今日はウィルの家に集合だっつったのに来やしない生意気忍者さん。
そんなジェイを呼びに、私はモフモフ族の村にあるジェイの家に、ジェイを呼びにいくことになった。
普段なら絶対遅刻なんてしないジェイ。
集合のこと、忘れたなんてジェイに限ってありえないことだし。
一体何やってんだか。

お陰で私が迎えにいくハメになっちゃったしさ。ふん。
…ジャンケンに負けた私が悪いんだけど。

ジェイの家に入り、私は大声で叫んだ。

「コルァジェイ!!!何しとんねん!!!」

しかし、辺りはしーんと静まり返っていた。
ホタテ三兄弟もいないみたい。
不審に思いながら、私は二階のジェイの部屋に上がっていく。

「ちょっと、ジェイ…?」

部屋を覗くと、ジェイがベッドに横たわっていた。

寝てる…?
畜生、寝坊ですかこんにゃろ…。
ジェイに近付き、拳を構えた。
しかし、ジェイに近付いて聴こえてきた、ジェイの荒い呼吸。
私はジェイの顔を覗き込む。
するとジェイは白い肌を赤く染め、苦しそうにしていた。

もしかしてと思い、ジェイの額に手を当てる。

「…熱あるじゃん」

ホタテ三兄弟もいないみたいだし、どうしよう。
そうだ、まずは濡れタオル…!










絞った濡れタオルをジェイの額に置く。
すると冷たかったのか、ジェイは目を覚ましてしまった。

「あ、ごめん…起こしちゃったね」

「…いえ、大丈夫です。あの、これ、さんが?」

ジェイの声は少しかすれていて、苦しそうだった。

「うん」

私は同情しながらコクリと頷く。
ジェイは苦しそうなのに無理して笑顔を作ってくれた。

「ありがとうございます」

ケホケホと咳き込んで尚、笑顔を保つジェイが、見ていてとても苦になる。
私は掛け布団から出ていたジェイの白い手を握る。

「ジェイの手、熱い…」

さんの手は、冷たくて気持ちいいです」

相変わらず顔は赤いけど、ジェイは先ほどより気持ちよさそうな表情をしていた。
熱があるときは、冷たい物に触ってると気持ちいいんだっけ。

「ジェイの熱で私の手もすぐに熱くなっちゃうけどね」

さんがぼくの熱を奪ってしまうんじゃないですか?」

「いやいやいや、それなら私がジェイの熱を吸い取ってあげてるって言って欲しいわ」

私とジェイは言い合って小さく笑い合う。
ジェイは私の手を両手で握り、呟いた。

「…どうしてさんはこんなに冷たいんだろう…」

「…ジェイ、私は君に何かした?
いや、身に覚えはありまくるんだけど、そんなに酷いことはしてないと思う。」

確かに私は普段ジェイをからかったりしてるよ。
おやつを横取りしたり、ハリエット作のお弁当とクロエ作のお弁当をすり替えて
ハリエットのお弁当を食べさせてあげたりしたこともあるけどさ。

「違いますよ。体温の話ですよ」

私の言葉に呆れるジェイ。
ジェイはため息をついて私を見た。

「なんだか、不安になります。
さんの手はこんなに冷たくて。本当に生きているのかと、思います」

ジェイの話を静かに聞いていた私は、プ、と噴出した。
突然何を言い出すんだこの人は。

「私、ちゃんと生きてるわよ。人よりちょっと平熱が低いだけじゃない?ていうか勝手に私を殺すな」

「わ、わかってます。でも、不安になってしまうんですよ。あっけなく、逝ってしまわないかって…。
人間なんて、脆いものです。ちょっと手を加えるだけですぐに死んでしまうし…」

ジェイは真剣な目をしている。アレか。
病気になると精神まで滅入ってしまうという。
そういえばジェイは昔、暗殺者だったんだっけ。
あー、それで人間は脆くてすぐにポックリ逝ってしまうとでも思ってるのだろうか。

