※注・リオンが変態設定
成り行きでスタンたちと旅しているあたしは今、とても苦労していた。
クールビューティーの仮面を被ったとんでもない変態に追っかけまわされているからだ。
「待て、!!まだ僕の愛の告白は終わっていないぞ!」
「いるか!!あたしゃ変態を彼氏にするほど頭トチ狂ってねぇんだよ!!」
ヤツの名はリオン・マグナス。
セインガルドの客員剣士サマというなんか偉そうな人。
初めて会ったときはクールなヤツだと思っていたのに、とんだキチガイ野郎だったのだ。
「、違うんだ!僕の本名はエミリオ・カトレットというんだ!さぁ、「エミリオ」とハァト付で呼んでくれ!!」
「ああ?!知るかよ!土に還りやがれこの粘着ストーカーが!」
「何?僕があまりにがカッコよすぎて失神しそうだと?仕方が無いな、そのまま僕に身を委ねろ!」
「あんた耳ついてる!?それとも耳に特殊なフィルターでもあんのか!?マジ死ねッ!」
とにかくあたしは全力でリオンから逃げていた。
逃げても逃げてもどこまでも追いかけてくるリオンには心底鬱陶しさを感じている。
もう殺意すら覚えてしまうほどに。
「おうおう、まーたやってるねぇ。とリオンは」
「毎日飽きませんね」
前方でスタンとジョニーがのほほんとあたしたちのやり取りを見ていた。
ちょ、テメーら!マジでこの変態をどうにかしろ!
「スタン!ジョニー!後生だから助けて!!」
あたしは咄嗟にスタンの後ろに隠れる。
リオンはスタンの前に仁王立ちすると、チッと舌打ちをした。
「どけ、スタン。僕とのラブラブ追いかけっこの邪魔をするな」
「おい、いい加減しろよ?この白タイツ男!!」
スタンの後ろから顔を出し、リオンに威嚇する。
すると、横で見ていたジョニーが「ははは」と笑い出した。
「いいじゃないか、。リオンはセインガルドじゃモテるらしいぞ?
性格はアレだが容姿端麗だからな。しかも、こいつは金持ちだろ?玉の輿じゃないか~」
左手で親指と人差し指で輪を作るジョニー。
いやいやいや、そういう問題じゃないでしょ。
容姿はとりあえずいいとして、人格が明らかにトチ狂ってんだよ。問題大アリだっつの。
こんなヤツとお付き合いなんてしたって1日も持たないね!身も心もな!
「だったらジョニーがリオンと付き合えよ!あたしはこんなやつ絶対イヤだね!」
きっとジョニーを睨みつければ、ジョニーははははと苦笑いを浮かべた。
「この僕を差し置いて、ずいぶんと楽しそうに話しているのだな」
真っ黒な笑みを浮かべながら、リオンはシャルティエを構え、そのままジョニーに振り回す。
「わーーーっ!ジョニー!!!」
「わーお!?」
スパッと切れる、ジョニーの帽子の羽。
あと一歩遅れていたらジョニーが真っ二つだったよ。
あっぶねぇな!今、本当に危なかったよぉおお!
こいつ、マジで殺る気だったのか!
「リーーーオーーーーンーーーーーー!!何をしているのかなぁ!?危ないでしょぉ!?」
「が好きになっていいのは僕だけだ。誰にもは渡さん。たとえ仲間だろうがな」
「フッ」と格好つけながら自分に酔いしれちゃったリオン。
この人、絶対病院行った方がいいと思うのはあたしだけなのだろうか。
別に、リオンのことは嫌いなわけじゃないんだ。
追っかけてくるから逃げるだけ。まぁ、リオンも私が逃げるから追っかけてくるんだろうけどさ。
その追っかけ方が嫌なのよね。
何で、どうしてこいつは頭がおかしいんだ。
顔は、顔だけはいいのに!勿体無さすぎだろ!
