セインガルドに帰るため、私たちは今飛行竜に乗っていた。

いつもなら、飛行竜に乗る時は甲板で風圧を楽しむところなんだけれど…
今回は飛行竜酔いしているリオンの看病をしていた。

真っ青な顔をしたリオンがとても痛々しい。

「…すまないな、

「ふん、足手まといだな」

両手を組み、リオンを見下ろしながら私はそのセリフをリオンに吐き捨てた。
昨日言われたセリフを、そっくりそのままお返しだ。
ふふふ、私は根に持つタイプなんだから…!(グッ

「…それは僕の真似か?フンッ、全然似ていない。」

「いや待て。真似とかそれ以前に自分が言われる立場になってみてムッとしたとかないのか君は。」

「べつに」

ふいっとソッポ向いてしまうリオン。
少しだけ、切なかった。

リオンが私に冷たくなったのは、ファンダリアについてからだった。

私はこれからどうすればいい…?
ずっと考えていた。

そして、私が出した答え、それは…

セインガルドに着いたら、リオンとはもう縁を切るということ。

嫌われたんだから。

どうせ、報われないのならいっそ…








消えて、忘れてしまいたい。
















■夢幻泡影■
10話 裏切りと別れT














「それじゃあ、また会おうな」

セインガルド王に報告をし、神の眼を渡したあと、
私たちはスタンさんをフィッツガルドまで送るための飛行竜の前に集まっていた。
フィリアさんとルーティさんは神殿まで歩いていけるからと断り、
ウッドロウさんも、ここからハイデルベルグ城まで歩いて帰ると言った。
マリーさんに至っては、スタンさんとルーティさんが見事に助け出して
今ではサイリルという街で旦那さんと幸せに暮らしているらしい。
そう、マリーさんは記憶を取り戻したのだそうだ。

「また、か。スタンは田舎モンだからそうそう会えないわよ。
私たち、何も無い田舎になんて行くことないんだから!」

ルーティさんはそう言って可笑しそうに笑った。
それを黙って聞いていたスタンさんは苦笑しながら「じゃあオレから来るよ」と言った。
するとルーティさんは黙ってしまった。

「ルーティ?」

不振に思ったスタンさんが、ルーティさんの顔を覗く。

「な、なによっ!乙女の涙見るなんてアンタ、サイテーよ!!」

ルーティさんはスタンさんを蹴り、わぁっと泣いてしまった。

「ルーティ…」

そんな二人の様子に、フィリアさんとウッドロウさんが微笑みながら
二人の邪魔にならないよう静かに去っていった。

そして、リオンも続いて去っていこうとする。
私も、その後に続いて歩いた。

ルーティさんが泣き止んだ時に、飛行竜の船員さんがしびれをきらしたように
「スタンさん!まだですか?!」と大声を上げた。
スタンさんは「今行きます」と答えて、ルーティさんに手を振って踵を返した。

私は、リオンの後ろで自嘲気味に笑う。
するとリオンは不振に思ったのか、私に振り向いて眼を丸くした。

私は、飛行竜の方を向く。

「どうした?」

「……」

…?」

リオンが、私に触れようとする。

「触んないで。私はあんたを兄だと思ってない。」

しかし私はリオンの手を払いのける。
そして、鋭く睨みつけてやった。

するとリオンは一瞬だけ、目を見開いた。

「…ああ、そうだったな。どうせ僕たちは血の繋がっていない兄妹だ。
しかし、今のお前はおかしい。どうした?突然何を言い出すんだお前は…」

「さようなら。今までありがとうございました。」

私はそう言い残して、飛行竜に向かって走り出した。
リオンが、私の名前を叫びながら追って来る。

けど…

「な、何をするんだお前ら!!」

ウッドロウさんと、フィリアさんがリオンを押さえつける。

「これは…彼女の意思だ」

「ごめんなさい、リオンさん…さんに頼まれたんです…!」

「離せ!!やめろ!戻れ!行くんじゃない!!…っ!!!」

リオンの悲痛な声に、胸が締め付けられる…。
でも、もう決めたんだ。

後悔なんてしない。

だから…お願い

ーーー!!」

もう名前を呼ばないで…












ヒューゴさんには、もう言った。
そしたらヒューゴさんは残念そうに笑った。

あとは、飛行竜に乗る際に、リオンが私を引き止めないようにするだけだった。

「ウッドロウさん、フィリアさん、お願いがあります」

だから、私はウッドロウさんとフィリアさんに頼んだ。
もしも、リオンが私を追おうとしたら

止めてください、と。

最初は二人は何も言わずに頷いてくれた。









「本当によかったのか?…」

スタンさんが私に問いかける。

「スタンさんこそ、私なんかをリーネの村に連れて行ってくれて、いいんですか?」

「俺は構わないよ。でも、リオンは…」

「リオンには、マリアンさんという大切な人がいます。
私は二人の関係を邪魔したくないんです。私がいると二人は私に気を使うから…」

…」

「あ、ちょっと風に当たってきます。昨日乗った時は
リオンの看病でせっかくの飛行竜、楽しめませんでしたから」

私はその場に立って、スタンさんに頭を下げた後、そそくさと甲板に出た。





あんな悲しそうなリオンの顔、初めて見た。


今、リオンは、私のこと、どう思っているかな。






少なくとも今は…恨まれてもおかしくはない。








執筆:05年8月14日
修正:05年8月20日


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