バノっぴーの襲撃(?)に合って騒ぎすぎたせいか、睡魔が私を襲う。
まだ、フラットのアジトまで結構歩くというのに。
と、そこにキールが心配そうに私に話しかけてきた。

「元気がないね。どうかしたのかい?」

「うー、キール…。ちょっと眠いんだ。」

目をこすりながら私はキールに眠いということを主張した。
するとキールは優しく微笑みながら私の頭を撫でてくれる。
その心地よさといったらなくて、さらに眠くなってしまいそうで。

「あぁ、大変な目にあったからね。帰ったらゆっくり休むといいよ。」

撫でてくれていた手を離し、キールはにっこりと笑った。
キール、何だかさっきのの一件で変わったな。接し方がまるで違う。
昨日とは全然違う感じ。すごく優しくなった。これもきっと、私の努力のおかげかな。

「心配してくれてありがちょ。キールは優しいねぇ。」

「そ、そうかい?」

キールは不思議そうに首を傾げる。
ああ、そんな仕草にも萌えるぜ、美少年!
でも私はもうダメ。眠くて眠くて仕方がない。

「うぬーん、ハヤト〜、眠い。おんぶー!だっこー!」

「な、何言ってんだよ!!」

ハヤトは顔を真っ赤にしながら首をぶんぶんと横に振る。
そんなに拒否しなくたっていいじゃんか。

「あー、もうハヤトは冷たい!じゃあガゼ」
「絶対嫌だからな。」

私がガゼルに視線を向けた瞬間、ガゼルは嫌そうに顔を歪めた。

「しょうがない。頭のタンコブが痛々しいキール…」
「し、仕方が無いから俺が背負ってやるよ!!」

ハヤトは盛大なため息を吐いた。

も、もしかしてハヤトってばキールを気遣ってる?
キールに無理をさせないために…!!
そうか。ハヤキーですか、微笑ましいねぇ。

「あ、ありがとうハヤト。最初からOKしてくれればよかったのに。」

「…うん、あのさ。今、よからぬことを考えなかったか?」

「う…んーや、気のせいじゃない?」

流石は私の親友だけあって、ハヤトの勘はなかなか鋭かった。
しかし、これは新たな萌が生まれちまったぜ。

「だから、その顔。やっぱり変なこと考えてる。」

ハヤトは私の顔を怪訝そうに見て、妄想に既に耽っている私を背負い上げた。
















「(んー、ここどこだ?)」

目を空ければ天井。
ああ、そうか。ここ、フラットのアジトの私の部屋だ。
私、ハヤトに背負ってもらいながら妄想に耽っててそのまま眠っちゃったんだ。
何だか、今更だけどハヤトに悪いことしたな。あとでちゃんとお礼言っておかなきゃ。

私はベッドの上で体を起こす。
すると横にちらりと何かが映った。
それと同時に、声が上がる。

「ようやく目覚めたかい。」

「き…きき、キール!!?何でここに!!」

まさか、寝顔とかすごく見られてた!?
あわわ、涎とか垂らしてないよね!?鼾は!?
でも、キールが勝手に部屋に入るなんて。
キールってば結構大胆?

「君ともう少し話をしてみたくて、ね。やっぱり駄目かい?」

眉を顰めて悲しげに首を傾げるキール。
その表情が何ともいえなく、私の乙女心をくすぐる。
駄目かいって言われても君のような美少年に断れるわけ無いじゃん。

「ううん、駄目じゃない!私もキールといろいろと話してみたいと思うしさ。」

「ありがとう。」

今度は嬉しそうに私に微笑みかける。
あ、あんた!私のことを誘ってるのですか!?
不意に私の方が赤くなってしまう。

「え、そんな!お礼を言われることじゃないと思うけど…。ていうか、キール、頭大丈夫?」

私を庇ってバノっぴーにやられたところが気になる。
さっき、ちょっとタンコブになってたし。

「…君よりは遥かにまともだと、僕は思うけど?」

「んや、そうじゃなくて。バノっぴーに殴られたとこ。ごめん、私のせいで…。」

キールは「そっちか」と小さく笑う。
私は小ばかにされたことに苦笑しながらキールの答えを待った。

「平気さ。君が、僕を庇ってくれた時は正直驚いたよ。」

「え?」

「そして、自分でも、君を庇った自分自身に驚いている。
今まで、誰かを守りたいなんて思ったことも無かったけれど、
あの時は「君を守りたい!」って思って…気づいたら体が先に動いていたんだ。」

キールは恥ずかしそうに私の隣に腰を下ろす。

「キール…。」

「帰り道、ずっと考えていたんだ。君は、僕を恨んでいないのかって。
事故とはいえ、君を召喚してしまった僕を恨んでいるはずなのに。
君はそんな僕を庇ってくれた…どうしてだ?」

真剣な眼差しが、なんだか胸に突き刺さる。
キールは今まで私がキールを恨んでいると思っていたの?
それなのに、逃げないでちゃんと私と向き合ってくれて。

「キールのバカ。私がキールを恨んでたと本気で思ってるの?
そんなわけない。だって、わざとじゃないじゃん。」

…。」

「仲間を庇うのは当然のことじゃん!それに、キールだって、私を仲間って認めてくれたから庇ってくれたんでしょ?」

キールはきょとんと目を丸くしながら瞬いた。
そして、ゆっくりと目を伏せた後私にもたれかかってきた。

「な、何!?!?え?!キール!!!」

「少しだけ、こうさせてくれ。」

柔らかい表情で幸せそうなキールを見ていたら、やっぱり断れなくて。
そして、すぐ隣にキールの顔があるかと思うと、
心臓が爆発しそうなくらい早く波打つのがわかった。
美少年にこんなことされるなんて…元の世界じゃ、一生なかっただろうな。

「こんな僕を許してくれて、本当にありがとう。」

「うん。」

キールは、辛かったんだろうな。
私と接するたびに「恨まれてる」って思いながら一生懸命接してて。
私は、恨まれてると思う相手に接する勇気なんてない。
キールはとても強い。そして羨ましいな。

私はキールに寄りかかる。
お互い寄り添う形になった私とキール傍から見れば、カップルに見えるかもしれない。
つい勢いでやっちゃったけど、どうしたらいいんだろう。
つか、誰かに見られたらとんでもない!!!

