「ラハール様。」

私はお昼寝中のラハール様を覗き込む。
無防備で、魔王とは思えないくらいの可愛らしい寝顔。
思わず笑みがこぼれてしまう。

「風邪、ひいちゃいますよ。」

私はそっと、ラハール様の近くにあった毛布をラハール様の上にかける。
ま、風邪の菌もラハール様には勝てないでしょうけど。
それにしても、ラハール様の寝顔、可愛いな。
思わずラハール様の寝顔にすっかり魅入ってしまった。
いつまで寝てるのかな?

「おい。」

「きゃ!?」

突然ラハール様の目がぱっちり開いて、私を睨む。
そして、ラハール様は起き上がると、私の唇にキスを落とした。

え…今、何。
キス?

「ら、ラハール様?い、今のはキス…ですよね!?」

私は混乱のあまり、うまく話せなくなる。
まさか、ラハール様がキスしてくるなんて思いもしなくて。

「おはようのキスというやつだ。人間界では、目覚めたときにはこういうことをするらしいからな。」

フロンが言っていたのだ、とラハール様。
でも、それは恋人同士がするものであって、普通はしないものだと…思う。

いや、待てよ。
もしかして、ラハール様は私以外にも誰かと…?

「あの、ラハール様。こういうことを、いつも、誰にでもやっているのですか?」

恐る恐る訊ねる私に、ラハール様は首を傾げた。

「いや、こんなことをしたのは初めてだ。」

ラハール様の答えに、私はホッと胸をなでおろした。
よかった。まだ私以外の人にはしていないみたいで。

「…それに、以外にはしたいと思わん。いいか、お前だけは特別だからな!」

ラハール様は頬を赤く染めて棺桶から飛び出して行ってしまった。


04. 他の誰でもなく



(ドキドキが止まりそうにない。どうしよう私、ラハール様に恋してる。)



執筆:04年12月29日
修正:10年5月4日