マリーさんを追って、私たちは船でファンダリアを目指す。 ここ最近、船に乗りっぱなしだ。 なんだか、前に乗ったときのがトラウマになってしまったらしく船に乗ると酔ってしまう。 「大丈夫かい、」 自室でベッドに転がっていると、スタンさんが水を持ってきてくれた。 私は感謝しながらそれを受け取る。 そして口の中へ流し込んだ。いくらか、気分が楽になる。 少しでもリオンに来てほしかったな、なんて思ってしまった自分がイヤになる。 ふと、スタンさんの腕の傷が目に入った。 「スタンさん、血出てます」 「え?!あ、ホントだ。いつの間に。」 私は苦笑するスタンさんを見て微笑み、 ポケットからハンカチを取り出し、スタンさんの腕に巻いてあげる。 すると、スタンさんは無言で異常なくらい私を見つめていた。 「どうかしたんですか?あ、私の顔に何かついてます?」 「俺が探してた女の子は…やっぱりだったんだ。」 スタンさんはそう呟き、突然ぐっと強く私の腕を掴んだ。 「…なっ!?」 私はそんな覚えない。 そもそも、親に捨てられる前の記憶は殆ど無い。 一体どんな親だったか、誰が親だったのか、どこに暮らしていたのかさえも…。 「、このバンダナに見覚えない…?」 「…え。」 そのバンダナには確かに見覚えがあった。 どこで、見た? 何かがこみ上げてくる…。 『、また無茶したのね?』 女の人の顔が…脳裏に…。 誰?どことなく、私に似てる…。 私の…お母さん? …そうだ。それは遠い昔に私がまだ父親に剣を習いたての頃 怪我をしたときに母親に巻いてもらったバンダナ…。 それをどうしてスタンさんが…。 「やっぱり、あるんだね?」 「はい、そのバンダナ…母親だった人にもらった…何で?どうしてスタンさんがそれを…。」 「このバンダナ、思い出の女の子が怪我した俺の手当てにくれたものなんだ。 そのとき、その子は「母さんにもらったものだけどあげる」って言って俺の怪我した足に巻いてくれた」 スタンさんは懐かしそうに話した。 「……あ」 ■夢幻泡影■ 8話 思い出の少女 「、ここはリーネの村だよ。お前が最後にここにきたのはもう6年前だよな。」 父さんが私の手を引きながらニッと笑って見せた。 隣で母さんが「そうね、もうそんなになるのね」と言って微笑んだ。 そう、私たちは親子で世界中を旅していたんだ。 私は父さんに剣を習いながら…。 おかげで私の剣の腕は一人でも並のモンスターくらいは倒せるほどになっていた。 「じゃあ私は4歳のときにこの村にきたことがあるんだね」 「おっ、もようやく暗算ができるようになったんだな?」 「失礼な!私はもう10歳だよ!」 「ふふっ、一生懸命計算の練習したもんね」 父さんが私をからかうと母さんは隣でクスクス笑う。 思わず私も笑ってしまった。 「おや、旅の者かね」 私たちの前にお爺さんが現れた。 お爺さんはそう言って私たちを珍しそうに眺め始める。 「はい。そうです。」 「おぉ、そうかそうか。ここ、リーネの村は何もない 田舎じゃが、いい村じゃからの。ゆ〜っくりしてってくんな。」 お爺さんはそういうと畑のほうへと歩いていってしまった。 「流石田舎。ノイシュタットとは違って人付き合いがいいみたい」 「こら、!何言ってるの!!ノイシュタットの人達に失礼でしょ!」 私はぴしゃりと母さんに叱られた。 バツが悪くなった私はそれからしばらく黙り込んだ。 まず、宿をとりに宿に向かった私たち。 外からは村の子供たちの遊ぶ声が響いている。 「ねぇ。外で散歩してていいかな?」 「いいけど、モンスターには気をつけるのよ?」 「ほーい」 私は返事をすると急いで宿を出た。 「は〜、やっぱ田舎はいいなー。空気が澄んでる」 村をぶらぶらしていると村の裏山の方から小さな悲鳴が聞こえた。 子供がモンスターに襲われてる…!? 私はすぐに剣を抜いて裏山に向かった。 するとそこには金髪の少年と紫髪の少年が傷を負いながら震える手で剣を握っていた。 …どうやらまだ剣の経験が浅いらしい。 「伏せて!!」 私は二人にそう指示すると地を蹴り、モンスターに刃を向ける。 二人が伏せたところでモンスターの胸が剥き出しになり、すぐに剣を刺した。 するとモンスターはおぞましい断末魔の叫びを上げて動かなくなった。 「い、一撃で…倒した……!?」 金髪の少年が私を見て驚愕の声を上げた。 