「腹減ったぜー!」
依頼を済ませていつもの3人で食堂に入ると、美味しそうな良い匂いが鼻腔を刺激し、空腹感を誘う。今日は結構動いたから、すごくお腹が空いている。今すぐにでも何かお腹に入れないと倒れてしまいそうだ。
リッドは先頭を切って台所に立つ本日の食事当番に声を掛ける。今日の当番はファラだった。
「今日の当番はファラだから安心だね」
隣を歩いていたリオンにこっそりと耳打ちすると、リオンは口の端を上げて鼻で笑う。
「アーチェやリフィルの料理は人が口にするものではないからな」
彼女達の被害に遭った人はこのバンエルティア号で大勢いる。もちろん、私たちもその中に含まれていた。ただ、リッドは何事もなかったかのように毎回残さずに完食しているからすごい。
「ファラ、オムレツあるか?」
「私、ハンバーグ!」
リッドに続き、私もファラにリクエストする。するとファラはにこっと笑い、お皿に綺麗に盛り付けてあるオムレツとハンバーグを出してくれた。
「はいはい、リッドもも、ちゃーんと二人のために作ったから大丈夫だよ」
「やりー!」
「わぁい、ありがとう!」
急いで席に着き、私とリッドはすぐに食べ始めた。リオンは遅れて私の隣に座り、ファラにカレー(ニンジン抜き)を頼んだ後、微笑みながら私を見つめていた。
「どうしたの、リオン。リオンもハンバーグ食べたい? ハンバーグにカレーかけてみてもおいしそうだよね」
「いや、僕はただが美味しそうに食べていたのを見てただけで……」
リオンが恥ずかしそうにソッポむいた時、ファラがリオンのカレーを運んできてくれた。私はハンバーグにナイフを入れてリオンのカレーの上に乗せた。
「ハンバーグ、少し分けてあげるね!」
「……あ、ああ」
苦笑しながらリオンもスプーンで少しカレーを掬い、それを私のハンバーグの端っこにかけてくれた。一方、オムレツにむしゃぶりつくリッドの様子を楽しそうにみていたファラがふとリッドに手を伸ばした。
「ほら、リッド。口元にケチャップついてるよ」
ファラはリッドの口元についたケチャップを人差し指で拭い取った。ティッシュで指を拭くと、クスッと微笑む。
「ん? おお、悪いな、ファラ」
リッドはニカッと笑うと、再びオムレツを口に運んでいく。今度は口元にケチャップがつかないように意識しているらしく、慎重な手つきだった。それは何だか見ていて微笑ましい光景だった。それと同時に、私の中でとても不思議な気持ちが湧き上がってきた。んーと、何て言うんだっけ、こういうの。
「えっと……そうだ。ファラとリッド、夫婦みたいだね」
そう私が言うと、ファラの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。リッドの手も止まってしまい、呆然と口を開けたまま私を凝視していた。
「や、やだ! 何言ってるの!? ってば……」
「だって、そう見えたんだもん」
「ったら……っ」
ファラは両手で赤くなった頬を隠しながら、ちらっとリッドに視線を送った。しかし、リッドは何故か怒っているみたいだ。顔が強張ってて、何だか怖い。
あれ、今私悪い事を言っちゃったのかな。
「あのな、!」
リッドが怒気を含めた声で私の名前を呼ぶ。反射的に私の身体はビクリと跳ねた。それと同時に、私の隣に座っていたリオンが私の頬に触れる。
「、お前もご飯粒がついている」
私が呆然としていると、リオンは嘲笑しながら私の頬に付いたご飯粒を取ってくれた。
うわわわ、なんて恥ずかしいのだろう。
「わ、ほんと!? ありがとう、リオン」
まさか私もリッドと同じような事をしてしまっていたなんて。そう思ってあははと笑う。しかし、その次の瞬間リオンは予想外な事をした。
――パクッ。
あろうことか、私の頬についていたご飯粒を、リオンは食べたのだ。
「……な、何をして!?」
急に頬に熱が篭るのを感じた。
「取ってやったんだ。礼くらい言ったらどうなんだ?」
私の気持ちを知ってか知らずか、リオンがニヤリと笑う。こうなってしまったらもう楽しい食卓どころではない。
「食べなくてもいいでしょ! 恥ずかしいよっ!」
ぽかぽかとリオンを叩くも、リオンは意地悪っぽく笑うだけ。私は恥ずかしさと悔しさで涙目になった。
「あはっ、リオンとは仲のいい兄妹って感じだね」
ファラが楽しそうにクスクスと笑う。
「うん、リオンもリッドも優しいお兄ちゃんみたいなの! 二人とも大好きだよ」
私が微笑むと、リオンとリッドは優しく微笑んでくれた。
お弁当つけてどこいくの?
(兄妹、か……夫婦と言って欲しかったのだが)
(オレが先に取ろうとしたのに、リオンの奴……!)
執筆:11年6月4日