朝起きたらパートナーである一ノ瀬トキヤが私の隣ですやすやと気持ち良さそうに寝息を立てていた。
私は寝ぼけた頭をフル回転させて現状把握を急ぐ。
布団を捲り、互いに服を着ていることを確認、よしどうやら過ちはないようだ。
そして昨夜の記憶を掘り起こしてみる。
確か昨日はSクラスの仲良し組で集まって久々の再会を喜んでて…
と言ってもトキヤとはパートナーだから嫌でもほぼ毎日顔を合わせているけれど。
で、日付が変わる前に一人で帰宅して風呂に入って寝たはずだ。そこにトキヤは確実にいなかった。
じゃあ何故こいつは今ここにいる。
どうやって入ったかはわからないけれど乙女のベッドに忍び込むとはいい度胸だ。

「おい起きろよこのヤロー!」

私は足を振り、今だ夢の中であるトキヤをベッドから蹴り落とした。
どんっと鈍い音がしてトキヤは床の上に転がる。
するとトキヤはむくりと身体を起こし、「何をするんですか…」と不満の声を上げた。

「何でトキヤがここにいるのか説明してくれませんこと?」

ベッドの上からトキヤを睨み付けてやれば、トキヤはふふっと微笑む。正直気持ち悪い。

「貴女の寝顔が見たくて、先日こっそりこの部屋の合鍵を作っておいたのですよ。
しかし、あまりの可愛さに見るだけでは満足することが出来ずに添い寝までしていました。
ふう、私としたことが」

「それは不法侵入でしょ。社長…いや警察呼ぼうか」

私が枕元においてある携帯を手にしようとすると、トキヤは慌ててそれを制しにかかってきた。
それが私を押し倒す形になり、なんともいえない空気が流れる。
トキヤは普段変態だけど、歌を歌わせれば本当に最高なのに残念すぎる。
だけどこれはちょっとやりすぎだよね、私の堪忍袋はたった今、まさにこの時、ぶち切れちゃったよ。

「うわー、トキヤさん不法侵入した上に襲ってくるんですね。
最悪です。もういい加減パートナー解消させて頂いてもいいですかー?」

私の上にいるトキヤを睨みつけると、トキヤはニヤリと笑う。

「すみません。押し倒すつもりも襲うつもりもなかったのですが…
でも貴女がそんなことを仰るのなら本当に実行させてもらいますけど構いませんよね?
このまま何もせずにパートナー解消させるのでしたら、襲ってから解消された方がマシですので」

なんということでしょう、トキヤの方が一枚上手だったようだ。
そしてトキヤの手が私の胸の上に置かれた。
やばいやばいやばい、本気だこいつ!

「…すいませんでした。パートナーでいさせてくださいチクショウめ」

「やわらかくて、気持ちいいですね」

私の言うことを無視してふにふにと私の胸を揉むトキヤ。
ちょっとおおおおお、トキヤさああああん!?

「あっ、何してんのやめ…」

「…やめるわけないじゃないですか。今まで私がどれだけ我慢してきたと思っているのです?」

抵抗する私の両手をトキヤは片手で押さえつけて、素早くパジャマのボタンを外していく。
晒される胸に羞恥で頬に熱が篭る。このやろう、いい気になりやがって。
頭に来たからトキヤのアレを蹴り上げてやろうとした瞬間、トキヤはいつも見せないような悲しげな表情をした。

「学生の頃からずっと貴女を好きでいました。それなのに貴女はいつも私の気持ちを少しも理解しようとしない」

「…っ」

それはとても切なくて、私の胸が締め付けられる。そしてドキドキもした。
思い返せば、トキヤは最初真剣に告白してくれて、
それを私は退学になるのが怖くてトキヤを振ってしまったんだ。
それでも「これからも好きでいさせてください」というトキヤに「勝手にすれば」とテキトーな答えを返して…。
本当は、トキヤのこと好きだった。
でもトキヤが奇行に走るうちにうんざりするようになっていって、その気持ちもいつの間にか忘れてた。
でも今目の前にいるのは、いつものようなトキヤではなく、昔私が好きだった頃のトキヤだ。

ああ、そうか。多分トキヤは必死だっただけであの時とは何も変わらないんだなぁって今更気付いたよ。
それに、私もまだトキヤのことが好きなんだ。

「私はあの時から貴女に振り向いてもらいたくて必死だったんです。ですが、もう耐えられそうにありません」

「ゴメン、私本当はトキヤのこと好きだったんだ」

私がボソリと呟くと、トキヤが大きく目を見開いた。
うわぁ、やっぱりビックリしてる。同時にトキヤの私の手を拘束する力が弱まった。

「今、なんて…」

「トキヤのこと、好きだったけど退学が怖くてあの時は振ったの!
それに、変なこといっぱいしてくるからドン引きしてたけど…でもやっぱり」

好きなの。
その言葉を発する前にトキヤの唇が私の口を塞ぐ。

「ん…」

最初は触れるだけのキスだったのに、何度も角度を変えてキスされる。
息苦しくなった時、トキヤはゆっくりと唇を離してたずねた。

「…では、私と付き合ってもらえますか?」

「もう、いきなり婚姻届突き出してきたり部屋に盗撮カメラ仕込んだり精子入りのお茶渡してきたり変なことしなければね」

「ええ、が手に入るのでしたらもうしないと誓います」

トキヤは嬉しそうに笑った後、私の胸に顔を埋めた。






やめてください犯罪です







(あっ…トキヤ…約束、違う…っ!変なこともうしないって言ったのに…んっ)
(いいえ、この性行為は変なことではなく恋人同士なら行う当たり前の行為です)
(んあ…そのドヤ顔、マジ、むかつくわぁ)



執筆:12年07月7日