僕がお前で私が君で
「ぎゃあああああああああああああああああああああーーーーーーっ」
「 !?」
人と人が入れ替わるなんてあなたは信じられますか?
「世話が焼ける!」
そんなこと、科学的にありえない
「ちょ、リオン!?」
私は、そう思っていた
「落ちるーーーーーーー!!!死ぬーーーーーー!!!」
「 ーーーーーーッ!」
だけど
世の中不思議だらけだ
そう思った。
崖から落ちた。
けど、あまり深くなかったみたいで。運良く腰打っただけで済んだ。
「…いって~。あんま深くなかったし。ごめん、リオンまで巻き込んで…でぇッ!!?」
「私」は目を見開いた。
だって、目の前にはもう一人「私」がいたから。
「まったくだ…何でこうお前は…ん?」
「私」と「私」は目が合った。
「僕が二人!?」
「私が二人だー!?」
私たちは同時に叫んだ。
「私」はもう一人の「私」の叫びに自分の服装に気がつく。
気づけば「私」はリオンの服を纏っている。
…は?なんでリオンの服着てるの?
私はいつのまにリオンのコスプレしたんだ。
ていうか妙に声が低いな私。
…つか。
髪が無い!!!!!
いや、ハゲてるって意味じゃなくて。私は腰まである髪を
いつも後ろでひとつに束ねているはずなのに、それがないのだ。
髪は女の命!コスプレしたって絶対切らない。切るはずが無いんだ!
『どうしたんですか?二人とも?…坊ちゃん??』
「私」が髪を探していると、腰からシャルティエが話し掛けてきた。
「どああああああ!!!!シャルーーーー!!!???」
『!!!!???』
「その叫び方!お前か!?」
いきなり「私」が「私」の腕を掴んだ。
も、もしかしてその話し方はリオン!?
「そうだけど…あなたはリオンなの?」
私は恐る恐る「私」に訊ねた。
「ああ、そうだ!…僕たちは入れ替わってしまったのか?」
リオンの言葉を聞き、私は眉間に皺を寄せた。
…ありえないだろ。
「うそ~ん…」
あっていいはずがない。
「嘘じゃない。嘘だとしたらこの現状は何だ?」
「…わかんない」
本当に入れ替わっちゃったんだ。
「とりあえず、早く元に戻る方法を探さなくてはな」
もう一人の私…リオンが腰に手を当てた。
「ちょっと!あんまり私の体に触らないでよ!」
「…し、仕方が無いだろう!!今は僕の体だ!」
リオンはそう言った後、ニヤリと笑い、手を胸のあたりに移動させた。
「ぎゃあああ!バカやってんじゃなーーーーーい!!最っ低!!」
私はリオン(私)の手を封じると、リオンに怒鳴りつけた。
『…えっと、坊ちゃんがでが坊ちゃん?』
シャルは混乱してしまったようで、「うーん」と唸り始めた。
「おーい!大丈夫か~?二人ともー!」
崖の上からスタンとルーティが覗き込む。
「うん!大丈夫だよ!今そっち行くから!」
「「え…?リオン!?」」
私がそう言うと、スタンとルーティが顔を引きつらせた。
「大丈夫か!?リオン!!頭打ったんじゃないのか!?」
スタンが冷や汗を掻きながら私を凝視する。
ん?何?何かおかしいことしたか?私。
…のぁあああああああああああああ!!
そうだった!今の私は「リオン」なんだった!!
普通に接したら当然の反応だよね!?うっわ!ゴメンリオン!
「………」
リオンが私をジト目で見ています。
「マジ、ゴメン」
私は一息ついて
「うるさい!ちょ、ちょっと混乱してただけだ!ば、ば、バカどもが!」
と、スタンとルーティを叱咤。
うわぁぁん、ごめんね、スタン、ルーティ!!!
「まったく、いつもながら生意気なガキね!」
「誰がガキだ」
ルーティの呟きにいち早く反応する「私」ことリオン。
ッて!?
「何でお前が反応するのよ!」
小さな声で叫びながらリオン(ていうか私の体)を蹴る私。
リオンは「すまん」と一言。
「…?」
スタンが怪しげな表情で私の体(リオン)を見ている。
焦りを感じ、必死にリオン口調でフォローする。
「き、気にするな!こいつは元から逝かれてるからな!」
自分の悪口を自分で言うなんて…胸糞悪い。
リオン、あとで絶対シメる。
「そっか。とりあえず上がってきなよ」
スタンはそう言ってリオンに手を差し伸べた。
「…何のつもりよ?」
リオンが私の顔で無愛想な表情でスタンを睨む。
ゴルァーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
私の体なんだから私らしく素直に振舞えーーーーーーーーー!!
