私は人間だった。




だけど、同じ学校だったとある女子が憎くて殺してしまった。
其の子は私の好きだった男の子を、私が好きなのを知っててわざととったんだ。
もちろん、人を殺した事で警察に捕まることはわかってた。
でも、私はその前に自ら命を絶った。
あの女のせいでブタ箱で生活送るくらいなら、私も死んだ方がマシ。



ああ、これが死ぬってことなのかぁ。




意識が遠のいていくとき、悪魔を見た気がした。

「オレさまと来い」

そう言われた。
ちょっとかっこよかった…気がする。
気づいたら私はこの魔界にいて…というのが今までの経歴。







「御機嫌よう、殿下。このワタクシめを家来にしてくださいませ!」

殿下との出会い。それが今まさに其の最中。
魔界ではいいアルバイトが見つからなくて、人のいいドラゴンさんにいいバイトは無いかと
相談したら「殿下の家来になれば給料も相当もらえるんじゃないか」と言われて、今ここにいる。
お給料もらって、お金をためて。
そしたら「オレさまと来い」って言ってくれたあの人を探すんだ。
勝手にこんなところに連れてきて、私を独り置き去りにするなんて酷すぎる。
何でこんなところに連れてきたのか、問い詰めてやらなくちゃ気がすまない。

魔王城にやってきて、只今失礼ながら殿下の寝室にて殿下にお願い中。
が、返事はない。

「殿下ー…?」

ちょっぴり不安になって失礼承知で殿下の棺桶をそっと開けてみる。
すると殿下は涎をたらしながら幸せそうに眠っていた。
律儀なことに、両手を胸の前で握りながら。
そんな殿下を見て、少しだけ笑ってしまう。
そう、あまりにも子供っぽくて。ていうか子供だ。
年は私と同じくらい、かな?

しかし、意外だ。
自分はもっとこう大人の方を想像していたのだ。

今は亡き魔王クリチェフスコイ様の一人息子で
次期魔界の魔王になるかもしれないお方だと聞いてたし。

多少期待を裏切られたものの、そんなことは給料に関係ないだろうから放っておこう。
まずは殿下を起こして家来にしてもらわねば肝心のお金はもらえない。

全てはお金のため。

「殿下ー。起きて下さいよー!私のお金のためにー!」

反応は全くない。

「殿下ーっ!」

耳元で騒いでもダメ。くすぐってもダメ。頬をペチペチ叩いてもダメ。

「ほら、殿下ー?起きないとチューしちゃいますよー?」

と、冗談を言ってみる。まぁ、聞こえていないのでしょうけど。
私はハァと殿下から背いてため息をつく。

「ほう、それは楽しそうだな?」

突然の言葉に、ばっと後ろを振り返るとそこには殿下が腕を組みながら仁王立ちしていて。

いつの間に起き上がったんですか殿下。
しかも冗談が通じてないご様子で。

「あー、おはようございます殿下。そして初めまして、私、っていいます。
一応生前は人間をやっておりまして。只今新米悪魔をやらせていただいております。」

「そんなことはどうだっていい。早くオレさまにキスをしてみろ。」

フフンと不敵に微笑む殿下。
ちょ、あの。信じんなよ。

「いやですねー。冗談に決まってるじゃないですか。私は家来になりに来ただけです。」

「冗談か。…別によいぞ。家来にしてやっても。」

殿下はあっさりと答えると、棺桶から出てきて私の前に立つ。

「おお、すんなりと!ありがとうございます、殿下!」

給料に大期待!今からとても楽しみだ。

「そのためにお前を悪魔にしたのだからな。」

殿下はクククと喉で笑う。

はぁん?今、何て言った?
私を家来にするために、私を悪魔にした?

「どういうこと、ですか?」

「死んだお前を悪魔にしたのはこのオレさまだ。オレさまは見ていたんだ。お前が人を殺す様をな。」

お前の事を気に入った、と殿下が笑う。
それじゃあ…私をここに連れてきたのは、今この目の前にいる殿下?
……こ、このやろう。




01.殿下と私




「殿下、今から私は貴方に忠誠を誓います。」

私がそう言うと、殿下は満足そうに微笑んだ。
しかし、私のお腹の中では真っ黒な感情が渦巻いていた。
コイツが隙を見せたら最後。後ろからグサリとやってやる。
よくもこんなところに連れてきやがって、覚えていやがれ。




執筆:04年9月27日
修正:10年5月4日