ラハール様は魔王の仕事で外に出ていて、私はといえば久しぶりの休暇を貰っていた。
長いこと、ずっとラハール様のお傍に仕えていて、片時も離れた事がなかった気がする。
久々の独りの時間。貴重な、時間。
それでも、一年一日一時間一分一秒でもラハール様のお傍にいたい私のこの気持ち。
ラハール様はいつ戻ってくるのだろう。

私は起き上がって、読んでいた本をそのへんに捨て、腰元から取り出した銃を構える。
そして、壁にかかっている天使の人形に向かって弾を打ちつける。
とりあえず身体は鈍っていない様子。

気分は最高に最悪。

自分の、ラハール様への気持ちに気づいてから、私は悩んでいた。
悪魔なのに、恋なんてしちゃっていいのかな。
しかも、私はまだまだ新米。そして相手は魔王様。
身分が違いすぎる上、恋や愛だなんて…。

「恋する悪魔なんておかしいよね。」

悪魔は常に残虐・非道というイメージがある。
だけど、私はまだ残虐にも非道にもなりきれていない。
わかんない。もやもやする。ぐるぐるする。
…その辺の悪魔でも相手にストレス発散してこよう。






しくじった。
結構な強敵を相手にしてしまい、返り討ちにされてしまった。

動けない。
動けないんじゃなくて動かないんだ。

苦しい。痛い。

あー、視界が赤いや。
目に血でも入ったかな。

!!」

あれからどのくらい経ったのか。
ラハール様の震えた声が聞こえた。
だけど、口を動かすことができなくて、話せない。
もはや、目を開けることで精一杯だ。

「誰にやられたのだ!?」

すいません、ドラゴンタイプの悪魔です。
私のレベルと相手のレベル、考えてませんでした。

「ガムだ。ゆっくりでいいから、噛め!」

涙を拭って、私を抱きしめるラハール様。
ラハール様は私の口に体力回復用のガムを入れた。
傷が少しずつ癒えていく。

「ラハール様、ごめんなさい。」

ようやく口を動かせるようになって、私は涙を浮かべて、謝罪する。

「…何があったのだ?」

ラハール様は私を抱きしめたまま問いかける。
正直、こんなに心配してくれるなんて思わなかった。

「悪魔になりきれない自分、ラハール様に恋してしまった自分が許せなくてヤケになりました。
ラハール様の家来なのに、悪魔らしくない私なんて…要らないですよね。
すいません、あのまま死んでおけばよかったのかもしれません。」

パンッ!

突然、頬に痛みが走る。
ラハール様が、私の頬を打った。
私はその反動で地面に叩きつけられる。

「馬鹿者!何のためにお前をこの魔界に連れてきたと思っているのだ!
オレさまは…オレさまはお前のことを気に入ったのだぞ?
それが何だ?死んでおけばよかっただと?ふざけるなぁっ!」

涙を流して、極限まで叫ぶラハール様。

そっか、私…こんなにも大事に思われてたんだ。
全然気づけなかった。馬鹿だな、私。

「次にそんなことをしたら、絶対に許さんぞ・・・っ!」

「は、はいっ!」

私は慌てて返事をする。
するとラハール様はごしごしと腕で涙をぬぐって

そして、一瞬笑った。



05. 悪魔の恋心





「お、お前がたとえ立派な悪魔じゃなかろうが…オレ様はお前の事が好きだ!」

「ラハール様…。」

嬉しくて、嬉しくて、涙がぼろぼろとあふれた。
生きている限り、どんな種族でも恋をするんだ。
天使だろうが、人間だろうが、そして悪魔でも。


執筆:04年10月21日
修正:10年5月4日