私たちがフラットに来てから1日が経過した。
それと同時に、この世界に来て1日が経つのだ。

あぁ、そろそろ漫画やゲームとメロンパンが恋しい。

何時間か前からか、私の思考はそればかりだった。
朝食を食べてから、ずっと暇なので考えてしまう。
なるべく考えないようにはしていたんだけど。

ここの生活が心の底から嫌なわけじゃない。
リプレのご飯が不味いからではない。むしろ美味しい。
だけど、やっぱり好きなもののコトはそうそう忘れられるものではなく。
やっぱり、恋しくなってしまうものなのだ。

誰かと話でもしようかな。

私とハヤトは、フラットのみんなとだんだん馴染めている。
しかし、キールだけはいつも部屋に篭っていて、
本ばかり読んでいるからまだ、同室のハヤト以外誰とも馴染めていなかった。
…なんだか、キールは孤独。
一人って、寂しくないのかな?キールは平気なのかな。
キールは、私とハヤトを元の世界に帰す方法を一生懸命調べてくれている。
だから、余計不便なんだ。

よし、決めた!私、キールと仲良くなろう!
性格が合わないからって逃げてたら、この先ずっと仲良くなんてなれっこない。
まずは努力しなきゃ。ハヤトと仲良くなれたんだもん。私とだって仲良くなれるよね。
ダメ元であたって砕けろ!
よし、そうと決まれば実行するのみ!

早速私はキール(&ハヤト)の部屋に行き、ドアをノックして、開いた。

「キール!」

「何だい、。」

キールは相変わらず本を読んでいて。
……あぅ。なんだか仲良くなれるか心配。
いやいやいや!さん!やる前から諦めてたらいけねぇな!よぉし!

「ねぇねぇねぇ!そんな部屋に篭りっきりじゃゴキ●リになっちゃうよ。
ってわけでさ、一緒に外に行こう!せめて部屋から出るだけでも…。」

私がキールから本をひったくると、キールは鋭い眼差しで私を睨んだ。

「…君はわかっているのか?君の近くの召喚師は僕だけなんだ。
他の者は誰一人として召喚術を知らない、ごく一般人なんだぞ。
つまり、君たちを帰す方法を調べることができるのは僕だけだ。そういうわけだから僕は行かない。他をあたってくれ。」

キールはそう言って他の本を手に取ると、また本に集中してしまった。
…ま、負けないもん!
絶対に心開かせてやるんだから。!

「嫌!!私、キールと仲良くなりたい!キールのこと苦手だけど、それはまだキールのことをよく知らないからだし!
でも、私はキールを好きになっていきたい。だから、私は…!」

何だか自分で言ってて恥ずかしくなってくる。
でもでも、これでキールと仲良くなれるのならいくらでも言ってやる。

「…わかった。」

「え!?」

キールは読んでいた本をパサリと閉じる。
そして、その本を机の上に置く。

と仲良くなれたら、確かに毎日が楽しくなりそうだね。」

そう言って部屋から出て行った。
…キール、微笑んでた?と、とりあえず、一歩前進なのかな。

私はガッツポーズをした後、すぐに踵を返してキールを追って部屋を後にした。
















部屋から出るなり、キールはピンチになっていた。

「ねぇねぇ、キールお兄ちゃんの好きなタイプってどんな人なの?」

チビッコ軍団のおマセさんであるフィズ。
8歳児にして、恋愛のことになると熱くなるこのおマセさん。
今回はキールが標的のようだ。ちなみに、昨日の夜はハヤトが攻められてたのを目撃した。
フィズは部屋から出たキールに問いかけると、キールは頬を赤く染めた。

「え…えっと…。」

私に助けを求めるように視線を送ってくるキール。
でも、あえて助けたりはしない。
だって、私も聞きたいから!

「ごめん、キール。私も聞きたい。ププッ。」

「なっ…!」

キールは涙目で私を見つめた。
や、やばっ!なんか可愛いぞ!

