「ああん、愛しのメロンパンちゃん!なんと14個もあるよ!!」

ハヤトに教えられて、自分の鞄の中身を確認した私は嬌声をあげた。
ああ、愛しの君(メロンパン)たち、会いたかったよ!
まだ日も経ってないから食べれるよね。

一緒についてきたキールやチビッコ軍団、そして何事かと集まってきた。
ガゼルやリプレは私の嬌声に「?」を頭の上に飛ばしながら互いに顔を見合わせていた。

「さっき、と話したかったからの部屋に入ってさ。
ふとの鞄が目に付いたからメロンパンのことを思い出して、
もしかしたらと思って開けてみたら本当に入ってたから、俺もビックリだったよ!」

私は自慢げに胸を張るハヤトの言葉に、怒りを覚えた。
つまり、それは勝手に私の部屋に入って勝手に鞄を開けたということで。

「ハヤト…あんた…。」

静かにハヤトを睨みつける。
するとハヤトは慌てて両手で口を覆って私から目を逸らした。
でも、まぁ許してあげよう。

「メロンパンに免じて、今回は許してあげる。でも、今回だけだから。次やったら容赦無いから覚悟いておいてね。」

ハヤトはそっと胸をなでおろすと、安心したのかにっこりと微笑んだ。

「よかった。は蹴りはクラスで一番痛いって専らの噂だったからな。」

そんな噂があったのか。
ていうか、そんなこと皆の前で言わなくたって良いじゃない!

「はーん?そんなに蹴られたいの?」

「い、いや、結構です。一言余計でした。」

ハヤトは額に冷や汗を浮かべて、キールの後ろに隠れてしまった。
キールはきょとんとしながらハヤトを見ている。

「それより、「めろんぱん」って食べ物なんだよね?あなたたちの世界の…。」

リプレが身を乗り出して私の鞄の中のメロンパンを怪訝そうに見下ろした。
流石、フラットのママ。食べ物に興味があるらしい。

「なんなら食べてみる?14個もあるんだもん。みんなも一緒に食べようよ?」

私はその場にいた全員に一つずつメロンパンを手渡した。
ハヤト以外は、眉を顰めながらメロンパンを凝視している。
私とハヤトはそんなみんなに微笑みながらメロンパンにかじりついた。

「「おいしいー!」」

私とハヤトは同時に悦る。
それを見た皆は、私たちに倣って一斉にメロンパンにかじりついた。

「うわぁ、おいしい!何コレ!」
「甘っ!こんなもの食ったことねぇぞ!」
「これが君たちの世界の食べ物なのか…。」
「お姉ちゃん、これ美味しいよ!」
「ラミ、おいしいね!」
「…(こくん)」

みんなはそれぞれ感想を述べて、夢中でメロンパンを食べた。
私とハヤトは互いの顔を見合って、小さく笑った。

「レイドさんとエドスさんも、帰ってきたらおすそ分けしてあげなきゃね。」















みんなでメロンパンを食べた後、リプレの提案で私とハヤトとキールは、ガゼルに街を案内してもらうことになった。
一人の時でも不自由しないようこの街を案内してくれるのだそうだ。

ハヤトには昨日案内していたのだそうだけど、私たちとばったり会っちゃって中断してしまったので、ちょうどいいとのこと。

ちなみに、キールは「この街のことを知っているからいかない」と言っていたところを私が強制的に連れてきた。
だって、まだキールと仲良くはなってないと思うし。
それに、キールは連れて行かないとまた引きこもりになっちゃうし。

