女の子なら一度は憧れたことがある「お姫様」。
いつか王子様が迎えに来てくれて幸せになるの。
…私にも憧れていた時期がありました。
現代の日本やイタリアじゃ、そんなのは夢のまた夢なんだけどね。
絵本の中に入らない限り、白馬に乗った王子様は迎えに来てくれないだろう。
そもそも、白馬に乗った王子様なんて見た事ない。
それでも、憧れてしまうのだ。王子様という存在に。

「王子様、迎えに来ないかなぁ」

任務で失敗した私は只今現実逃避の真っ最中だった。
簡単な任務だったはずなのに、油断してミスしてしまった。
さっき、ボスからの呼び出しを食らって、怒鳴られて、気分はどん底。
仲良しであるフランの部屋に遊びに来て、慰めてもらおうと思ったんだけど…
フランは慰めてくれるような優しい人じゃないんだよね。
仕方ないからベランダに出て現実逃避をすることにしたのだ。

「王子ならいるじゃないですかー。ベル先輩が」

私のボヤキを聞いていたフランが冷笑しながらベランダに出てくる。

「あんなのじゃなくて…お伽話みたいな素敵な王子様だよ。
しかもベルは血生臭 いじゃん。嫌だよ暗殺が仕事な王子様なんて」

「それならまずはがこの世界から足を洗わなきゃ、王子様も暗殺が仕事な女 に寄り付きもしねーだろ」

私の横でボソリと毒を吐くフラン。
確かに正論ではある。
そうだよね、どこの王子様がこんな女を好きになる?
はいはい、ありえないよねー。
でもさ、夢を見るくらいならいいじゃないか!
こんな仕事をしていても私だって一応は乙女なのだよ。

「こんな私にお似合いな王子様は、やっぱりベルしかいないのかなぁ」

まぁ、そんなことを言ったらベルに失礼なんだけどね。

「どうしても王子というものに固執するならベル先輩が妥当でしょうねー。
今度任務が終わったらベル先輩に白馬で迎えに来てもらったらいいと思いますー」

そんなフランのアホすぎる提案を却下し、私はため息を吐いた。

「というか、私にとっての王子様は実際に王族云々関係なく、
私を幸せにしてくれる素敵な男の子のことを言うのよ」

そして、遠くに見える白い雲を見てウフフと笑う。

まだ見ぬ私の王子様は今この空の下で何をして、何を思っているのか。

「なら、の王子様は案外近くにいるんじゃないですかー?」

「うん、そうだといいなぁ」









王子様は隣で笑う









(ミーのお姫様はって決まってるんですけどねー)
(…フランが王子様だったら、いいのにな)





執筆:10年12月10日