番外編 『色とりどりクリスマス』



「ジングルベールジングルベール」

 ぶんっぶんっと庭からすごい音がするのを聞きながら歌う私。

『いたたたた! 痛いですよ坊ちゃん!も っと優しく!!』

「――シャルが鳴く~」

「おい、何をしてるんだ?」



 こんにちは、全国の皆さん、世界中の皆さん。今日はクリスマスイヴなのでモミの木(市販の小さいもの¥2500)に飾り付けをしているです。只今夕方6時をまわりました。何でイヴの夕方に飾り付けですかって? 今まで忘れてて今さっきカレンダーを見て思い出したんですよ。あ、そこのあなた! バカだと思いましたね? 違います! ちょっと忘れっぽいだけなんですよ!!!
 ちなみにリオン君とシャルは怪しいことではなく、剣(シャル)の素振りをしていたようです。素振りだけでなんであんな騒音が出るんだか。おかげで上機嫌で歌ってた私も歌を遮られて不機嫌度MAXです。

「クリスマス用のモミの木(¥2500)に飾りをつけてるのだよ」

「『クリスマス?」』

 私が答えると、リオン君とシャルが声を揃えながら首を傾げた。

「うん。大昔に偉大なる漫画の創始者様がね、「漫画は素敵だぞ~」という教えを説いたんだけどその漫画の創始者様はローマのベベボブル皇帝に何故か串刺しにされたという――」

「またくだらん嘘をつくな。キリスト卿とやらを敬ってのものだろう。誤った知識を教えるんじゃない。というかベベボブル皇帝って誰だ。お前の妄想の中の人物を僕たちに植え付けるな」

「く……!知ってたか。けど、キリスト卿じゃなくてキリスト教が正しいんだよ! オッホッホッホ! リオン君が間違えたー! 微妙だけど間違えたーーー!!」

「――いけ。シャル」

 ズゴッ!
 リオン君が私に向かってシャルを投げつけてきた。それは見事私の顔面に的中。柄だったからよかったけど、刃だったらどうしたんだよお前!!

『坊ちゃん! 僕を投げるなんて酷いです!!!』

「そういう問題じゃねぇだろシャル!私の顔が斬られるとこだったのよ!?」

『ふ、ふーん、危なかったね』

「それだけかーーーーーーーーーーーー!!!」

 私が叫び嘆く中、リオン君が楽しそうに言った。

、そんなことより外見てみろ」

「そんなこととは何!! 失敬な!! ――って、うわぁ~!」

 リオン君に言われて私は外を見る。すると、外では雪がちらちらと降り始めていた。

「すごい! ホワイトクリスマスだね!」

 感嘆の声を漏らす私を見て、リオン君が一言。

「お前が怒ってばかりいると、折角のホワイトクリスマスもブラッククリスマスになってしまうな」

「リオン君が誤ってシャルの刃で私の顔を傷つけてたら間違いなくレッドクリスマスだったね」

 私も負けずとリオン君に対抗しする。シャルが『どっちも気味悪くて嫌ですね』と苦笑した。しばらく、私たちは降り続く雪に魅入っていた。




※ ※ ※ ※ ※



 その夜。日付も変わり、時計を見れば深夜2時42分。私はサンタさんの変装をしてリオン君の部屋の前にプレゼントを携えて立っていた。クリスマスといったらプレゼントである。ちなみに私からリオン君へのプレゼントは水戸●門DVDセット。渋いリオン君にはうってつけのプレゼントだと思う。
 両親からの、私へのプレゼントは――このサンタさん変装グッズだった。郵送で。高校生になってもプレゼントを貰えるのは嬉しい。でも、ぶっちゃけこんなの1年に1回しか着れないというか、今日限定じゃないか。
 さて、そろそろ意を決してリオン君の部屋へ潜入だ。

「おぉ、相変わらず綺麗な部屋だねぇ」

 廊下の電気を明かりに、私はリオン君の部屋を見回した。年頃の男の子の部屋とは思えないくらい質素で素朴な部屋。でも。この部屋のどこかにきっとエロ本が1、2冊あるんだろうな、と思ったらオラワクワクすっぞ。
 ――まぁ、それは今度リオン君がいないとき探してみるとして。
 私はリオン君の寝ているベッドの前まで歩み寄る。さーて、リオン君の寝顔を久々に拝むか。そう思ってベッドを覗き込むと、いるはずのリオン君がいない。

「何をしている、貴様」

「ひゃああああああ!?」

 首元にシャルの刃が向けられ、私は驚いて思わず両手を上げて降参のポーズをとった。

「その声、か。何をしているんだ、こんなところで」

 リオン君は私だとわかるとすぐにシャルを下ろした。

『坊ちゃんの寝込みを襲いに来たんですか!?』

 ついにきたか! というテンションでシャルが楽しそうに言った。

「シャル、お前は黙ってろ。で、は何しにきたんだ」

「ふ、バレちゃあ仕方がない! ほーっほっほーっほ、メリークリスマスおめでとー!」

 私は開き直りつつ、リオン君にプレゼントを手渡した。リオン君はプレゼントを凝視する。

「これは……開けてもいいのか?」

「当然!」

 私の許可を得ると、リオン君はゆっくりと丁寧に包装紙を剥がす。そして、包装紙の中から出てきたものを見て子供っぽい嬉しそうな顔をして見せた。

「み、水戸黄●のDVD……だと!?」

 嬉しそうに微笑むリオン君を見て、何だか私も嬉しくなってくる。

「あは、喜んで貰えて嬉しいよ」

 私はうんうん、と一人で頷いていると、突然リオン君が私にコートを被せて私の腕を引っ張った。

「わ!?」

「ちょと来い」

 リオン君に引っ張られて、私はリオン君の部屋を後にした。



※ ※ ※ ※ ※



 連れてこられたのは家の庭だった。庭は雪のおかげで銀色の世界と化していた。相変わらず雪が降り続いている。
 そんな中、リオン君は手袋もしないで素手で雪を掴み始める。

「リオン君?」

「構うな」

 リオン君に制されて、私はただリオン君の行動を見ているしかできなかった。子供っぽくて可愛いリオン君。ただ、寒い中、素手で雪いじりするのはどうかと、私は苦笑した。しばらくして、リオン君が私に何かを差し出してきた。

「雪だるま――」

 リオン君の掌にはちょこん、と小さな雪だるまが乗っていた。

「これが……僕からへのプレゼントだ。すまない、今はこれしか――」

「ううん、、嬉しいよ。めっちゃ可愛い」

「だが、すぐ溶けてしまうな」

 残念そうにリオン君が呟いた。しかし、私はポケットから携帯を取り出してニッと笑う。

「平気。携帯に収めておくし。待ち受けにでもするよ。ありがとう!」

 私は早速携帯のカメラで雪だるまを撮影する。画像タイトルは……そうだな。無難に「リオン君の雪だるま」にしよう!私は画像タイトルを打ち始める。

「ブッ、間違えてリオン君は雪だるまって打っちゃった」

「バカか貴様! 誰が雪だるまだ!!」

「違う違う! リオン君の雪だるまって打とうとしたんだよ!!」

 リオン君は私の頭に一発、拳骨を落とし、不敵に笑って見せた。



執筆:03年12月23日
修正:10年05月22日