強制的にフランの部屋に連れ戻された私は今、フランによって壁際に追い詰められていた。
顔が近い。息がかかる。心臓の音が聞こえちゃんじゃないかって、恥ずかしくなる。
そもそも、さっきの女性隊員の彼女はいいの?浮気にならないの?
「あの、先程の女の子は…。」
私の問いに、淡々と答えるフラン。
「始末しましたよー。」
えっ、始末?どういう、ことなんだろう…。
どこかに追いやったとか、そういうことなのかな。
「あの女、しつこかったんですよー。挙句の果てに、のことを変な女呼ばわりしやがって。」
フランがあの女性と付き合ったんじゃなかったことに安心する。
呼び捨てにされたことも気になったけれど。
でも、それよりも「始末」という言葉の意味は…
「もしかして、殺した…?」
恐る恐る聞くと、フランはふっと笑う。
「当たり前じゃないですかー。ミーの幻術でドロドロですよ。
ベル先輩がには見えないようにしてくれたおかげでグロいもの見せずに済みましたー。」
ドロドロって…。
確かに、あの子にはイラッとしたけれども…それでもそこまでしなくてもよかったんじゃないかって思う。
そのあたりは、殺し屋と一般人の価値観の違いなのだろうか。
私は、本当にフランのことを好きでいていいのかな。
「は、ミーのことが怖いですかー?」
あまりの事実に、俯いてしまった私を見たフランが弱々しく問いかけた。
顔を上げると、フランが悲しそうな目をしている。
「…正直、貴方たちが怖い。さっきもベルさんに殺されると思ったら身体の震えが止まらなかったの。」
「…ですよねー。」
フランは私の手をぎゅっと握った。
私も、それを握り返す。
フランの手は温かい。冷酷な一面もあるけれど、ちゃんと優しいところもいっぱいあるんだ。
「でも、ミーはを離しませんので。」
「でも、私はそれ以上にフランが好き。」
私とフランの声が重なる。
「…フラン?」
離さないって、どれは友達として?それとも…。
「ミーも、のことが好きなんですよー。」
フランの言葉を聞いた瞬間、私の心臓がドクンと波打つ。
きっと、心拍数が大変なことになっているに違いない。
ぽろりと、目尻から涙があふれ出る。
この答えを何度夢見たことだろう。夢じゃ、ないんだよ、ね?
「屋上で初めて出会ったあの日、ミーが頬にキスしたらすごく可愛い反応するからですよー。」
あの時のことを思い出す。
初めてあんなことをされたから、すごくドキドキしたんだっけ。
フランと出会うまで、大して男子と仲良くするなんてなかったから免疫がなかったのだ。
「あ、あれはっ!そういう行為に慣れてなかったから…!」
「慣れてたら困るんですけどねー。」
不敵に笑うフラン。
私も、くすっと小さく笑った。
「うん…そうだね。私の初めては全部フランにあげたいから…。」
だから、ベルさんにファーストキスを奪われそうになったときは死んでもいいと思った。
フランがいい、フランじゃないと嫌。私はフラン色に染まりたい。
「…っ!、大好きですー!」
フランにぎゅーっと抱きしめられる。
幸せっていうのは、こーゆーことを言うのかなーなんて思う。
私もフランの背中に手を回して、抱きしめ返した。
全身で、フランとの幸せを感じたい。
「わ、私も大好きだよ、フラン!」
どちらともなく、唇を重ねる。
キスをするときには目を閉じたほうがいいのかなーとか、鼻はぶつからないかなーって考えたことがあった。
だけど、そんなのは考えなくても自然とできるんだなぁって実感する。
一度唇を離して、再び重ねる。軽く触れるだけのキス。
片想いの日々にさよなら。
今日から、私たちは両想いなのだ。
夏休みも終わり、二学期が始まる。
私はイタリアで溜まった任務をこなさなくてはならないフランを残して日本に帰国した。
夏休みの課題は、イタリアのヴァリアーの皆さんに手伝ってもらって何とかなった。
元の生活…つまり、フランのいない学校生活は酷くつまらないものだった。
今までのは夢でも見ていたんじゃないかってくらい、刺激的な日常だった。
なんだか、ひと夏の恋みたいな…。
だけど、私はフランのことが好き。この気持ちが変わることはない。
フランに会いたい。
一人で歩く帰り道。
一人で歩くのが当たり前だったのに、いつのまにかフランと歩くのが当たり前になっていた。
この路地を曲がれば、登校のときにフランと待ち合わせてた公園。
「ー。」
間延びした、私を呼ぶ声。
振り返れば、そこには愛しい人。
日本に来るのは、いつになるかわからないと言っていたのに…こんなに早く会えるなんて!
しかも、会いたいって思った瞬間だなんて、運命じゃないかな。
「フラン、何で?いつ帰って来たの!?」
私は嬉しさのあまり、フランに飛びついた。
フランはしっかりと私を受け止めて、微笑む。
「さっきですよー。に早く会いたくてテキトーに任務切り上げてきましたー。
また、しばらくはこっちで高校生として過ごしますー。」
「本当に、任務はいいの?」
そう問いかけると、フランは私の左肩に顎を乗せた。
耳元で言われてぴくっと反応してしまう。
「ミーは、と過ごす日々が好きなんですよー。
と知り合ってから、ミーの世界が変わった気がします。」
「私も、フランに出会ってから世界が変わったんだよ。
平凡でつまらなかった日々から、キラキラな日々に変わったの。」
あの日、フランに出会った日に私の世界は変わっていった。
フランに出会えていなかったら、きっと今も平凡な世界に取り残されていたかもしれない。
「私ね、決心したの。」
私より背の高いフランを見上げて、微笑む。
「何を決心したんですかー。」
フランが不思議そうに首を傾げる。
「殺し屋の彼女なんだから、私も強くなるの!」
フランに恋して、私は変わったと自分で思う。
それは、とてもいい方向へと…。
そして、世界は回っていく
(そんなこと決心しなくてもいいんですけどー。)
(わ、酷い!人がせっかく…)
(だって、どんなことがあってもミーがを守りますからー。)
(…あ、ありがとう。)
どうしても夏中に完結させたかったので頑張りました…!
1学期の終盤から2学期の始まりのお話だったので。笑
夢中になれるものがなくて腐っていくヒロインがフランに恋をしたことで変わっていって、毎日が楽しいと思える。
恋ってすげぇんだよなーという気持ちを込めて書きました。
ベルは多分ヒロインのこと好きだったんだけど、
ヒロインがフラン大好きでベルに見向きもしないから身を引いたんだと私は思う。笑
「ししっ、姫の幸せは王子の幸せでもあるし」とか強がり言って部屋でこっそり咽び泣けばいい←←
執筆:10年8月29日