とにかく、楽しく萌えられればいいな。

はいつも楽しそうだね。」

私の隣で、キールが不思議そうに言った。
キールの言葉に、ハヤトが笑う。

はいつも脳内がおピンクなんだ。いつも妄想してるんだよ。
だから、たまに何も無いときにニヤけるからキールも気をつけとけよ?」

ハヤトの言葉に、キールが顔を歪め、軽蔑するように私を見た。

「ちょ、何言ってんのバカハヤト!!キールに変なこと吹き込まないでよ!
だいたい私、そこまでは変人じゃないもん!何も無いときにニヤけるのはハヤトでしょ!」

私がそう言うと、ハヤトは冷や汗を掻きつつ防御した。
ハヤトが防御したとわかっていながらも、私はハヤトを殴る。
べしっ、という音が、小さく響いた。

「お、俺はニヤけてなんかない!あれは思い出し笑いだよ!」

「余計タチが悪い!ていうか素でキモいわ!!人のこと笑えないじゃんか!!」

私は再びハヤトに殴りかかり、ハヤトは楽しそうに声を上げながら逃げた。

「…あのさ。俺、案内してる意味なくねぇか?」

「そうだな…」

ガゼルの呆れた呟きに、キールが同情したように答えた。











アルク川、工場地区、商店街、城門前と、色々ガゼルに案内されて、今度は賑やかな場所にやってきた。
なんだか、元の世界の都会のような人ごみに、懐かしさを感じる。

「ここは?」

「繁華街だ。ここは賑やかな分、危険も多い場所だ。気をつけろ。」

ガゼルの真面目な顔に、私とハヤトは息を呑んだ。
やっぱり、ここも日本とは変わらないんだね。

「わかった。気をつけるよ。」

そう言った直後だった。
私はいきなり後ろから誰かに手を引かれて、抱き寄せられる。
抱きしめ方からして、私より大きい。ということは…男!?
そして、酒臭い。

「男の中に一人だけ女なんて、ずいぶんと可愛がられてるんだなァ?
…お。服装はおかしいが、結構可愛いじゃねぇか、テメェ。」

っ!!」

ハヤトが慌てて私に駆け寄る。
しかし、それは叶わなかった。
男は鋭い眼でハヤトを睨みつけ、威嚇したのだ。
それと同時に、ガゼルとキールも怯んでしまう。

「バノッサ…」

ガゼルは目を細めながら、私を拘束している男を睨んだ。
が、ガゼルの知り合い?

「ガゼル、知り合いなのか!?」

キールに問われ、ガゼルは余裕のない笑みを浮かべながら言う。

「あぁ、こいつはオプテュスっていう不良集団の頭だ。」

「説明ご苦労だったな、半デコ!」

「半デ…ッ!!?」

バノッサにツッコまれ、ガゼルはダメージを受けたようだ。
傷心したガゼルを後ろ目に、キールは前へ歩み出て静かに呟く。

「半デコはともかく、この様子ならフラットとは敵対してる関係にあるみたいだな。」

「半デコ言うなよキール!!ほら、俺の目ぇ見ろ、涙が滲んでるじゃねーか!」

ガゼルはキールの胸倉を掴み、キールと顔を突き合わせた。
キールは嫌そうな顔をしながら、しぶしぶとガゼルの目を見る。

「…今はそんな場合じゃないと思うんだけど。」

横からハヤトが呆れたように皮肉を吐いた。
ガゼルは顔を真っ赤にすると、キールを突き放してバノッサに向き直った。
ああ、キールが可哀相だよガゼル。

「…じゃなくて!こいつらはキールの言うとおり、俺たちと敵対している。
俺たちのアジトがある南スラムとは反対の位置にある北スラムってとこを縄張りにしていやがる。」

「ま、まぁ、その南スラムもいずれは俺様の縄張りになるけどな。」

バノッサは自分の出番を確保するかのように慌てつつそう言った。
何ともいえないけど、この人実はアホなんではないだろうか?
まぁ、とりあえずアホなヤツに悪いやつはいないというわけで、友達になってみようと思う。
私は上を見上げて、バノッサを見た。