「ご、ごめん。でも、私はこの萌えたぎる乙女心をどうすることもできないから…!クスクス。」

私が切なげにキールから目を逸らしていると、フィズは大きくため息をついた。
そして怪しく笑うと、ずんずん私に近寄ってくる。

「キールお兄ちゃんはもういいや。お姉ちゃんの好きなタイプが知りたい!」

「は!?私の好きなタイプ!?」

そりゃあもう血迷わず「美少年よ!」と答えたいところですが、
「美少年」と答えても「美少年」にはいろいろなタイプがいるしなぁ。
ジャニ●ズ系みたいなさわやかだったり、ツンデレやら愛すべきヘタレやら。

そこへ、チビッコ軍団唯一の男の子であるアルバが私の視界に入った。
確かに、アルバはある意味好みだ。

「私はアルバが好きかな。」

「へ?!姉ちゃんオイラのことが好きなの!?」

私は即アルバに抱きつき、頬擦りをする。
子供特有の柔らかい感触がとても気持ちいい。
するとフィズとキールは容赦なく私を否定した。

「お姉ちゃん、ソレ犯罪!!」

「…は歩く犯罪だね。」

キールは呆れたように吐き捨てた。
あわわ、キールと仲良くなるどころかこれじゃあ変人扱い。
いや、変人だという自覚はあるんだけれど。

突然、誰かに袖を引っ張られた。
私は即座に視線を移す。
するとそこにはチビッコ軍団一大人しいラミちゃんが。

「ラミ…お姉ちゃんのこと好き。」

「ら、ラミちゃん…!なんて可愛いの!私も大好きだぁっ!!」

私は耐え切れず、ラミちゃんを抱きしめた。
ラミちゃんは嬉しそうに「えへへ」と微笑んだ。

「あー!ずるい!それならフィズだってお姉ちゃんのこと好きだもん!」

フィズは二人に負けんばかりに私に抱きついた。
私はフィズも抱きしめて、満足げに笑う。

「えへへー、私ってばモテモテ!」

キールはそんな私を見て、小さく笑った。

「…君はすごいよ。」

そう呟いて。
あ、本日2度目の微笑み。
私はチビッコ軍団を放すと、キールに笑いかけた。

「私は凄いことなんて一つもないよ。私はキールが凄いと思う。」

だって、キールは私とハヤトのために必死になって頑張ってくれてるもん。
ありがとう、キール。
今は心の中でしか云えないけど…いつか絶対に言葉で伝えたい。

「え?」

キールが首を傾げる。
すると、アルバが突然キールに抱きついた。

「うりゃー!キール兄ちゃんにも突撃ー!!」

「えっ!?」

「おーっ!」
「あ、ラミも…」

続いて、フィズとラミもキールに抱きつく。
キールは驚きながら、子供たちが転ばないようにと懸命に立っている。
何だか微笑ましい光景に、私は小さく笑った。

「きゃー!私もーっ!」

私もチビッコ軍団の後に続き、キールに抱きついた。
キールは慌てて倒れてきた私を抱きとめる。

ああ、これが青春なのねッ!?

「ちょ…っ!!?」

「えへ!アルバ隊長!総員キール殿に抱きつきましたぞ!」

キールが真っ赤になりながら混乱している中、私はおどけながらアルバに報告した。
するとアルバはキールから離れて

「よーし!次はハヤト兄ちゃんに抱きつくぞー!」

と言った。
私も勢い任せにキールから離れる。

「おー…おぃぉおおぉ〜〜〜ぃ!!!???!?は、ハヤト!!いつの間にそこにいたんだよ!!」

同時に、いつからここにいたのか、怪訝そうな目でこっちを見ているハヤトに問いかけた。
アルバたちはそんなのにお構い無しで、すでにハヤトに抱きついていた。

「…キールに抱きついたあたりから、だけど?」

ハヤトは、真っ赤になって呆然と立ち尽くしているキールに視線を移した後、「はぁ」と大きくため息をついた。
は、恥ずかしい。見られてたなんて…!

「……こ、こうなったらヤケだーっ!覚悟しろ、ハヤト!!」

「ええぇえぇ!!?」

私は勢いよくハヤトに突っ込んだ。
ハヤトはちゃんと私を受け止めてくれて、私はハヤトの首に腕を回すと、ぎゅっとハヤトを抱きしめた。

「いえーい!ハヤトに抱きついちゃったー!」

…あの、胸が当たって…じゃなくてさ!あ、あのさ。聞いてくれよ!」

ハヤトは突然私の肩を掴んだ。
そして、真面目な顔になる。

「ハヤト…?」







最強!チビッコ軍団









深刻な空気の中、ハヤトがそっと口を開いた。

、喜んでくれ。俺・・・見たんだ。の鞄の中にメロンパンがあったのを!!」








何故かメロンパンで終わります。
ハヤトをカタカナで呼んでいたのは、周りに合わせるためですよ。

執筆:04年7月7日
修正:04年7月26日