またいつか


いつも空を見上げてる彼。
私はそんな彼に恋していた。

「リッド!」

名前を呼ぶと振り返り、私に微笑んでくれる。
風が、リッドの赤い髪を靡かせてサラサラと流れる。
リッドに声をかける瞬間。
それは私にとって緊張の時間だ。

「もう、帰るのか?」

「うん。リッドは?サボり?」

茶化してみると、リッドは苦笑いをした。

「ちげーよ。ちゃんと終わらせたさ。ベアの納品も済んだ」

私のそばに歩み寄って、ぽんっと私の頭に手を乗せる。
ドキドキが大きくなっていく。
こんなに近くにいるから、リッドにバレちゃわないかと心配しながらも平然を装ってみせる。

「背。縮んだか?」

「り、リッドが伸びたんじゃないの?どんだけ伸びるのよ」

「さぁな?」

男の子の成長はとても早い。
1年もしないで見違えるほど大きくなるんだから。

私には、もうすぐ、ミンツ大学の受験がある。

羽休めに戻ってきた故郷、ラシュアンは昔に比べて様子がだいぶ変っていた。
私はそれがなんだか寂しく感じた。

「寂しくなるね」

「そうだな…」

時間が経つにつれ、世界も、人も、変わらずにはいられない。

「…なぁ」

「え?」

「どうしてもミンツに戻るのか?」

「うん、キール兄さんが待ってるから」

「そっか」

何て言ったらいいかわからない。

大学に合格してしまえば、会える時間なんて作れないだろう。
話したいこと、いっぱいあったはずなのに、何も言えない。
伝えたいこと、あるのに、怖くて言葉にできない。

「時間、大丈夫か?」

リッドに言われてハッとする。
腕時計を見ると、もう帰らなくてはいけない時間。

「そうだね。そろそろ、帰らなきゃね」

私は足早にその場を立ち去る。
さよならも言えないなんて。
私はなんて臆病ものなんだろう。







「好きだ!!」

突然、リッドの声が聞こえた。
私は振り向いて、もう小さく見えるリッドを見て、涙を流した。

そして、リッドに見えるように大きく頷く。

「私も…!」

リッドに届いたかな、私の声。

次に会った時には、もっと、色んなことを伝えよう




執筆:09年5月