いや。でも、だからって勝手に私を殺すような発言はどうかと。

「私はそんなにヤワじゃない。聞け、この鼓動を!」

私はジェイの頭をぎゅっと抱きしめた。

さん!?何やってんですか…!!」

「だから、聞いてってば。喋ってたら聞こえないでしょ」

ドクンドクン。
私の、心臓の音。

ジェイは静かにそれを聞いている。

「これが、私の生きてる証。全然死にそうにないでしょ?」

「…はい」

「大丈夫。80歳までは生きるつもりだから」

「…はい。あの…もう…そろそろ…」

「え?」

ジェイが突然私を突き飛ばす。
私は目を丸くしながらジェイを凝視した。
ジェイは俯きながらはぁ、はぁ、と息を整えている。

「え、何…?」

私はワケがわからなくなってしまった。
何?何?くっついたこと、怒った?

「ご、ごめん…とりあえず」

そうだよね。ジェイだって身長は低くてもお年頃なんだ。
好きな人以外に抱きつかれるのは嫌だったよね。

「いえ、すいません…その…」

ジェイは前屈みになりながら首を振った。

「ごめんなさい、部屋から出て行ってくれませんか?」

気付けばジェイは涙目になっていて。
可愛いと思ってしまった私は一体何なのか。

「わ、わかった…」

私はひとまずジェイの部屋から出る。
下の階に下りると、そこにはモーゼスがニヤニヤしながら立っていた。

「モーゼス。来てたんだ?」

「クカカ。なかなか来んから様子を見に来ちゃれば…」

も罪な女じゃのお」とモーゼス。
私は「はぁ?」と言ってモーゼスを睨んだ。

「ジェー坊も哀れじゃの。好きな娘っ子にあんなことされちゃあの」

クカカと私を馬鹿にしたように笑うモーゼスに、私は問いかけた。

「どういう意味…?好きな娘っ子って…」

「そのまんまの意味じゃ。ジェー坊は…」
「や、やめてくださいよモーゼスさん!」

突然ジェイの声が上から響いたと思ったら、いつの間にかモーゼスの上に着地していたジェイ。
ジェイは「ぜーはー」と息をしながら「まったく」と呟いた。

「落ち着いて部屋を出てみれば…危なかった…」

「いや、そうでもないよ?」

私がそう言うと、ジェイは目を見開く。

「…え…?」

「いや、ジェイって私のこと好きなんでしょ?」

「あ…」

私の言葉を聞いて、ジェイは唇を噛締める。
そして自分の下にいるモーゼスをキっと睨みつけた。

「ずっと…今まで隠してたのに…!モーゼスさんのせいですよ!!」

ドスドスをモーゼスを踏みつけるジェイ。
いい加減モーゼスが哀れになってきたので、私はジェイを落ち着かせた。

「まぁまぁ。私、ジェイの気持ち、とても嬉しいから」

私はそう言ってジェイを抱きしめる。
ジェイは「さん」と力なく呟いて私を抱きしめ返した。

「私もジェイのこと好き…多分」

「…多分ですか」

「大丈夫。これからもっと好きになっていくと思う!」

私が笑顔で言って見せると、ジェイは優しく微笑んだ。

「…ワレら…いい加減ワイの上でイチャつくのはやめ…れ…」

モーゼスが私たちの下でパタリと倒れた。
そんなことは気にも留めず、私とジェイは微笑みあっていた。

そんな哀れなモーゼスが救出されたのは、
ジェイの薬を買いに行っていたホタテ三兄弟が帰ってきてからだった。





感じた君の体温








(で、の胸はどうじゃった、ジェー坊)
(や、やわらかかったですよ…って!変なこと聞かないで下さいモーゼスさん!!)


下ネタ、ちょっとだけ。

執筆:05年9月10日
修正:12年5月4日