、どうして君は僕に尽くしてくれるのですか?」

突然、骸にそんなことを聞かれた。
私は骸の顔をじっと見たまま、俯く。

「んー、それはね…」

私は骸のことが好きだった。
好きだから傍にいたいと思うし、彼に尽くしたいと思うのだ。
戦うことも、骸の身の回りの世話だって頑張れる。

「す…好きなの!」

咄嗟に出てしまった言葉に私自身驚いてしまう。
顔を上げれば骸もまた驚いた表情をしていた。
そして、にこっと優しく微笑んでくれた。

「何が、好きなんですか?」

そんなことを聞かれても、貴方ですなんて簡単に言えるわけないじゃない。
言えたら、こんなに辛くて苦しい思いしたり、苦労したりなんかしないから。
私は拳を握って、必死に答えた。

「たっ、戦うのが!」

「…へぇ、そうですか」

私の答えに納得の行かない様子の骸。
骸の期待していた言葉と、私の本当の答えは多分…いや、絶対同じだろう。
だけど、それを言ったところで骸と私の気持ちが同じとは限らない。
大笑いされるかもしれない。迷惑だって言われるかもしれない。

骸に本当の答えを打ち明けるには勇気と時間が足りない。

「僕はのことが好きなんですけどね」

「え…っ!」

そこで、私は違和感を感じる。

けたたましく鳴り響く、目覚まし時計の音。
ああ、やっぱり夢だったんだなぁと思いながら、感覚のない手を動かした。












「…なんか、変な夢を見た」

骸に告白された夢。
それは私にとってとても幸せな夢だったけれど、夢は夢でしかない。
はぁーっとため息をついて、ベッドから降りる。

…まぁ、夢でも嬉しかったからいいかな、なんて。

「おはようございます、

「んー、おは…うおおおお!!?骸ーっ!」

ボリボリと頭を掻いて服を脱ごうとした瞬間のことだった。
目の前に、骸。

「クフ、着替えるんですか?どうぞ続けてください」

「続くわけないでしょ!なんなの、勝手に人の部屋に入ってきて…!」

仮にも、花も恥らう乙女の部屋にだ。
私が真っ赤になりながら出て行けと叫ぶと、骸はいつものようにクフフと笑いながら部屋を出て行った。

何か用事があったんだろうけど、寝起きを見られるなんて最悪だ。
たとえ好きな人であっても、こんな姿見られたくなかった…。
というか、好きな人になら尚更見られたくないよね。

「はぁ…」

急いで着替えて、部屋を出る。
扉の横で骸が腕を組みながら律儀に待っていた。
じ、自分の部屋に戻っててもよかったのに。
そんなに大切な用事だったのかな。

「どんな夢を見ていたのですか?」

「…え?」

「さっき、言っていたじゃないですか」

突然、骸がそんなことを聞いてくるものだから、私の脳内はパニックを起こした。
え、何。骸はいつから私の部屋にいたの!

「…そ、そんなの何でもいいじゃん!で、何か用事があるんじゃないの!?」

「確かに用事はありますが…その前にが見た夢の話に興味が湧いてしまいました」

クフフと怪しく笑う骸。
…こうなったら彼を止めることはできない。
何が何でも、聞き出そうとするだろうな。

「そんなに面白い夢じゃないですよー」

「面白くなくても構いませんよ」

面白くないって言ってるのに聞きたがるなんて、変な人だよなぁ。
まぁ、元からこの人は変なんだけれどさぁ。

「む、骸にどうして僕に尽くしてくれるのかって聞かれて…私は戦いが好きだからって、答えたの」

嘘は言っていない。大切なところは省かせていただいたけれど、間違ったこと言ってないよ私は。

「そうですか。は戦いが好きだから僕に尽くすんですね」

「う、うん。そうだけど…?」

私の答えに、骸が眉間に皺を寄せた。



私を壁際に追い詰めて、そのまま私の顔を凝視する。

「な、何?どうしたの…?」

なんか、怒っちゃった?
どうして…怒るの?何か変なこと言ったっけ?

「戦うのが好きという理由だというならば、僕に限らず誰でもいいのではないのですか?」

「…あ。それは」

骸のもっともな意見に、私は目を細めた。
しまった、しまったよ。
テキトーにごまかせればいいやって思ってたから、深く考えてなかったわ。

「僕は、どうして僕である必要があるのかを知りたいんですよ」

骸のオッドアイが私を捕らえて放さない。

思えば。
私が初めて骸と出会ったのはエストラーネオファミリーの事件のときだったっけ。
それからはずっと犬と千種と一緒に骸について来たけれど。
私は、エストラーネオファミリーがなくなってからは骸の隣が居場所だったから。
私の居場所はここしかないって思ってたから。

「…骸に、救われたから。あの時から骸の為なら何でもするって思ってるから。
えっと…多分、犬と千種も同じだと思う」

「………は、思っていたより強情ですね」

この理由なら、骸も納得してくれるはず。
そう信じていたのに。

「どういう意味?」

もう、どう答えたらいいのか分からないよ。

「夢でも現実でも、僕が欲しい答えをくれませんね」

「なに、言って…?」

突然、骸に抱きしめられる私の身体。
ぎゅっと強く抱きしめられて、少し苦しい。
骸の匂いが鼻をくすぐる。ああ、私この匂い大好き。

だけど、一体何が起こったのだろうか。どうして私は骸に抱きしめられているのだろうか。

「夢の中でも言いましたが、僕はのことが好きなんですよ」

「……っ!!」

苦しい。
でも、それ以上に私は嬉しさで胸いっぱいだった。
夢が現実になった?
いや、あれは夢じゃなくて、なんていうんだろ。
骸が見せた夢?
ああ、とにかく嬉しくて涙出てきた。

は、昔から変わらず泣き虫ですね…」

「だ、だって!私、骸のことずっと好きだったから嬉しくて…!」

「その言葉を待っていましたよ、principessa」








ずっと待ち焦がれた言葉










(で、骸は何の用があって私の部屋に来たの?)
(クフフ、添い寝してたんですよ。そしたらが起きてしまったので…)
(おま…!この変態があああああ!!!)


執筆:10年10月24日