「カーレル、ダイクロフトの内面図面はまだ完成しないのか?」
会議室の雰囲気は最悪だった。
緊張感と焦りで張り詰めた空気。
その中でディムロスとカーレルが会話のキャッチボールをしていた。
それをリトラーが困ったような顔で見守っている。
「仕方ないだろう、残された資料からなんとか復元を試みているんだ。
今日中には完成する予定だが、作成班はここのところ徹夜作業が
続いていてみんな疲れているんだ。無理を言わないでくれ」
「しかし・・・!」
「ディムロス、今回は準備に時間がなさすぎる。
いつもなら君はこんな無理は言わない。
君も疲れているんだ。少し休んだ方がいい。」
ディムロスは唇をかんだ。
そして無言のまま階段を駆け下りていった。
「・・・やれやれ」
ふぅ、とカーレルは溜息をついた。
リトラーは苦笑交じりでカーレルに言った。
「すまないね、カーレル中将、気苦労をかける」
「部下への気遣いはいつもならディムロスの専売特許なんですがね。」
カーレルもまた、苦笑しながら言った。
Light of the sun
シャルティエとイクティノスと談笑した帰り。
は誰かとぶつかった。
「きゃ、すみませ・・・」
ふと、その人の顔を見る。
辛そうな顔をするディムロス。
「ディムロス・・・さん?」
ディムロスはに自分の名を呼ばれてはっとする。
たった今、の存在に気付いたようだった。
「ああ、か・・・。」
「どうしたんですか?ディムロスさん・・・?何か、思い詰めているんじゃ」
「・・・私は大丈夫だ、ちょっと休めばすぐ戻るさ」
ディムロスはそう吐き捨てると私室に向かって再び速歩きを始めた。
しかし、何かに服を引っ張られるのを感じて再び後ろを見る。
「辛い時は一人で抱え込まない方がいいです。
差し支えなければお話ください。きっと・・・楽になります。私もそうでしたから。」
ディムロスは、の真剣な眼差しを見た。
そうだは幼い時に両親が殺されたんだったか。
私を見てそれを思い出してしまったのか?
「・・・・すまない。では今から私の部屋に来て貰えるか?」
ディムロスは切なげな顔をする。
はディムロスの返事に元気よく頷いた。
「うわぁ、私なんかがディムロスさんのお部屋に入っちゃっても本当によろしいのですか?」
ディムロスの部屋の扉の前で、は身をよじっていた。
まさか自分のような低い地位の人間が中将というお偉いさんの私室に
入れてもらえるとは思ってもみなかった。
「はは、そういう上下関係は持たなくていい。
今、私達は同じソーディアンチーム。・・・つまりは仲間なのだから」
「わー・・・私がディムロスさんのお仲間・・・!!!こっ・・・!光栄です!!!」
はぺこりとお辞儀をする。
ディムロスはそんなを見てクスクスと鼻で笑った。
「あ、ディムロスさんようやく笑ってくれましたね。」
は微笑みながらディムロスの部屋に入る。
「私は笑っていなかったのか?」
の言葉に、ディムロスが首をかしげた。
「ええ、アトワイトさん達がダイクロフトに幽閉されてから・・・
全く笑っていませんでしたよ。なんというか・・・いつも切羽詰まったような・・・
とにかく、焦っているみたいでしたよ。」
ディムロスは小声で「そうか・・・」と言い、溜息をついた。
「私は・・・・中将ということで、皆の命を背負っている。
だから・・・アトワイトやクレメンテ殿を早く助け出さねば・・・!!」
「ディムロスさん。焦りは禁物です。」
「しかし・・・っ!!」
はディムロスの下あごを(グーで)殴った。
ディムロスはふらり、とよろける。
「しっかりしてください!ディムロス=ティンバー中将!!
