「変な髪型ー」
第一印象は最悪。
「つか、顔白すぎじゃん?お前どんだけ引きこもりなんだよ」
最悪…いや、そんな次元じゃなかった、きっと。
「本当に人間?」
そんなトドメの一言。
これで私は彼に敵視されることとなろうとは、このときの私はわかっていて言ったのだろうか。
そして私はいつも彼の目の仇にされることとなる。
すっげぇ気まずかった。
戦闘のとき、これからはジェイと組むことになってしまった。
これはウィルとモーゼスの策略だ。
仲の悪い私とジェイを少しでも仲良くさせようという策略だ。
チームの連携が取れないからな、という理由。
家族は仲が良くなくちゃの、という理由。
私は、後者の理由はどうでもいいと思う。
世界にはいろんな家族がいるんだ。
その中には仲の悪い家族だっているしさ。いいじゃんかべつに。
とにかく、気まずくないように謝ろう。
今まで…関わらなきゃいいと思ってたけれど場合が場合だから仕方ない。
私は苦無を磨いているジェイを見つめ、拳を握った。
よし、やるぜ。私はやるぜ………
でもやっぱ怖い。
「ジェイ…」
恐る恐る近づき、声を掛ける。
「何ですか」
そのまま苦無を磨きながら、視線を動かそうともしないジェイ。
「…ごめんなさい」
「へ?」
一言謝ると、ようやくジェイが私を見てくれる。
「違うんです、あれは褒めたんです。決して貶したとかそんなんじゃないんです。
いや、ごめんなさい、嘘です。本当は貶しました。でも違うんですあの時は敵だと思ったから…」
出会った頃に吐いてしまった言葉を今、彼の目の前で床に手をついて土下座し、必死に謝る。
必死すぎてちゃんと言葉が整理できずにわけがわからなくなっている。
それでも、私は許しを請うことに精一杯でそんなことを考えている余裕すら、ない。
ふと視線を上げれば、ジェイは冷ややかな目で私を見下していた。
くっそ、調子に乗るなよこっちがわざわざ下手に回ってやってんだからなあんちくしょー。
不意にそんな気持ちになったから腹の中で言ってやった。
許してほしいけれど、見下されるのは嫌ださ。
「さん。頭を上げてくださいよ」
ため息を吐かれた。
そりゃあ、おかしな言葉を使ってるからね。それくらいは自覚してます私。
私はそっと顔を上げてジェイを見る。
困った顔をしているか、呆れた顔をしているかと思えばジェイは笑っていた。
何で、ジェイは笑っているんだろう。
疑問に思った私は眉間に皺を寄せる。
「べつに、あの時の酷い暴言のことなんて覚えてませんから」
「ちゃっかり覚えてるじゃんか」
ジェイは眉毛をピクリと動かした。
私は慌てて口を両手で塞ぐ。
また余計なことを言ってしまった。
「…とにかく、ぼくは怒っていませんよ。
確かに言われた時はムッとしましたが、全然気にしていませんでしたよ?」
「まったく」と呟いたジェイは再び苦無に視線を移して、磨き始めた。
怒ってない?気にしてなかった?
それじゃあ、どうして今までそれらしい素振りを見せてくれなかったの。
そうとわかっていたら…
もっと早くに仲良くできてたかもしれない、気まずい思いもしなくて済んだかもしれないのに。
「じゃあ、どうして…話しかけてきたりしてくれなかったの…?」
私の問いかけに、ジェイはやれやれと首を振った。
「ぼくは何度も話しかけました。ですが、さんはいつも逃げてしまうじゃないですか」
私が逃げていた。
確かに私は逃げていた。
ジェイに何か言われるのが怖くて、逃げていた。
だけど、ジェイは怒ってないって…気にしてないって…。
もしかして私、ずっと思い込みしてた?
一人で。
バカみたいだ、私。
ううん、ホンモノのバカだ。
イタイ。
イタすぎるって私。
「恥ずかし…」
私は唇を噛締める。
恥ずかしすぎて、穴があったらその中に入りたい。
いや、寧ろ今この場で穴を掘って埋めてもらいたい。
「真実がわかったんです。だから…もう、ぼくから逃げないで下さいね」
ジェイはニッコリ笑って私の肩をぽんぽんと叩いた。
「うん…今まで…ごめん…なさい」
私は俯きながら呟く。
「ようやく、さんと一緒に戦えると思うと嬉しいですよ」
今は…今だけはジェイの言葉が痛く突き刺さるような気がした。
第一印象は大切に!
(いつかジェイと素で仲良くなれるように頑張りたい)
(…というのは建前で、本当の地獄はこれからですよ、さん)
執筆:05年09月15日
修正:12年05月04日