もう一方の少年はよほど怖かったのか気を失っているようだ。 よく見れば金髪の少年は脚に大きな引っかき傷がある。 そこからはだらだらと血が流れ出ていた。 「あなた、出血すごいよ?…母さんにもらったものだけどあげるよ。」 私はそう言って金髪の少年の前でしゃがみ、 ポケットからバンダナを取り出して少年の脚に巻いてやった。 すると少年は慌てて立ち上がった。 「え、そんな悪いよ!…っ!!」 「ほ〜ら、とりあえず止血しなきゃ貧血になって倒れちゃう。」 バンダナを巻き終えると金髪の少年はすまなそうにボクを見た。 「ありがとう。あの…君は?俺はスタン。」 「私?私は……。あ、そろそろ行かなきゃ。」 「え?」 「じゃあね。そっちの人、気を失ってるみたいだから運んであげて。」 そう言い残して、私はスタンたちと別れた。 それから数日後。 ノイシュタットに向かう途中私の両親は盗賊に殺された。 母さんは私の身を案じて庇って…。 盗賊は私も死んだと勘違いしてその場を後にした。 父さんと母さんが持っていたお金を全て持って。 私は母さんの亡骸から這い出ると言葉を失った。 私は父さんと母さんの剣大事にしていた家宝である剣を腰にぶら下げ歩き出した。 忘れたかった。 父さんも母さんもあいつらに殺されてしまったのを。 もう、死んでしまったという事実を認めたくなかった。 私はノイシュタットに辿り付いた。 だけど、当然暮らすところも無い。帰る家なんてない。 しばらく、ノイシュタットでの孤児の生活を強いられた。 父さんと母さんの形見の家宝の剣を持って…。 売ればお金になったかも知れない。けど、売りたくなかった。 ノイシュタットでの孤児生活が何日か続いた。 いつの間にか、自分が今まで何してきたのかすらわからなくなった。 貴族の子供に罵られた。けど、返り討ちにしてやった。 そしたらその貴族の母親が出てきたから必死になって逃げた。 ある日、見知らぬおじさんが声をかけてきた。 それがヒューゴさんだったんだ。 「思い出した。そして私はダリルシェイドへ…」 「…。俺、のことが好き、なんだな。もしも、が良ければ俺と…。」 スタンさんが真剣なまなざしで私を見つめる。 しかし、私は首を横に振った。 「スタンさん。ごめんなさい。私はスタンさんのこと好きです。 でも、そういう風にはどうしても見れなくって…ごめんなさい、ごめんなさい…。」 申し訳なくて、涙がこぼれた。 そんな私を見て、スタンさんは慌ててしまう。 「あ、いや、いいんだ。わっかてる。俺が勝手にを好きなだけだもんな。 見つけられただけでも俺は嬉しいよ。ありがとう、。」 スタンさんは苦笑した。 ごめんなさい、スタンさん…。 私がもっと早く思い出していればよかったのかもしれない。 スタンさんにツライ思いさせちゃって…。 「ごめん…なさい…ふぇ…ぇ…っ。」 「な、泣かないでよ、!俺は平気だからさ!」 スタンさんはなんでこんなに優しいんだろう。 そしてなんて綺麗なんだろう…。 私は何だろう? 口では綺麗事言ってて、思ってることは汚い。 リオンを応援してるどころか邪魔してる。 諦めきれてない。醜い。 「じゃあさ、せめて少しだけこうさせてくれないかな?」 スタンさんは私の耳元で囁いて、私を抱きしめた。 スタンさんの温かな体温が伝わってくる。 「……はい」 スタンさんはこんな醜い私を好きになってくれた。 それなのにこんな形で振ってしまって。 私はどうしようもなく醜いよ。 落ち着いた私は船の甲板に出た。 スタンさんには本当に悪いことしちゃったな…。 流石、雪国のファンダリアに近づいているからか空気がとても冷たかった。 「寒〜い…。」 吐いた息が白く曇る。 「か?」 甲板の先端からリオンの声が聞こえた。 なんだか、ここでリオンに会えて嬉しい…。 「そ、そうです!あなたの可愛い妹のちゃんです!」 「バカをやってるな。海の藻屑になりたいか?」 私はぴょん、とリオンの隣に立つ。 するとリオンは私にマントをかけてくれた。 とても、とても暖かい…。 「えへへ〜、ありがとう。」 「もうすぐ、だな…。」 「うん、そうだね…。」 そう、もうすぐ…。 もうすぐ私の大嫌いな雪国に到着。 以前ファンダリアに任務で来たとき、寒くて本当に死にかけたから。 執筆:04年2月? 修正:05年8月28日 前話 / 次話 |