竹谷くんがなんだかしょんぼりしていたから優しい私は彼に声をかけた。

「たーけやくん!そんな顔してどうしたの!」

「…なんだ、か」

うわぁ、近くて見たらすっげー顔!いつも元気で熱血な竹谷くんはどこにいった。
竹谷くんがこんなになってしまうなんて、よっぽどツラいことがあったんだろうなぁ。
例えば…

「好きな子にでもフラれちゃった?」

「………」

テキトーに言ったのに、竹谷くんがぴくりと反応して、恨めしそうに私を睨んでくる。
やばい、どうやら彼が落ち込んでいた理由は女の子にフラれたことだったらしい。

「げっ、図星?ホントに竹谷くんって女の子に縁がないね!」

「うるせー」

五年生は美形揃いでとにかくノいちたちにモテる。
久々知くんなんて常にくノいちたちにキャーキャー言われているし。
あ、でも豆腐という恋人がいるから女の子に見向きもしてないけどね。
とにかくなんだかんが五年生の忍たまたちの浮いた噂をよく聞くけど
何故か竹谷くんだけはそういう話を一切聞かなかった。
いやー、竹谷くんのモジャモジャボッサボサの髪はどうやら女子達の間では不評のようで。
…私は、べつに嫌いじゃないんだけどな。
竹谷くんは後輩思いで優しいし、男前でかっこいいじゃないか。
竹谷くんの好きな人が私だったら、即告白するのに。
竹谷くんを振った子め、なんて勿体無いことしてるんだよ。バカじゃないの。

せめて、一瞬でも竹谷くんを癒してあげられたらな…。

「じゃあさ、私が慰めてあげるよ」

「は?」

私の申し出に、竹谷くんが目を丸くした。
そんな竹谷くんに構わずに、彼の体を引き寄せてぎゅっと抱きしめる。

「ぎゅー!どう?元気でた?」

うん、確かに私なんかじゃ慰めにならないかもしれないけれど、誰かに抱きしめてもらうのって安心するよね。
いや、ただ私が竹谷くんを抱きしめてあげたかっただけです、ごめんなさい。
抱きしめられて安心できるのは、やっぱり自分の好きな人にしてもらうからだよね。
私なんかじゃ癒すどころか驚いちゃうだけだよね!

「お…おう…!」

竹谷くんは抱きしめる私の背中にゆっくりと手を回した。
…えええええっ、竹谷くん!?
まさか腕を回されるなんて思わなかった。
今この状況って…私と竹谷くんが思いっきり抱き合ってる、よね!?

「あの、竹谷くん…」

いつまでもこうしているわけにもいかないから、私は竹谷くんから離れようとした。
だけど竹谷くんは私に回した腕に力をこめた。
は、離れない…だと!?

「悪い、もう少しこのままでいたいんだけど…」

「うん…」

竹谷くんが私の耳元でぼそりと呟く。
うわぁ、耳元で呟かれるのってなんだか妙に色気があってドキドキしちゃう!
竹谷くんが愛おしすぎて、私は再び竹谷くんを抱きしめた。







彼を元気づける方法









(こんな、真っ赤な顔お前に見られてたまるか!)




執筆:13年5月3日