「バーカ。リオンにあたしの好きな人を決める権利なんてないんだから!自分勝手なんだよあんたは」
「酷い言い様だな。しかしそれもまたそそられる…じゅるり」
うわぁ、こいつ涎垂らした…。
しかもペロリ、と舌で口の周りを舐めて笑いやがった…。
正直、気持ち悪い。
なんかじりじりとこっちに近づいてきてるし…怖いーーーーッ!!
「あたしは!変態はキライなの!」
「あぁ、。それならリオンは大丈夫だよ。普段はクールで変態とは程遠いし」
スタンがあはは、と苦笑した。
待ってよ。こいつのどこにそんな要素があるのさ。
どこからどう見ても360度変態にしか見えませんけど!
「じゃあ何で今はこんな変態なんだよーーーーーー!!!」
「があまりにも可愛すぎて理性が吹き飛ぶからさ。
この、胸からこみ上げてくる切なくて甘い感情…初めてさ。」
そう言って、リオンは己の身体を抱きしめた。
ぞくっ。
背筋のぞくぞくが止まらない。
「っ!僕はもう耐えられないっ!愛してる!!」
そう叫びながらリオンがこっちに向かって飛び込んできた。
いいいやああああああ!!!こないでえええええええ!!!!!
「何してるのよリオン!あんたにはマリアンさんがいたんじゃなかったの!?」
「ルーティさんっ!」
飛びつかれると思った瞬間、ルーティさんがリオンを叩き落としてくれた。
リオンはふて腐れてソッポ向いていた。
「僕の中ではマリアン<<<<<<<<<<だ」
「却下!!マリアンさんて誰だか知らないけど、お願いだからその不等号<を>に変えて!」
「ならば、>>>>>>>>>>マリアン。これで満足かい?」
「コルァ!名前の位置を変えんなーーーーーー!!!!」
「あ、あらあら。リオンさんは本当にさんがお好きなのですねぇ」
最早呆れ返ってしまったルーティさんの横でフィリアさんが苦笑した。
「フィリアさん!そんな、人事だと思って!助けてください!!!!」
あたしは無我夢中で助けを求めた。
しかし、二人はもう諦めろと言わんばかりに視線を送ってくる。
「ち…畜生!」
とにかく、あたしは森の奥の方へ走り出した。
リオンがいないところに、行かなきゃ!
あたしの命が危ない。
「さん!!そっちは…!!」
フィリアさんが声をあげた、と同時にバジリスクが襲い掛かってきた。
どうやら、そこの岩場にバジリスクの巣があったらしい。
何匹も出てきて、私は攻撃されてしまう。
「う、うわあ!?」
あたしは恐怖の中、慌てて剣を抜いた。
しかし、どこに定めていいかわからず、抜いたはいいけど地に落としてしまった。
殺 さ れ る
そう確信したときだった。
「飛燕連脚!!」
声が聞こえてあたしはその声の主を見た。
リオンだ。
あの変態が助けてくれたんだ。
シャルティエとともに華麗に戦うリオンの姿は不覚にもかっこいいと思ってしまった。
バジリスクは肉の塊と化す。
「っ!大丈夫か!?怪我はないか!?」
リオンはあたしに駆け寄ると、すぐに抱きついてきた。
情けないことに、腰が抜けてしまってうまく動けなかった。
「…リオン」
「抵抗しないということは…僕を認めたということだな?」
リオンは嬉しそうに微笑む。
その笑みもとても輝いていて、悔しいけどドキっとしてしまう。
「と、とりあえずはね。助けてくれてありがとう」
あたしはリオンにお礼を言うと、リオンを抱きしめ返した。
ほんの少し芽生えた恋心
(っ!愛してる!!今すぐ結婚しないか!?)
(ぎゃあああああ!!!骨!!骨折れるーーーーーーーー!!)
約7年前の…!(笑)
執筆:03年12月22日
修正:10年10月24日