アニーがいつものように医学書を読んでいた所だった。急に部屋の外が騒がしく感じられ、しばらくすると部屋の扉を乱暴に開けられ、がリッドを担いで現れる。

「アニー! お願い、リッドを助けて!」

さん……どうしたんですか!?」

 の腕の中にいるリッドに視線を移せば、彼は瀕死の状態。アニーは慌ててリッドをベッドへ寝かせると、すぐに治療を始めた。その隣では今にも泣き出してしまいそうな目でリッドを見つめている。

「リッドが私を庇って……うわあああああん、どうしよう! リッドが死んじゃう!」

「大丈夫です、わたしがなんとかしますから……さんもお疲れのようですし、休んでください」

 泣き出してしまったを宥め、アニーはリッドの治療を再開する。

「……リッド」

 自分が出来る事は、もう何も無い。ただ1秒でも早くリッドが回復する事をいのることだけ。はぐっと唇を噛み締めた。



※ ※ ※ ※ ※



「……」

「……ん」

 しばらくすると、リッドが意識を取り戻す。アニーは起き上がろうとするリッドを制した。

「リッドさん、気づいたんですね。あ、まだ寝ていて下さい!」

はっ!?」

 リッドは辺りを見回し、の姿を探した。アニーはそんなリッドを見て微笑む。

「心配しなくても、さんならそこのソファで寝ています。瀕死のリッドさんを担いで……お疲れのようでしたので」

「そ、そうか」

 アニーの言葉を聞き、リッドはソファに視線を移す。そこには涙を流した跡の残っている顔ですやすや寝息を立てているがいて、ホッと安堵の息を漏らした。

「最近、リッドさんはずっとさんに付きっきりですね。もしかして、リッドさんはさんが好きなんですか?」

 アニーがにこりと笑いながらリッドに問い掛ければ、リッドは顔を真っ赤にして必死に首を横に振った。

「なっ、何言ってんだよ!? 何のことだよ! ただオレはが危なっかしいから心配なだけで……だ、だからと言って好きってわけじゃねぇよ!」

 あまりにもわかりやすい反応に、冗談で言ったつもりだったアニーは苦笑した。

(好きって言ってるようなものじゃないですか。というか、てっきりファラさんが好きなんだと思ってたのにな)

さん、可愛いですもんね」

 アニーの言葉にリッドが興奮気味に食いついた。

「そ、そうなんだよ! は可愛いから他の奴も絶対のこと――あ」

 アニーが驚いてリッドを凝視していると、リッドはハッと我に返った。やっちまったという表情でリッドがアニーの顔色を窺う。

「わたし、応援しますよ。それに、わたしが見る限り、今のところさんに恋してるのはリッドさんだけだと思います」

「アニー……!」

 リッドは目をキラキラと輝かせながらアニーを見つめた。今まで誰にも相談できなかった、どんなにアピールしてもは気づかない。それに、今はまだ恋のライバルがいないとはいえ、このギルドも日に日に人が増えていっている。だからいつ誰がを好きになってしまうかもしれない、またはが誰かを好きになってしまうかもしれないという不安を一人で溜め込んでいた。そんな状況に絶望しかけていたところに、応援してくれる者がいるのはとても心強かった。リッドにはアニーがとても輝いて見える。

「それじゃ、オレもヴェイグとのこと、応援するぜ!」

 そんなリッドの言葉に、アニーはビクリを肩を震わせた。

「ど、どうしてそのこと……!?」

「こないだファラが言ってたんだよ。アニーはヴェイグのこと好きだってよ!」

「ファラさん……内緒って言ったのに」

 アニーは顔を赤くしながらプルプルと拳を震わせていた。



恋のキューピッドも恋してる




(わああああリッド、大丈夫!? ごめんね、私のせいで!)
…っ!? だ、だ、だ…大丈夫だっ!)
(リッドさん、意識しすぎです)



執筆:12年3月4日