私だったらそこで「ありがとう」って言って微笑むんだぞ!?
「…え?あ、ゴメン!」
スタンは戸惑いながら手を引っ込めた。
リオンもようやく気づいたのか、あわてて対応を変える。
「わ、私をそんなに見くびらないで。これくらい一人で…」
そう言ってリオンはあっという間に崖を上ってしまった。
私、ぶっちゃけ上ることできない。だって、小さな崖といっても90゜直角で足の踏み場もほとんどないじゃん。
それに、これはリオンの体だから下手して傷つけるわけにもいかないし。
「リオン、どうしたんだ?」
皆が私のことを見てる。
そうだ、上らなくちゃスタンとルーティに疑われるんだ。
だけど、失敗したら…。
「スタン。り、リオンは落ちたときにぼ、私を庇って足を怪我したの。
だから、リオンを助けてあげてくれないかな?」
リオンがフォローしてくれた?
いや、私ができねぇってこと悟って我が身を傷モノにさせんために言ったな。
「わかった。…リオン!掴まって!」
スタンは少しでも私に手が届くようにと落ちそうになりながら身を乗り出してくれた。
どうしよう。
こんなときリオンがどう言うか、どう行動するか全くわかんなくなってきた。
私、怪我したときのリオンってあんま見たこと無いし。
ていうか戦闘のときはいつも私かスタンを楯に使うから絶対怪我なんてしないし。
どう対応すればいいんだろうか?
だいたい、もうやってられないよ。リオンの真似。
それに、リオンだって私の性格無視して我が道をいっちゃってるし。
だーーーもう!!
やってられっかーーーーーーーーーーーー!!!
ついに私は自暴自棄を起こした。
「スタン、ありがとう。愛してるぞ」
私は目を輝かせながら」スタンに手を伸ばした。
するとスタンは顔を引きつらせ、鳥肌までたてた。
「なんか…やっぱリオン、頭打ったんじゃ?」
「ううん、いつもどおり!あは、僕を心配してくれてるんだね。優しいね、スタン君は」
「そっ、そん…な」
トドメは『必殺・坊ちゃんスマイル』で決める。
スタンは顔を真っ赤にしながら私を引き上げてくれた。
「…何してるんだ??」
スタンの手を借りて崖から這い上がった私に影が。
「あ。」
上を見ると、リオンが私の顔で私を睨みつけている。
いやん、私って、こんな顔もできたんだね。
こんな形で知りたかなかったけど。
「あ、いや…リオンさん?その右手のまがまがしいたまねぎは?」
リオンはどこから出したのか私の大嫌いなたまねぎを持っていた。
「僕はたまねぎが大好きでな。食べさせてやろう、なんて思ってな。
ああ…そういえばはたまねぎが嫌いだったんだっけな。まぁ、関係ないが」
「ちょ…まって…いやぁっ!」
リオンは私の口(ていうか元はリオンの口)を無理矢理開けると、
たまねぎを入れて無理矢理口を閉ざした。思わず噛んでしまい、たまねぎの味が口の中に広がっていく。
「ん~~~~ん…ん、ぐ…っ」
最悪…だぁ。
そこで私の意識は途切れた。
次に目を開けると、そこには星空が広がっていた。
「ぬぁ…キモチワルイ…」
私は起き上がり、欠伸をした。
「あ、。」
ルーティが起き上がった私を見てニカっと微笑んだ。
「んー?何?」
「もう大丈夫なの?」
ルーティに言われてハっとする。
そうだ、私リオンと入れ替わって……ない?
隣にはリオンが頭にたんこぶをつけてスヤスヤと眠っている。
あれ?戻ったの?
「まったく、あの後大変だったんだから!
とリオンが一緒に落ちて、二人で気を失ってたんだもの。しかも二人とも、互いの頭ぶつけ合ってるし」
おっかしー、とルーティが笑う。
……えっと。これは夢オチというやつでしょうか。
なんという悪夢だ。
「ちっ。無駄に疲れちゃったわ。」
気分が悪いので、まだ隣で寝息を立てているリオンを蹴飛ばした
執筆:03年12月13日
修正:09年4月22日