アトワイトさん達は無事です。中将であるあなたが信じなくてどうするんですか?」
「・・・・・・」
ディムロスは殴られた下あごをさする。
チリチリと痛みが残る。
「こういうときだからこそ冷静になるものです。焦りを見せた方が負けです。
ましてやあなたは多くの人々を従える身のはずです。
そのあなたが焦っていたらあなたの部下達はもっと焦ってしまいます!!」
ディムロスは俯いたの顔を覗く。(最低や
は涙目で、今にも泣きそうだった。
はディムロスの視線を感じると、我に戻った。
「ふわああ!!すっ!!すみません!!私ってばディムロスさんになんてことを!!」
殴ってしまった事を今更謝る。
ディムロスはの頭にぽん、と自分の手を乗せると、くしゃくしゃとの頭を優しく撫でた。
ディムロスのその行動には驚いた。
「ありがとう、。君の下あごパンチは効いたよ。」
ディムロスは「アトワイト達は無事だ」と呟く。
「あ・・・その・・・お役に立てたんですか?私・・・」
は恐る恐るディムロスに訊ねる。
「ああ。とても。」
リトラーからの呼び出しで、とディムロスは会議室に急いだ。
そこにはすでに幽閉されたアトワイト、クレメンテを除く
ソーディアンチームが集まっていた。
「あら、ディムロスとが一緒だなんて。めずらしいこともあるのね?」
ハロルドはちらりとシャルティエを見る。
シャルティエはディムロスとが一緒にいるのを見て
どことなく不機嫌になっているようだ。
「ああ、彼女にいろいろと叱咤されてしまっていてな。」
「下あごを殴られたよ」と苦笑するディムロス。
「うあーーー!謝ったじゃないですか!!」
は顔を赤くしてディムロスに言う。
シャルティエはやはり面白くなさそうに2人を見ていた。
「それで、今回は・・・」
イクティノスが2人を見てクスクスと笑いながらリトラーに訊く。
「そう!ついに!!私の強襲揚陸艇が完成したのよ!!」
「それでは・・・」
「兄貴のとこの図面も完成したしね!作戦開始ってわけよっ!!」
「そうか・・・」
ディムロスは穏やかな顔をした。
はディムロスを見て小声で「よかったですね、ディムロスさん!」と言う。
「まず、ハロルド君の強襲揚陸艇を使い、2人が囚われている場所のできるだけ近くに
強行着地を試み、その後に隊を2つにわけ、一方が開発チーム、及び2人の救出を。
もう一方は脱出路と脱出艇の確保、及びダイクロフトの機能不全に陥らせ脱出時間を設ける。」
リトラーの的確な作戦内容。
強襲揚陸艇は流石はリトラーさんだ、と改めて思う。
「では、チーム編成を発表する。
ディムロス、カーレル、イクティノスの3人は開発チーム及び2人の救出。
ハロルド、シャルティエ、は脱出路と脱出艇の確保、
及びダイクロフトの機能不全に陥らせ脱出時間を設けてほしい。」
「「「「「「了解!!」」」」」」
「各自準備が出来次第、強襲揚陸艇に乗り込むように。」
「シャルッ!!」
作戦会議後、はシャルティエを追う。
「・・・・・・。何の用・・・?」
「うんとね、一緒の隊だから、改めて宜しくッ!!」
はにっこりと笑う。
シャルティエは無表情で「うん」と答えるだけだった。
「シャル?元気ないね・・・」
「・・・そんなことないよ。」
「ううん!元気ない!!うおりゃ~!元気出せ青年~♪」
はシャルティエに抱きついて頭をグリグリ攻撃を仕掛ける。(ぁ
シャルティエは顔を赤くしながら「痛い」と悲鳴を上げた。
「ディムロス。」
会議室。ここにはディムロスとカーレルの2人が残っていた。
「カーレル・・・なんだ?」
カーレルはフフッっと笑う。(怖いYO<ぇ
「お前、ようやく笑うようになったな。」
「・・・・私はそんなに笑っていなかったのか。」
ディムロスは会議前にに言われた事を思い出した。
「が・・・何か変な事でも言ったのか?」
「いや、私を慰めてくれたよ。」
カーレルは驚いた。
「お前を慰めることがアトワイト以外にできるなんてな。」
カーレルの発言にディムロスは苦笑した。
「そうだな・・・。は不思議な子だな」
執筆:03.05.04