恋の処方箋



「だーるーいーよー!」

 ああ、とにかくやる気がない。何事に対してもやる気がおきない。やらなくちゃならないことがあるのに、やる気にならない。やろうとしても、やる気になれない。こんな自分が嫌になる。もう、「どうにでもなれ」とさえ思えてしまう。
 というわけで、リオンのベッドでゴロゴロしてみているわけで。

「何をしているんだ、お前は」

「ぐだぐだ!」

 はぁ、とため息を吐くリオン。
 自分のベッドで転がる女の子を見て、何とも思わないとは流石だね。私なんかじゃ、ムラムラの対象にすらならないということですかい。
 ――と思っていると、リオンがつかつかと私の前まで歩いてきた。

おっとー!?

「資料の整理は終わったのか?」

 期待はずれなセリフに、ガクっとする私。
 妄想お疲れ様です、私!

「まだ」

 だって、やる気がおきないのだもん。

「書斎の掃除は終わったのか?」

「まだー」

 だから、やる気が起きないんだってー。

「お前は……」

 額に手を当てて、呆れるリオン。
 仕方ないよ、きっとこれは病気。ぐーたら病なのさ。

「病気ですから」

「どこか痛いのか?」

 私はリオンの問いに首を横に振った。

「ううん、違うの。何かねー……やる気がなくなるの。一ヶ月に一回くらいね、生きる気すらが失せるというか。なんだか、何で私は、何のために生きてるんだろう、って思えるというか――」

「それで何で僕の部屋でグダグダするんだ」

「こ、これも病気!」

 重症だな、とリオン。
 私はリオンに微笑を向けながら頷いた。

「あ、でも心配しないで。この病気は3日くらいで治るから」

「3日もこうしてられると流石に邪魔だ」

 リオンは眉間に皺を寄せて、黙る。
 しーんとする室内。窓の外からはかすかに聞こえてくる飛行竜の騒音。
 突然リオンが私の肩をぽんっと叩いた。

「いい案があるぞ」

「何?」

 私は首を傾げてリオンに問いかける。すると、リオンはニヤリと笑って、私の体を引き寄せた。
 ちゅっという音を立てながら、私の頬とリオンの唇がくっつく。

「……リオン? 何? これ?」

「元気の出る薬だ」

「え?」

「ほら、元気になっただろう? さっさと部屋へ戻って資料の整理してこい」

 リオンはしっぽ向いて、私に背を向けた。
 なんだ、私のこと女の子として見てたんじゃん! そう思ったら急にやる気が出てきた。

「はーい! がんばろーっと!」

 リオンの薬は効果絶大だなぁと思った




修正:09年5月