「やべぇ、ミンクたん超かわいいんですけど!」
恋人であるベルの部屋で、ベルの匣平気である嵐ミンク(ヴィゾーネ・テンペスタ)と戯れていた。
ちっさい頃のベルにそっくりで、やたらと愛着がわく。
ティアラを頭に乗せてるのはベルの趣味なのかな。
そう問いかけたらきっと「だって、オレ王子だもん」という答えしか返ってこないだろうけど。
それにしても、ミンクたん…あまりにも可愛くて、食べてしまいたくなる。
私がミンクをぎゅーっと抱きしめれば、
ミンクは慌てて私の腕の中から逃げ出して、定位置であるベルの肩へと避難した。
「ししっ、嫌われてやんの」
「ちっ、見た目は可愛いのに性格が可愛くねぇなー」
「どっかの誰かさんみたいにね」って笑えば、ベルが「あ?誰だよ」と笑う。
おめーだよ、おめー。悔しいから何も言わずに心の中で毒づいてやる。
「オレはミンクと違ってのこと好きだけどな」
そう言って、ベルが私のことをぎゅーっと抱きしめてきた。
う、おおう。苦しい、苦しいですぜ、ベルさんよぉ。
スキンシップとってくれて嬉しいけれど、身体が悲鳴を上げてるのよ。
「ふが…っ、今、ミンクの気持ちがわかった気がする…」
次にミンクを抱きしめるときは、もっと力加減とか考えようと心に決めた。
「ミンクは別にお前が抱きしめるから逃げるんじゃないんだぜ?」
「は?私、ミンクに何か嫌われるような酷いことしたっけ?全然思い当たる節がないんだけど…」
ミンクと関わった記憶全部を思い返してみる。
やっぱり、ミンクが嫌がるようなことをした覚えはない。
「じゃあ、何で?」って問いかけると、ベルはいつものように不敵に笑う。
「オレが嫉妬してミンクに殺気を送ってるから」
「はぁぁぁああ?!」
ベルが殺気送って空気の読める賢いミンクは逃げてしまうとか…
それって、私が嫌われてるってわけではないんじゃない?ベルのせいじゃない?
私が毛がフサフサで気持ちよさそうなミンクにぎゅーってできないのはベルのせいじゃね?!
「ば、バカでしょ!ベルはバカ決定!」
「は?オレ、バカじゃなくて王子だし」
王子とか関係ねぇよバカ。
私はベルの胸を押して、体を引き離す。
そして、真剣な表情でベルを見つめた。
「1回でいい、嫉妬しないで、私にミンクを抱かせて」
あの毛並みのいいミンクを抱きしめて頬ずりしたい。
「…1回だけなら我慢してやるか」
ベルは渋々とミンクを私に手渡した。
「ありがとう、ベル!」
ミンクはびくびくしながら私を見上げている。
ああ、こんなに怯えちゃって…可哀想に。
「くぅ…!怯えるキミも可愛いぜミンクたん!」
ハァハァと息を荒くして、いざミンクたんを抱きしめて頬ずりを!
そう思ったら、ミンクは再び私の腕からするりと抜けて逃げてしまった。
「…ベルさーん?」
「オレ、何もしてねーし」
ベルを睨みつければ、ベルはブンブンと首を横に振る。
じゃあ、何。何が悪かったというの。
「…ミンクを見るの顔がマジ怖ぇんだけど、それじゃね?」
「…………」
そうか。私か。私がいけなかったのか。
「しししっ、元気出せよ。代わりにオレがのこと可愛がってやるしっ!」
ベルは楽しそうに笑って、私を横抱きにした。
「べ、ベルー?」
そして私はぼふっとベッドの上に落とされた。
「王子、もう嫉妬の限界だし。責任取れよ」
「え…ええ…?」
ベルの目は本気で、私は恐怖を感じた。
今度こそ、本当にミンクの気持ちがわかった、と思う。
世の中弱肉強食!
(ベル!ベル!普通に接したらミンクが懐いてくれたよ!)
(へぇー?)
(ちょ、ベルのバカ!ミンクに殺気を送るなああああ!)
執筆:10年8月16日