ある夏の昼下がり。
その日は特別暑かった。今年一番の猛暑だと、天気予報でも言っていた気がする。
そんなうんざりする暑さの中で、私はシャーマンの修行(という名の散歩)をしていた。

「ふぅ、暑いわぁ」

コンビニで買ってしまったアイスをかじりながら歩き続ける。
とりあえず、この暑さなら歩くだけでも修行になるのではないかと決め付けていた。
ふと、熱気が強くなった気がした。
その直後、アイスは一瞬でドロリと溶けて、私の手の上でベトベトになってしまった。
あまりにも嫌な予感がしたので、構えながら後ろを振り返る。

「やぁ、。今日こそ僕の仲間にならない?」

ニッコリと私の肩を抱こうとしたハオをギリギリのところで避け、私は笑った。

「嫌だよ面倒くさい」

何故かハオに気に入られてしまった私はここ最近ずっとこんな感じ。
特別強くは無いと自負している私。
そんな私のどこに魅力を感じて仲間に誘うのかが全くの謎。

「あはは、今日も即答か。昨日も一昨日も言ったよね…もっとよく考えてねって」

クスクスと小さく控えめに笑うハオであったけれど、その中に重みが感じられた。
背後にはスピリットオブファイア。
私なんか、ハオがその気になれば一瞬で殺される。
それでも、私はこのハオについていくことだけはしたくなかった。
そう、なぜならば私には想い人がいる。
ハオの仲間になるという事は、彼を裏切る結果になってしまう。

「いい加減、何故私なんか誘うのか教えて欲しいんだけど。何でなの?」

私はそうハオに質問した。
今まで何度か聞いたけれど、そのたびにはぐらかされてしまって明確な答えは得られずにいた。

「そうだな、は強い巫力を秘めているから…僕の元で修業すれば今の数百倍は強くなれるからね」

「…確かに、強くなりたいけど、でも私は――」

「まぁ、それは建前でね。本当は僕がを嫁にしたいからさ」

ハオはそう言うと私の身体を抱き寄せ、横抱きにした。
突然の事に、私は為す総べなくハオにされるがままだ。

今、ハオは嫁にしたいって言った?私を…!?
ハオは、私のことが好きなのか!?

いやいや冷静になれ私!少しでもときめいてしまった私のあんぽんたん!

「や、やだーーー!人攫いーーーー!うわあああああああああん!!!」

ハオに攫われようとしてるこの状況をどうにか…したいけれど
思った以上にハオの腕力がすごくてビクともしない。
やだもう、何でこんなことに…誰か…蓮助けて!
…なんて思ったところで来ないのが現実だけど、大好きな蓮に助けを求めずにはいられない。

「貴様、から離れろ」

……へ?え、えええ!?
なんというタイミングで現れてくれた、私の大好きな人!
白凰に跨りながらハオに馬孫刀を向けてる蓮…めっちゃかっこいい!!

「蓮っ!」

私はハオに横抱きにされたまま目を輝かせる。
するとハオは不機嫌そうに口の端を上げて蓮を睨みつけた。

「ふーん…白馬に乗った王子様の登場かい?」

白馬改め白凰だけどね!

「ハオ、をどうする気だ」

「どうするって、は僕の嫁にするのさ」

「嫁…だと!?」

蓮の問いにハオがニヤリと笑いながら答えた。
おかしいよ、おかしいでしょ!私にだって選ぶ権利はあるはずだ!
ハオの嫁になんてなったら蓮の嫁になれないじゃないか!そんなの困る!

「いいいいいやああああああ!ハオの嫁なんかになりたくないー!」

私の悲鳴を無視してハオがスピリットオブファイアを出した。
やばいやばい、これはマジで連れて行かれちゃう。
無理無理無理無理!私の未来予想図の邪魔をさせてたまるか!
思いっ切り暴れてやると、ハオはバランスを崩し、私の足が運よくハオの股間に見事クリーンヒット。
ハオは一瞬動きを止め、だんだん顔を青くしてからその場に崩れ、微動だにしなくなった。

私は即座に蓮の後ろに隠れると、ハオに向かってべーっと舌を出した。

「き、今日のところは諦めてあげる…!」

顔を真っ青にし、股間を抑えながらプルプルと生まれたての小鹿のように立ち上がるハオ。

バカだこいつ!

って思っていると、蓮が私の手を引いて白凰に乗せてくれる。
蓮の前に座らされ、私は蓮に後ろから抱きしめられる形になった。
やばいどうしよう胸のドキドキが蓮に伝わっちゃう恥ずかしいうあああああ!!!
そして、蓮は更に追い討ちをかけてきた。

「諦めるも何も、こいつはオレのものだ」

「んなっ…!?」

蓮の言葉に驚いて振り向くと、蓮と私の唇が重なる。
もう私の顔は真っ赤だ。一方ハオの顔は真っ青だ。

「…そ、そういうことだ」

蓮の顔もだんだん赤くなっていく。


白馬に乗ったトンガリ王子



(ど、どういうことだ)
(だから、オレはお前の事が…っ!!)



執筆:02年8月15日
修正:12年8月27日