夢を見た。
ヒューバートとリチャードがアスベルを奪い合っている夢だった。
恋人であるはずの私は蚊帳の外。
「アスベルは私の彼氏なんだよ!」って言っても二人は聞いてくれなかった。
「……どんな夢を見てるんだは」
私の夢の内容を黙って聞いていてくれたアスベルがようやく口を開いた。
あ、やっぱり呆れた。私自身呆れているのだから、アスベルが呆れないわけがない。
いやしかし、どうしてこんな夢を見たのか本当に不思議だ。
「よりによって、ヒューバートをリチャードだしね。二人とも男だし! あはは!」
もう意味がわからなくて笑うしかない。
夢と言うものは本当に意味がわからない。
「夢はその人の願望の表れって聞いたことがあるんだが」
まさか……、と呟いて怪訝そうな目で私を見るアスベル。
いや、違うから。そんな願望ありませんから。あってたまるかい。
「そんな目で見ないでよアスベル。私のことを何だと思ってるの」
「いや……だって、だし。そんなことを考えても可笑しくない、だろ?」
どういう意味だ。
込みあがる怒りの感情を何とか抑えて、必死に笑顔を作る。
確かに男の子同士の恋愛もアリだとは思う。
だけど、アスベルはそういう対象じゃない。
「アスベルは私の彼氏なんだよ? ヒューバートにもリチャードにも彼女の座は譲りたくない」
アスベルの腕を抱きしめる。
そう、例え兄弟だろうが親友だろうが、大切な彼氏を取られるなんて嫌だ。
「可愛いな、は」
満足げに笑い、私の頭を優しく撫でるアスベル。
む、なんだろう。まるで子ども扱いされている感じだ。ちょっと不服。
「アスベル、私は真剣なのだよ? ただ彼女の座を譲りたくない上に、
常にアスベルの一番は私じゃないと気が済まないんだから」
怒りに任せて喋るもんじゃないなぁと、言った後で後悔した。
私は今とても恥ずかしいことを口走った気がする。
恥ずかしいと言うか、愚かしい。子供が駄々をこねているようなものだ。
これはアスベルに子ども扱いされるのは当然かと反省する。
「ごめん、今のは……」
「心配しなくても、俺の一番はいつもだよ」
アスベルは私の言葉を遮って、にっこりと微笑んだ。
答えてくれるなんて思わなかったから、嬉しくて思わず口角が上がってしまう。
「の一番はいつも俺か?」
嬉しさに浸っていたら、まさかの質問返し。
「え。そ、それは……」
アスベルは自信満々と言った感じで満面の笑みを浮かべていた。
悔しいから答えない!
(…プリンとティラミスの盛り合わせが一番)
(え、俺は食べ物に負けたのか!?)
(嘘だよ、そんな本気で悔しそうな顔しないでよ)
執筆:11年1月12日