「ベル先輩、知りませんかー?」

「はぁ?お前またに逃げられたの?ししっ、だっせぇ!」

「ミーはに嫌われてるんですかねー」

「そうなんじゃねぇの?」

しししっと笑いながらベル先輩がちらっとこちらを見て笑う。
ああっこっち見ないでくださいよ、ここにいることバレるから!
そう、私は今ベル先輩に匿ってもらっていた。なぜなら、フランから逃げるためである。
フランに「ミーと付き合って下さい」と告白されて1週間。未だ告白の返事ができずにいた。
フランのことは嫌いではない。むしろ、その逆で好きなのだ。
告白されてとても嬉しかったし、付き合いたい。
だけど、私なんかがフランに釣り合うなんて思えない。(というか、ベル先輩に 言われた)
そうだよ、私みたいな不細工で頭の悪い女がフランみたいな素敵すぎる男性と付き合いうなんて恐れ多い。
…というわけで、どう返事をしたらいいか分からず、ずっとこんな調子だ。

「おい、。フランの奴行ったぜ」

私が悶々としている間に、フランはいつのまにかいなくなっていたらしい。
ベル先輩はベッドの下を覗き込んでニカッと笑う。

「ベル先輩、ありがとうございます」

ベッドの下から這い出る私。
その様子を見ていたベル先輩はぶっと吹き出した。

「マジで女とは思えねぇわ。胸もないし」

「すいませんね、ベル先輩好みの清楚で可憐で巨乳な女でなくて」

ベル先輩の嘲笑を背中でチクチク受け止めながら、ベル先輩の部屋を後にした。
本当に、自分でも分かってはいるんだ。女の子らしくないってことくらい。








とぼとぼと廊下を歩いていると、スクアーロ隊長を発見した。
いいなぁ、あの艶やかな髪。後姿はすごく…美しい女性ってカンジだ。

「う゛お゛ぉ゛い!?かぁ!何やってんだぁ゛あ゛!」

いつのまにか私はスクアーロ隊長の髪の束を掴んでいた。

「あ、すいません…スクアーロ隊長の髪が思わず触りたくなる髪だったもんで」

手を広げれば、するりと私の手から落ちていくスクアーロ隊長のさらさらな髪。
羨ましいな…。

「…っ!!」

スクアーロ隊長の頬がみるみるうちに赤くなる。
髪を褒めただけなのに赤くなるなんて、なんて乙女なんだ。

「スクアーロ隊長、可愛いですね。私もスクアーロ隊長みたいに可愛ければなぁ…」

「お、俺なんかよりの方がずっと可愛いだろぉ!」

耳まで真っ赤にして私の肩をガクンガクンと揺さぶるスクアーロ隊長。
そういう、テレながら必死に謙遜するようなことを素でできるスクアーロ隊長を心の底から憧れる。

「私が男で隊長が女だったら、スクアーロ隊長のこと放っておかないです、きっと」

「〜〜〜〜〜ッッッ!!」

…とか言ったものの、やっぱり私は男だったとしてもフランに惚れてると思うんだ。
フランだって、男のままでもあんなに可愛いんだもん。
女である私より可愛いとか、本当にどうしてこんな私なんかを好きになってくれたんだろうと疑問に思う。

「ししっ、まだこんなとこいたのかよ。つか、隊長真っ赤になって何してんの?」

「あ、ベル先輩」

部屋から出てきたベル先輩が私とスクアーロ隊長を交互に見比べた。
私もスクアーロ隊長を見れば、スクアーロ隊長の頭からは湯気が出ている。
えっ、何これ。スクアーロ隊長、どうしたの!?

、お前また隊長のこと口説いたろ?超真っ赤じゃん」

「えー…私がいけないのかなぁ。私なんかの口説きで真っ赤になるスクアーロ隊長が乙女過ぎるんですよ…」

私が反論すると、ベル先輩はしししっと笑う。

「お前やっぱ女じゃなくて男として生きた方が合ってんじゃね?したら、隊長ともお似合いだろ」

そんなベル先輩の言葉に私はムッとする。
女らしくないっていうのは散々言われてるし、自分でも分かっているからいいとする。
だけど何で私とスクアーロ隊長がくっつくという前提なんだろう。
ベル先輩は私がフランのことを知らないにしても、何でスクアーロ隊長なのよ。

「う゛お゛お゛い!!!何言ってやがるベル!!に失礼だろぉ!」

ようやく我に返ったスクアーロ隊長がベル先輩に刃を向けた。
顔は相変わらず真っ赤なままだ。

「しししっ、お前ら早く付き合っちまえよ」

「う゛お゛お゛い!!!!!ベル、てめぇぶった斬る!!!」

だから、何でベル先輩はスクアーロ隊長と私をくっつけようとするの。
とにかく、私も言い返そう。
乙女なスクアーロ隊長と男っぽい私はお似合いかもしれない。
だけど、私は…

「た、確かに私は男っぽいかもしれませんけど…っ!」

「ミーはそんなのことが好きですよー」

ベル先輩を睨みつけたその直後に聞こえた、フランの声。
ばっと後ろを振り返ると、そこにはフラン。

「うわーっ!?」

いつの間に後ろに回りこんできたの!?

悲鳴を上げて、後退りをする。
しかし、フランに右腕をしっかりと掴まれて、私はついに捕獲されてしまった。

「お前さ、こんな男みてぇな悲鳴上げる奴のどこがいいわけ?」

ベル先輩が呆れながら私の左腕を掴んだ。
え、あの。これってどういう状況なの。
どうして私は二人に腕を掴まれてるの。

「ベル先輩はの魅力がわからないだけですよー。
わかってもライバルが増えるだけなんで、ミー的に困ります けどー」

フランは大きくため息をついた後に、私の耳元で呟いた。

「いい加減ー、さっさと返事聞かせてほしいんですけどー」

真剣な目で訴えてくるフラン。
そう、だよね。いつまでも待たせるなんてダメだ。
フランだってせっかく私のことを好きって言ってくれたんだもん。

「フランは自分より可愛い顔してるから付き合えねぇってさ」

「ベル先輩には聞いてませーん。に聞いてるんですー」

ベル先輩がチャチャを入れ、フランがジロリと鋭くベル先輩を睨みつけた。
確かにベル先輩の言うとおりかもしれない。

「私だってフランのこと好きだよ!だけど、私可愛くないし男っぽいってベル先輩に言われるし…!」

のどこが男っぽいんですかー。どっからどー見ても女の子じゃないですかー」

ベル先輩が笑いながら私の胸にぺたぺたと触れてくる。

「ししししっ、胸がないだろ」

「ベル先輩やめてください、セクハラです」

「それはミーが毎日揉むのでそのうち大きくなるんですよー」

フランがベル先輩にカエルの被り物を投げつけた。
それは見事にクリーンヒットしてベル先輩はダメージを負った。

「その点はちょっと勘弁してほしいけど…こんな私でよければ、よろしくお願いしますっ!」

「じゃあ、は今日からミーの彼女ってことでー」

異論は認めませんよー、と言ってフランは私たちを見回した。






さよならコンプレックス







(う゛お゛ぉ゛い!!何でフランとが付き合うんだぁ!オレは認めねぇぞぉ!)
(ほぉ〜らね!アタシの言ったとおりはフランとくっついたじゃない!賭けはアタシの勝ちよぉ!)
(ししっ、せっかく王子が邪魔してやったのに。隊長使えねー)

執筆:10年9月6日