そんな時だった。
運命とは時に残酷である。

「何してるんだよ、二人とも…。」

天国から一気に地獄に叩き落された。
というか、頭を鉛で思いっきり殴られた感じというのがこの状況には妥当かもしれない。
ハヤトが私の部屋の前(ドアはハヤトが開けたのか開いてる)で目を細めて立っていた。

「は、ハヤト!!えとね、これは…そう!キールもいきなり眠くなっちゃったらしくて!」

「…言い訳はいいよ。だって、仲良くなるのはいいことだろ?
これから一緒に生活していく仲間なんだし、さ?それより。」

ハヤトは歪めた顔で無理矢理笑顔を作る。
見られた。ハヤトに見られた。恥ずかしすぎる。
顔、歪めたの見ちゃったもん!うわぁ、絶対軽蔑された。

「これ、リプレから。この世界で制服じゃ目立つだろうからって、
わざわざ作ってくれたんだ。あとでちゃんとお礼しに行こうよ。」

ハヤトは私と目を合わせないようにして、服を渡してさっさと部屋を出て行ってしまった。
明らかに避けられている。
リプレにお礼言いに行く前にまずはハヤトの誤解を解かなきゃ。
口ではあんなこと言ってたけど、絶対に誤解してる。

「すまない、。」

「キールが悪いんじゃないって。…じゃあ、私はリプレの作ってくれた服に着替えるから。」

「わかった。」

キールは跋が悪そうな顔をしながら部屋を出て行った。
扉が閉まったのを確認し、私は服を脱ぎ捨てる。
…と、どこからか視線を感じる。

「(この部屋で開いてるのは…窓だけ?)」

そう推理し、ゆっくりと窓に視線をやる。
するとそこには、茶髪の少年が顔を赤くしながらこっちを見ていた。
その少年と目が合い、少年はさらに顔を赤くした。

今の私の姿は、上が下着、下はかろうじてスカート(チャックは開いたまま)

「………。」

私は無言で窓に向かい、勢いよく窓を開ける。
すると少年は慌てた様子で両手で目を覆った。
少年は結構な美少年で、年は私たちと然程変わらないカンジだ。
美少年じゃなかったらブン殴ってやろうと思ったんだけどね。

「ちょっと君…」
「おおおお、俺は何も見てないから!!」

少年は「ごめん」を連呼する。

「いや、あのさ。これって覗きだよね?」

「ご、ごめん!!悪気は無かった!!」

「それはいいんだけど、君はただの覗き魔じゃあないよね?こんな場所に来るなんて、誰かに用事でもあるんでしょ?」

「そ、そうだ!忘れてた!!」

少年は覆っていた両手を顔から離した。
…途端、私を見て鼻血を出した。

「ふ、服を着ろ!!」

「あ、ごめん。すっかり忘れてた!」

私は自分が着替え中だったことを思い出し、急いで服を着替えた。
あわわ、それにしてもこの美少年は純情そうだ。








流石はリプレの作った服で、デザインもいいし、動きやすい。
それはそうと、私は未だに窓の外でこっちを見ないようにしている少年に声をかけた。

「おーい、もういいよ。で、君は何者で誰に用事があるの?」

少年は「やっと落ち着ける」と小さく吐いて、真剣な眼差しで私を見た。

「俺はソル。ここにキール兄貴がいるだろ?話がしたい。」

「へー、キールの弟さんかー。それでこの部屋を覗いてたんだね。
…て、待て。ソルもさっきのキールと私の寄り添った現場を見てしまったと!!?」

「ああ。ていうか、あんたは?キール兄貴とはどういった関係なんだ?」

ソルは怪訝そうに私を睨んだ。
う、疑われてる!?ギャーー!
確かにキールは美少年だから好きだけどそんな関係じゃないのよさー!

「わ、私は。キールとはただの友達です。まぁ、立ち話もなんだからさ、中に入らない?」

「…そ、そうだな。いろいろと詳しく聞きたいしな。じゃあ、玄関からまわってくるから悪いけどあんたも…」
「こっから入れ。」

私は玄関に向かおうとしたソルの腕を掴むと、無理矢理窓から引っ張り上げた。
だって、いちいち玄関までまわるのめんどくさいもん。
この家、無駄に広いから。







不法侵入と覗き魔






「ちょ、お前そんな細い腕のどこにそんな力があるんだよ!!」

「もー、そんな細かいことは気にしないの!!乙女の秘密よ!」

ソルを部屋に入れ、私は満足げに微笑んだ。
一方ソルはため息をついていた。






ソルの靴ではありますが・・・あれはどうなんだろう。
アジトって靴脱ぐところあんのかな?そのまま土足かな?

執筆:04年7月15日
修正:04年7月31日