約束の木



「シャルー!シャルティエー!!」


私は走る。
大好きなあの人を捜しながら走る。

「シャルーーー!?」

きっと、またあそこにいるんだろうなと思って、
ラディスロウ横の大きな木の前で立ち止まり、大声で叫んだ。
すると、あの人は出てきてくれた。

「何だ、誰かと思えばさんか…」

大きな木の大きな枝からひょっこりと顔を出すシャル。
私はニッと笑ってシャルを見つめた。








私は木に登り、シャルの隣に腰を下ろす。

「今日も此処にいたんだね。っていうことはまたバカにされたの?」

私が少し皮肉っぽく言ってみると、シャルはそっぽ向いてしまい。
少しだけ不機嫌になる。

「…別に、そんなことないよ」

シャルはいつもとある兵士にバカにされているのだ。
何も言い返すことのできないシャルは、いつもここで気分転換をしていた。
助けてあげたい。だけど、私にはそれは無理だ。
私は、ただの難民だ。
以前、魔物に襲われていた所に、今私の隣にいるシャルが命からがら…
血だらけになりながらも難民の私を助けてくれたのだ。
だから、今度は私がシャルを助けてあげたい。





そもそも、何で優しいシャルをバカにするのか、全然わからない。






「気にすることないよー!あの人たちはソーディアンチームに選ばれたシャルに
嫉妬してるだけの醜い人たちなんだよ!あ、寄せ集めの材料で作ったクッキーなんだけど…はい!」

私はキツネ色のクッキーをシャルに差し出した。
するとシャルは引きつった顔を笑顔に変えて
「いつもありがとう」、と言って受け取ってくれた。

私達難民に配給される食糧は少なく、満足に料理をすることができない。
しかし、それは食料が採れる量が少ないからだ。
空にある外殻が太陽の光を遮り、畑でできた野菜や果実は
充分な養分を得ることができずに枯れてしまっている。

だから、わずかに採れた食料は軍の人優先に配給されている。

それでも、シャルに元気を出してもらえるなら私は…。

「しかし、難民の方々は僕達よりも食料があまり配給されないのに…僕なんかのために、ホントありがとう」

「いや、私が好きでやっていることだし!シャルには早く、地上を救ってもらいたいからね」

…」

「あ、その…私がクッキーをあげたんだから早く地上を救えってわけじゃなくて。
ただ、シャルには色んなことを頑張ってほしいなと思って。」

「ありがとう。…僕は、頑張るよ」


彼は明日、天上王ミクトランとの決戦で天上にいってしまう。
ディムロスさん達ソーディアンチームとハロルドさんの護衛の変わった格好をした5人と。
ディムロスさん達は強いけど、命の保証はない。
この間もソーディアン開発チームを救出しに天上へ行ったけれど、
もしかしたらシャルが死んでしまうのではないかと考えたら涙が止まらなかった。

また、シャルが生きて帰ってこられる保証は無い。
もしかしたらこれが最後の会話になってしまうかもしれない。

、震えてる」

シャルはそう言うと私の頭を優しく撫でてくれた。

「大丈夫だよ。僕の命に代えても達を守るから。安心して」

違う…違うの。
私はどうなってもいい。
私は、シャルが無事に帰ってきてほしいの!

でも…なんでだろう。
口で言えない…。

「………ッ」

私って駄目だ…。
好きな人に「無事に帰ってきて」も言えないなんて。

「そうだ!に見せたいものがあるんだ!」

シャルは突然腰にある鞘から剣を引き抜き出す。
それはサーベルみたいな、細身の曲刀。

「それは…?」

「これがソーディアン!明日の対ミクトラン戦で最も重要な剣。
ハロルドが作ってくれたんだ。こいつの名前はシャルティエ」

「シャルと同じ名前?」

「そう!僕専用の、僕だけの剣なんだ。これで僕も…」

「バカにされなくなるねっ」

私は小声で静かに笑う。
「ち、違うよ」と苦笑するシャル。

「よかった。、ようやく笑ってくれた。
さっきから何か思い詰めたような顔してたから…」

元気になってくれてほんとうによかった。
そう言ってシャルが微笑んだ。

シャルは私を元気付けてくれたんだ。
ありがとう、シャル。
今なら、なんだか言えそうな気がする。

「シャル、無事に帰ってきてね」

「うん!」

「約束…!」



ゆーびきーりげーんまーん

うそついたーら

はーりせんぼん

のーます








ゆーびきった















それから。
シャルは天上に行ってしまい。

それはなんだか天上を通り越しちゃって
天国へ逝っちゃったんじゃないかと思えた。
約束したのに、怖かった。
涙が出てきた。
胸の前で手を組んで初めて神に祈る。



ひたすら。



ひたすら。



シャルは今どうしているだろう?




無事でいてくれてる?
約束、したんだから…。






数日後、シャル達を乗せたラディスロウが帰ってきた。
ラディスロウから出てくる英雄達…。
リトラー様、ディムロスさん、アトワイトさん、クレメンテさん、イクティノスさん。
そして、シャルティエ。

私はシャルに飛びつく。
シャルは最初驚いた顔をしたが、みんなが見守る中私の頭をそっと優しく撫でてくれた。








私とシャルは数日前に約束を交わしたあの木の上に登った。

「約束、守ってくれたんだね」

「もちろんだよ。これで、平和な暮らしができるね」

外殻がなくなり、数年ぶりに見た太陽の光。
明るく、小鳥達も囀っている。
この平和はシャル達が取り戻してくれたんだよね。

「私、シャルが好き」

迷惑かも知れないけれど、
この気持ちを伝えておきたかった。
すると、シャルは吃驚した顔を赤く染めた。

、僕も貴女が好きです。のいない世界なら、僕は生きていけない。これからもは僕が絶対守るよ…!」

「うん!」



執筆:03年3月9日
修正:08年1月6日