「つまりは族のつまんない意地なわけか。んで、あんたはチンピラの親玉なんだよね?」

「バノッサだ。」

バノッサはニヤつきながら私を見下ろしている。
それにしても、この人はとにかく白い。
今にも死にそうなくらい白い。

「ねー、シロって呼んでい〜い?」

「オレ様を犬レベルな名前で呼ぶなっ!!!!」

「白…美白…鈴木そ●子…よし!
美白に因んで鈴木バノッサ!よし、これからは鈴木さんって呼ぶわ。」

「呼ぶなッ!!!この女!」

バノッサは私に殴りかかる。
やばっ、やられる―――――――――――

そう、覚悟して目を伏せた瞬間、鈍い音がした。
でも、痛みはない。
ゆっくりと目を開けてみると、キールが私を庇ってくれていた。

「キールっ!!!」

私はいつの間にかキールに抱きかかえられていて。
キールは痛そうに殴られた頭を抑えていた。

「大丈夫かい、。」

「き、キールのおかげで…。でも、キールがっ!!」

「僕は大丈夫だから。」

キールは優しく微笑んでくれた。
キール…私、いつもキールに助けられてる。

「大丈夫か、二人とも!」

ハヤトとガゼルが心配そうに駆け寄ってくれる。

「このヘナチョコ野郎…そんなに殴られたきゃ殴ってやるぜ!!」

バノッサがキールに向けて拳を振り上げた。
今度こそ、私がキールを守らなきゃ…!

「やめろ!バノっぴー!!!」

「(バノっぴー…?)お前、こいつを庇うってか?はははは!気に入った!!」

「危ない!!!」

ハヤトの叫び声が聞こえたのと同時に、私はバノッサに抱きかかえられた。

「ぎゃあああああ!!!放せバカーーーーーーー!!
おまわりさーーーん!誘拐犯ですよー!ギャーーーーー!!!
ハヤトー!ハヤトー!!私が死んだら骨を拾いにきてーー!」

「何言ってんだよ!!!落ち着け!今俺が助ける!」

ハヤトが私を助けようとバノッサに立ち向かったところ、
バノッサはハヤトの攻撃をかわして、ハヤトを蹴飛ばした。

「ハヤトーーーーッ!!!」

「お前は今日から俺様の彼女にしてやるぜ。ありがたく思いな。」

「ありがた迷惑じゃーーー!!!!!ていうか、せめてもう少しだけ力緩めて。胸が苦しい。」

私は必死に抵抗する。
力を緩めたスキを見て逃げよう。

「そうかよ。だったらこれで気持ちよくなりな。」

バノッサは私の後ろでニヤリと悪戯っぽく笑う。
まさかと思ったときにはもう遅くて。
状況はさらに悪化して、バノッサは私の胸を片手で揉み始めた。

「…い゛っ?!」
「「「!!!(何て羨ましいんだバノッサーーー!)」」」

ハヤト達が私を助けようとした瞬間

「この!!!変態イイィィィーーーッ!!!!!!!!」

チンッ!!

私はバノッサの大切な玉を蹴り上げた。
するとバノッサは悲鳴を上げてその場に転がり込む。

「ぎゃあああああああああああああ!!!!俺様の又三郎がああああああああぁああぁっっ!!!!」

「「「「チン●に名前付けんな!!!!」」」」

あまりにも哀れだけど…バノッサから離れることができたので結果オーライってことにしておこう。
あうぅ、私、お嫁にいけないわっ!!

「お、覚えていやがれっ!!」

いつの間にかバノッサは立ち上がっていて。
悪役のお決まりである捨て台詞を吐いて逃げようとしていた。
涙目だ…ていうか平気なのか?

「私、記憶力ないから覚えてられないよ。私の変わりに頭のよさそうなキールが覚えておいて?」

「そんなくだらないこと覚えていたくはないんだけどな…。」

「う、うるせぇ!今度会ったらぜってーギャフンと言わせてやるからな!」

「今時ギャフンなんて誰も言わないって。」

ハヤトのイタイ毒舌に、バノッサは白い顔を青くした。

「だああああーー!!!もうテメェら黙れよ!!チクショーーー!!」

バノッサは泣きながら逃げていってしまった。可愛いな。






激闘!美白お兄さん










「…バノッサって、本当はイイヤツなんじゃない?白いけど。」

「前まではあんなにおかしくなかったんだけど。」

のペースにはまったな。なんて恐ろしい女。」

キールの介抱をしていたガゼルは、私を見てため息をついた。








執筆:04年7月9日
修正:04年7月28日