カイルは可愛い。リアラも可愛い。
そんな二人の仲をこっそりと応援しようと私は今日も微笑ましい彼らを見守っている。
幼馴染であるカイルは私の弟みたいな存在…といっても歳は同じなのだけど。
カイルはリアラと出会ってから、リアラとよく一緒に行動してる。
二人を見ていると、本当にお似合いだなって思う。

私にとってカイルはとても特別な存在だ。
だからこそ、幸せになって欲しい。

だから、「こんな展開、ありですか?」って聞いてもいいかな?

、大丈夫?」

「さっきから元気ないね。歩くの疲れた?」

「え?うん、大丈夫だよ?」

エルレインにハイデルベルグからどこかの森に飛ばされてしまった私たち。
今現在、カイル、リアラ、私の三人はここにる。
ジューダスとロニとは逸れてしまっていた。
つまり、私は二人の邪魔者ってことだ。
二人の恋の成就を願っている私が二人の邪魔をしてどうするんだと、自己嫌悪した。

「はー…」

「やっぱり元気がないわ」

リアラが心配そうに私の顔を覗き込んだ。
うう、ごめんねリアラ。君たちの邪魔したかったわけじゃなくて。
これはきっとエルレインの策略であって、不可抗力だ。

「あは、平気だよ。最近寝不足なだけだから」

私が首を振るとリアラは「そう?」と言って首を傾げた。
突然、カイルが私の前に立ち、にこっと笑った。

、無理するなって!無理してたら倒れちゃうだろ!はい、オレの背中に乗って!」

カイルはそう言って早速私の腕に手をかけた。
驚愕した私はカイルの手を振りほどこうと引込めようとした。
しかし、カイルは私の腕を離さなかった。
私は唇を噛み締め、カイルを見つめる。

「カイル…いいって。平気だよ」

「でも、放っておけないよ!」

ちらっとリアラを見れば、心配そうな表情で私を見ていて。
えっと、やっぱりカイルを取られてしまうんじゃないかっていう心配だよね。

「本当に大丈夫なの!」

先程よりも強めの口調で訴えれば、カイルの肩がビクッと震えた。
そして、力なく私の腕から手を離す。
ちょっと今のは酷かったかな…と後悔しながらカイルの顔を見た。
カイルは、悲しそうな目をしていた。

「あ…ごめん」

そう謝って、私は俯く。
ああ、もう。何やってるんだろう、私。
リアラを不安にさせてしまっただけでなく、折角のカイルの親切を棒に振るってしまった。
結果的に二人に嫌な思いをさせてしまった…。

「…?!」

不意に、私の視界は90度回転した。
それと同時に立っている感覚がなくなった。宙に浮いている。
何が起こったのかと思ったのと、カイルの顔が目の前にあったのに気づいたのが同時で、私は混乱する。
どうしてこうなったのかと、考える余裕は無かった。
ただ、わかったこと…これはお姫様抱っこってヤツだ。
さぁっと血の気が引いた。

の大丈夫は信用できないから、オレ」

「そういう意味じゃないって!やだ、離して!!」

「具合が悪いんだからじっとしてなくちゃ!」

「誰が具合悪い言ったのよ!さっきから平気って言ってるでしょ!」

リアラの視線が痛い。
ロニ、ジューダス、助けてくれ…。

は昔から無理しすぎるところがあるんだから!!
ずっと前だって一緒に森までいって、具合悪かったのに無理して
オレに付き合ってくれてその後すごい高熱出したじゃんか!!」

カイルは昔のことを思い出して苦痛な顔をした。

それは昔、私とカイルで森にロニの隠した宝捜しをやってたときのことだ。
その時、私は体の調子が優れなかったけどカイルと遊ぶためなら、と無理をして
カイルと一緒に森まで行って急に具合が悪くなって森で倒れたんだ。
その日、カイルは私の母親にこっ酷く叱られて、それから母親が私とカイルを遊ばせないようにして、
カイルと会えなくなった。

