞ」

 忙しくなっても笑顔を絶やすことないジタンは、女性の扱いに自信があった。普段、声を掛けたりデートしている彼は、女性客が圧倒的に多いこの仕事にはやりがいを感じていたし、誰にも負けないと自負している。
 しかし――

「なんだ、くんは向こうのテーブルかぁ」

 そんな、女性客の何気ない一言にジタンは一瞬だけ表情を硬直させる。早くも口コミで広がっているのか、の接客を期待していた女性客が残念そうに呟いた事が、かなりショックだったのだ。
 昨日に続いて「ジタンに会いに来た」という女性たちは何人かいた。それはジタンにとってとても嬉しい言葉だったが、今目の前の女性客に呟かれたそのたった一言がずしりと重く圧し掛かる。

「――はは、申し訳ありませんお嬢様。私も精進いたしますので、ご容赦ください」

 ジタンは奥のテーブルで別の女性客にひざ掛けを掛けているの姿を見て舌打ちしたくなったが、なんとか堪えて笑顔を崩さないよう努めた。

 その後も、は固定ファンを着々と作りながら完璧に仕事をこなしていき、その度にジタンの心は憔悴していった。



※ ※ ※ ※ ※



 営業終了後、タンタラス団は打上げで酒盛りをしていた。
 そこには、男装の姿であるから普段通りの装いに戻ったの姿もある。

「いやー、一時はどないなるか思ったけど、やっぱに相談してよかったわー! たった二日間だけでこんなに儲かるなんて、めっちゃ助かったで!」

 いい感じに酔いが回ったタンタラスの面子は、労働の疲れも忘れて盛り上がっている。ルビィが「いい子いい子ー」と隣に座っていたの頭を撫でまわすと、そこへブランクも便乗してルビィの反対側からの頭を撫で始めた。酔っ払いに囲まれたは苦笑いを浮かべるしかない。

「もういっそ盗賊から足を洗ってこっちを本業にした方が儲かるんじゃねぇの?」

「兄キ、それはさんの功績が大きいからッスよ。しかし、さんは一番頑張ってたのに謝礼もろくにオレ達に貰わずに協力してくれて、本当にいい奴ッス」

はもう旅立ったずら?」

 突然あまり触れてほしくない話題を振られ、は目を丸くした。

「へ?ああ、はい。さ、先程次の街に行商に行くと言ってお別れしてきたですー」

か……すごかったよな。最後なんてもうのファンしかいなかったし……まったく、女どもはあいつの何がいいんだろうな?」

 女心はわからねぇ、と腕を組むブランクを中心に、話題は自然と『の魅力について』になった。の正体を知っているバクーとルビィはニヤニヤと笑いながら差当たりの無いように会話に参加していたが、ジタンだけは黙っていた。
 知られていないとはいえ、秘密にしている自分のことを話題にされて同じく黙っていたはルビィとブランクから脱し、ジタンの隣に腰かけた。

「ジタン、お疲れのご様子ですね」

 そっとジタンの顔を覗き込むと、ジタンはどこか元気が無いようだった。

「お前の代理で来てくれた、すごい奴だったよ。接客応対も完璧。女性への気配りはもちろん、常に女性の気持ちをよく理解しながら動いてさ」

「そ、そうなのですかー?」

 はジタンに褒められ、思わず表情が緩んでしまう。しかし、ジタンは浮かない顔をしたままだった。

もああいう奴が好きなんだろ?」

 そう言って、から視線を外す。

「…………」

 ジタンの元気のない理由を察したは、首を横に振った後ゆっくりとジタンに寄りかかった。

「わたしはさんよりも、ジタンの方がいいのです。さんは女の子のことはわかっても、わたしのことはあまり知りません。でもジタンはわたしのことならよく知っているので、色んなことに気が付いてくれます。ジタン、いつもありがとうですー」

 がにこりと笑えば、ジタンもつられて笑顔になる。
 ――どれだけの女性がを選んでも、ただ一人の大切な女の子が自分を選んでくれたのだ。
 ジタンはの頭をぐしゃぐしゃとやや乱暴に撫でる。は小さな悲鳴を上げて乱れた髪を手櫛で整えた。

……オレ、今日から専用の執事になるわ」

 ジタンはの手に自分の手を重ねる。は驚きながらジタンを見て、両手を左右に振りながら拒絶した。

「だ、ダメですよ! わたし、尽くされるよりも尽くす方が好きなのです!」

 大好きなジタンのためならば、何だってしてあげたい。――それが、のいつもの思考だ。尽くされるなど、考えられない。

「じゃあ、尽くしてもらおうかな!」

 そう笑ってジタンがの膝の上に頭を乗せた。は驚愕して口をパクパクさせるが、ジタンが気持ち良さそうに目を閉じているのに気付くと、そっとジタンの頭を撫でる。

「ご主人様、お仕事お疲れ様でした」

 いつのまにかバクーの宴会芸で盛り上がっているタンタラスのメンバーたち。ジタンがに膝枕をしてもらっていることに気付いてブランクが怒声を上げるのは、まだしばらく後のことだ。



執筆:16年8月21日