いつも傍らで見ているだけだった。



こんなに想っているのに、あなたの視界には私はいない。


だからといって、あなたの視界に入っていく勇気も無い。





ねぇ、ジェイ。






私は、貴方にとってどんな存在なのかな?

やっぱり、ただの…「仲間」なのかな。




貴方の瞳にいつも映っているのがシャーリィだということを、私は知っている。










たまたま聞いてしまった、モーゼスたちの会話。

モーゼスがジェイに、私たち女子の中で一番好きなのは誰かと訊ねていた。
私は息を潜めながらジェイの答えを待っていた。
するとジェイは少し慌てた様子で「何を言い出すんですか!」と言った。
モーゼスが、シャーリィの話をしだす。

「別に、誰にも興味ありませんよ」 

ジェイはそう言ってモーゼスから目をそむけた。

…モーゼスも、ジェイがシャーリィのことを気にしていることを知っているみたい。

やっぱりジェイはシャーリィのことが…。



私は唇を噛締めて、音を立てないようにしてその場を去った。
















ただ一人、私はぽつんと噴水広場のベンチに腰掛ける。
もう日も暮れていて、人通りが少なかった。
家の明かりが少しだけ辺りを照らしている。

先ほどの、モーゼスとジェイの会話を思い出しては泣きそうになる。
でも、泣かない。絶対、泣くもんか。
誰かに、見られたくない…。


でも、辺りは暗いし誰もいないから泣いちゃっても平気かもしれない。




いいや、もう泣いちゃえ。




私は声を抑えながら涙を流した。







…さん?」




「!?」





誰もいないはずだと思っていた噴水広場。
それなのに、人がいて。



しかも、それが…



今、一番会いたくなかった人…ジェイで。



「ご、ごめんなさい、もしかして泣いてるんですか?」

ジェイに、泣いてるところを見られた。

「な、泣いてない!!」

私は必死に涙を抑えようとする。
だけど、一旦流れた涙は止まることを知らないように流れ続けて。




止まらなかった。




「泣いてるじゃないですか。…何かあったんですか?」

「何も無い!お願いだから優しくしないでよ…放っておいて!」



シャーリィが気になるのなら、いっそシャーリィのとこでも何でも行ってよ。



もう、これ以上苦しい思いはしたくない。



思わせぶりなことは、してほしくない。



私に優しくするのは、もうやめて…。



「あなたを放っておけるわけないじゃないですか!」

ジェイが、大声を上げる。

私はビクっと肩を震わせ、ジェイを見上げた。




「好きな女の子が泣いてるのに、放っておけるわけ…ないですよ…」




そう言って、ジェイは私を優しく抱きしめてくれた。




「うそ…嘘だよね?そんな嘘、つかないでよ…」

ジェイの言うことが信じられなくて、私はジェイから離れようと必死に抵抗した。
でも、ジェイはぎゅっと私を抱きしめる。

「嘘なんかじゃないです。ぼくは、貴女が好きです。信じてください…!」

「だって…ジェイはシャーリィのことが好きなんじゃないの?」

私が涙を堪えながら必死に言うと、ジェイは「え?」と言って目を丸くした。

「ジェイは、いつもシャーリィのこと見てる…。私のことなんか、全然見てくれないじゃない」

それを言葉にしたら、だんだんと悲しくなった。
さっきよりも涙がボロボロと溢れてくる。




でも、ジェイは可笑しそうに笑っていた。




「勘違いですよ。…実はぼく、以前さんに恋文を書いたんです。
それを、シャーリィさんに見られてしまって…。
シャーリィさんがさんに言わないかずっと心配で見張ってたんですよ」

「え…」





「どうしても、自分から貴女にこの想いを伝えたくて。さん、ぼくは貴女のことが好きです」





ジェイの真剣な表情に、思わず見とれてしまう。
気付けば、涙も止まっていた。

「ジェイ…」

さんは、ぼくのこと、どう思ってるんですか?はっきりと…聞かせて欲しいです」




私はジェイの耳元でそっと囁く。

「私も、ジェイのことが好き…大好き…!」

「ありがとう、さん」

ジェイは照れくさそうに笑って、私の頬にキスを落とした。








もう涙は止まってた











(恋文、読ませてほしいなー…)
(も、もう捨ててしまいましたよっ!!)


執筆:05年9月7日
修正:12年5月3日