だけど数年前に母親が死んで母子家庭だった私は私は孤児院に引き取られて
今度はカイルと暮らせるようになって…。

カイルと会えなかった数年間は本当に寂しかった。
それはカイルも同じだったと言ってくれた。

「それは昔のこと。今の私は、昔とは違うんだから」

私は冷ややかにそう言い放つとカイルに一発肘鉄を食らわした。
その瞬間に私はカイルから離れ、軽やかに地に降りた。

リアラが「カイル!」と叫んでカイルに駆け寄る。
私はその様子を見て少し心苦しくなる。

なんだか、この場にいづらい。
そんなの、ここに着いた時から思ってたことだけど、私、なんだかここにいちゃいけない気がする。

「ごめん、私はほんと大丈夫だから。ちょっと、頭冷やしてくる…!」

私はカイルとリアラに頭を下げて一気に向こうへ駆け出した。
背中でカイルとリアラが何かを叫んでいるのを受け止めた。
でも、それは私の耳には届かなかった。











あれからどのくらい経ったか。
もうとっくに日が暮れていてあたり一面闇の世界。
ざわざわと微かに木の葉が揺れる音がする。
私はとりあえず木の上に上って鞄の中にあったりんごをかじっていた。

思わず飛び出してきちゃったけど…これからどうしよう。
このままロニとジューダスを見つけにいく?
でも二人がどこにいるかなんてこの広い世界じゃ見当もつかない。
一人で思考をフル回転させていると下のほうからガサガサと物音がした。

やだ、モンスター…?

私は腰にある剣の鞘に触れる。
すると、音が急に止み、しんと静まり返った。

細心の注意を払いつつ、あたりを見回す。

突然、後ろから胸を何かに掴まれた。

「…っ!」

まさか、暴漢!?

「あれ?この軟らかいのなんだろ?」

剣を振り回そうとした瞬間、後ろからカイルの声が聞こえて私は手を止めた。
間一髪のところでカイルを斬ってしまうところだった。

手を止めると、カイルは私の胸を揉み始めた。
カイルの手が私の胸を上下に揺する。

「カイルのバカっ!変なとこ触らないでよ!」

私が声を上げるとカイルはビクっと反応し、慌て始めた。

「えっ、!?この軟らかいのは…」

カイルは目を凝らして今自分の手にしているものを見て身を強張らせる。
そしてすぐに手を離すと「ご、ごめん!わざとじゃないんだ!」と両手を合わせて謝ってきた。

「…はぁ。何でカイルがここにいるの?リアラは?」

私がそう訊ねる。するとカイルが微笑んだ。

「オレ、を探しにきたんだよ!リアラは平気。向こうでホーリィボトル使いながらさっきの場所で待ってる」

そう言ってカイルは私の隣に座ってじっと私を見つめた。
暗闇の中だけど、星が私たちを微かに照らしていてカイルの表情がうっすらと覗える。

「何?何か変?」

私は短く質問するとカイルは微笑みながら答えた。

、やっぱり女の子だったんだなって…」

「どうせ女っ気なんて欠片もないよ」

私がふん、とそっぽ向きながら言うとカイルは再び慌て始めた。

「あ、そういうんじゃないんだけど…!」

「どういうこと?」

私が問い詰めるとカイルは一瞬言葉を詰まらせた。
その直後、私を抱きしめた。


「ずっと大好きなが女の子から女の人になっていって…オレ、すごくドキドキしちゃうんだ」

え、何それ。大好きって、何?
カイルはリアラのことが好きで、リアラはカイルのことが好きだったんじゃなかったの…?

「意味わかんない」

私がさらりと言うと、カイルは「え?」と言って驚いた。

「だって、カイルにはリアラがいる。何で平気でそういうことを私に言うの?
言うべき相手が間違ってる。告白の練習だったら私、受け付けないよ。そういうの苦手」
「違うよ!間違えてないよ!!オレはが好きなんだよ!?」

カイルが私の言葉を遮って叫んだ。
そして私の肩を掴んで私の目を見る。

カイルの目は真剣だった。

「私…は…」

私はそこまで言うと息を呑んだ。
拒否をしてカイルを傷つけたくない。だけど、私が受け入れてしまったらリアラが傷つく。
本当は受け入れてしまいたい。だって、私は昔からずっと…

「オレはの本当の気持ちを知りたい!」

カイルが力強く、そう言った。
本当の、気持ち…かぁ。

「私も、カイルのことが好き…カイルとリアラは両思いなんだって思って、諦めてたのに…!」

カイルは私を抱きしめて、優しく頭を撫でてくれる。

「仲間としてリアラも好きだけど、オレは昔からずっとのことが好きだった。
お嫁さんにしたいって思ってたんだよ」

「えへへ、ありがとうカイル」

私とカイルは顔を見合わせて笑いあった。





開放された気持ち






(おかえりなさい、二人とも。その様子だと告白は上手くいったみたいね)
(うん、リアラの言ったとおりオレ頑張ってに気持ち伝えたよ!)
(え、リアラ…?)
(ふふ、二人の気持ちなんてカイルと以外にはバレバレだったわよ)



執筆:04年1月17日
修正:12年05月05日