月を見ていると、不思議と落ち着ける。

暗闇の中、ただ一人その存在を主張し続けるかのように光り続ける月。
それは月の強い意志だと思えた。




私も、そんな月のようになりたかった。












毎日サレ様のお世話。
お世話といっても、サレ様に甘えられるので、それに応えているのが現状。

サレ様のことは大好きだからすごく嬉しい。
本当は私からも素で甘えたいけど仕事上無理な話。
それ以前にドキドキしてしまってダメなのです…。

サレ様は私のことを恋人だと言ってくれたけれど
やはり私はサレ様のメイドとして雇われているんだから…。
こういうこと、しちゃってもいいのかなぁ。そう考えてしまってどうしても甘えられない。



私の肩に手を置き、耳元で、甘い声で私の名前を呼ぶサレ様。
思わず体が硬直してしまい、心臓もバクバクいってる。
恥ずかしすぎて、サレ様のことを直視できないとです…!

、もう今日で何日目だっけ?もう慣れてもいいんじゃないかな?」

ちゅ、と私の頬に口付けるサレ様。
そんなサレ様の行動に、ヒィィィィ!!!と叫びたくなります。

「慣れてもいいんじゃないか」言われても恋愛経験が0に近い私にとってこんなこと…
なかなか慣れないんだから仕方が無い。
しかも、こんな毎日毎日…。流石はサレ様。やっぱり都会育ちは違うのかなぁ。
私なんて、田舎育ちだから自分で言うのもなんだけど私は純情なんだよね。

私はぎゅっと目を瞑って「ごめんなさい」と謝る。
ああ、きっと私の顔真っ赤だよ。頬と耳だけがすごく暑い。寧ろ熱い。

「謝らなくてもいいって」

優しく頭を撫でてくれるサレ様はまるで子をあやす母。
こんなんで、本当に恋人だなんて呼べるのだろうか。
それに…やっぱり私はサレ様メイドなのだから…そのために都会に来たんだから…。

「…ごめんなさい…」

もう、縮こまって謝るしかできなかった。









もう、頭の中がゴチャゴチャ。










その夜、私は自分に与えられた部屋の窓辺で月を眺めていた。
必死に今の気持ちと現状を頭の中で整理する。

私はサレ様のことが好き。
サレ様に触れてもらえてとても嬉しいけど、恥ずかしい。

私はメイド。そしてサレ様の恋人。
メイドと恋人は身分が違うから、私はサレ様に恋人のように接していいのかわからない。
サレ様は私を恋人だと言ってくれたけれど、本業はメイドだから…。







結局、答えはわからなかった。
私はこれからどうしたらいいんだろう。








次の日、私はいつものようにサレ様の部屋を掃除する。
いつもならちょっかいをだしてくるサレ様。
しかし今日は傍らで私が仕事しているのを黙って見ているだけだ。
具合でも悪いのだろうか。

「サレ様、今日はどうなされたのですか?」

「何故だい?」

「今日は元気がないみたいですので…」

「何故そう思うんだい?」

「そっ、それは…」

まさか、サレ様が私に構ってくれないからなんて言えない。
答えられなかった。

私はバツが悪そうにうつ向いて黙りこむ。
でも、この沈黙の険悪な雰囲気が続くのは嫌なので私はわざとふざけてみる。

「顔がひきつってる気がします。もしかして便秘…ですか?」

するとサレ様は突然クスクスと小さく笑い出した。

「な、なんですか!」

って本当に面白い。本当は、僕がいつものようにに構わないから、そう言いたいんじゃないのかい?」

図星を突かれて私は赤くなる。
その反応を見たサレ様は

「ビンゴ」

と、笑った。

確信犯…!!

「いつも僕からばかり愛情表現してる。からはまだ一度も愛情表現してくれてない」

「だって、私はメイドとしてサレ様に雇われてるのよ!?いくら恋人だからといっても…」

私がそう言うと、サレ様は「そうか」と呟いた。
しばらくして、険しい表情で私を見つめた。

「じゃあ、今日からはメイドをクビね」

「…え?」

「聞こえなかったのかい?クビって言ったんだよ」

「…ク…ビ…」

突然の、サレの言葉に私は大きなショックを受けた。

クビって…私はメイドを辞めさせられちゃうの?
それじゃあ、私はノルゼンに帰らなきゃならないの…?
サレ様とは、もう…

私のことが嫌いになっちゃった…?

「…………」

何も言い返す気力すらなかった。
反論するにはあまりにもショックが大きすぎたんだ。

楽しかった、サレ様と過ごした数週間。

それを思い出すと涙が溢れそうになる。

「まぁ、仕方がないよね」

淡々と言葉を放つサレ様はとても楽しそうだった。

「でもさ、このままメイドを辞めさせちゃったらはノルゼンに帰らなきゃならなくなるよね」

「え…?」

「それは困るからさ。、僕と結婚しようよ」

「…えっ?!」

溢れそうだった涙が一気に溢れて私の頬を伝う。
サレ様の一言で、悲しみが一瞬で歓びに変わる。

「メイドという身分がを束縛してるんだろう?でも、メイドを辞めたらはノルゼンに帰ってしまう。
僕はこのままを手放す気は全くないしね」

優しげに微笑むサレ様は世界一輝いて見えた。

を見ているだけで僕は元気になれる」

私、サレ様が大好き。

「サレ様…私も、サレ様が近くにいなくちゃ嫌です…離れたくないんです」

私達はお互いに抱き締めあい、笑いあった。




月は私、太陽はサレ様。
きっと私はサレ様がいるからこそ輝いていられるんだ。

月は強い意志を持っているんじゃなかった。
太陽に照らされているから…太陽があるからこそ月はその存在を主張できるんだ。
ならば私はせめてサレ様が寂しくないように…ずっと貴方の傍にいたい





執筆:05年6月1日