あたしの夢は、立派な軍人になる事!
それは小さい頃からの夢で、今だって夢のために日々努力している。
そこらの貴族のお嬢様とは違うのだ。
お茶ばかり飲んできゃっきゃと遊んでいる暇なんてあたしには、ない。
だからあたしは今まで軍学校での成績は常に1位を取っていたし、周りからも将来有望と言われていた。

しかし、それも少し前までのこと。

今現在、私の成績は2位。
最近頭角を現してきた、今まで目立たなかった存在が頂点に君臨している。
ヒューバート・オズウェル。
あのオズウェル家の養子だ。聞いた話によれば、3年前ウィンドルからやってきたとか。
あたしが知っている限りでは、口数が少なくて皆ともあまり馴染めていない感じで、
クラスに1人はいるだろう浮いている子というイメージだったのだけど。
そんなヤツに抜かれてしまうなんて、このままではあたしの夢は潰えてしまう。
どうにかしなくては。
どうしていきなりこんなことになってしまったのだろう。
養子とはいえ、あのオズウェル家の者だからなぁ。
ヒューバートは、何かいい勉強法でもしているのかな?









「ヒューバート。」

「…何ですか?」

休み時間。
あたしはヒューバートの隣の席に腰掛け、そして初めて声をかけてみた。
ヒューバートの反応は冷ややかで、無意識に見えない壁を作っているかのよう。
いつも他人に対してそんな態度をとっているのだろうか。
だから友達もいないのではないだろうか。
…なんて、失礼な事を考えながらあたしはにっこりと微笑む。
大丈夫、あたしが今からヒューバートの友達になってしまえばいいのだ。

「今回のテスト、すごかったね。あたし・ウォーフ。よかったら一緒に勉強しない?」

あたしと対等に成績を争える人なんていなかった。
だからあたしは教官たちを除いて誰かと一緒に勉強したことなんてない。
どうせみんなあたしに答えを教えてもらいたいだけで、一緒に問題を解こうという気はないのだ。
友達がいないわけじゃない。勉強以外ではそれなりに人付き合いも大切にしているつもりだ。
だけど、一緒に問題を解いてくれる友達はいなかったから。
ヒューバートならそういう友達になってくれるんじゃないかって思って。
一緒に勉強できる友達ができることに少しわくわくしていた。

だけど、ヒューバートは鼻で笑った。

「一緒に?ぼくは馴れ合いなんてしたくありません。一緒に勉強がしたければどうぞ他の人として下さい。」

そう言ってあたしから視線を外し、今の会話なんてなかったことのようにして教科書を開く。
彼のその言葉と態度に、あたしの中で何かがプツンと切れた。
あたしは大きな音を立てて席を立つ。

「あったまきた!何その言い方!いつも一人で寂しいとか思わないの!?
君がいつもそんな態度だからみんなだって君と友達になりたくても近寄れないんじゃない!!」

大声を出して、ヒューバートに掴みかかる。

!どうしたの!?」

、そんな奴に関わらない方がいいよ!」

教室にいたクラスメイトたちが慌ててあたしを止めようとする。

「もっと、心開いてよ!」

もっと、楽しそうにしようよ、どうしてそんなに寂しそうにしてるの?

ヒューバートの勉強方法とか、もうどうでもよくて。
今は彼の人付き合いの仕方をどうしてもなんとかしたかった。








あの後あたしは教官たちに止められて、ヒューバートとお説教を食らった。
今日はもう帰れと言われ、あたしとヒューバートは少し離れて長い廊下を歩いていた。
窓の外を見れば、太陽は真上にある。午後の授業は受けられない。
それはあたしが暴れたせいだ。
元凶はヒューバートだけど、あたしがもっと冷静になればよかったのだ。
とりあえず、今はヒューバートに謝らなきゃ。

「ヒューバート、さっきはゴメン。」

すたすたと足早にあたしの前を歩く彼に、あたしの声は届いたのだろうか。
歩きながら続く沈黙。
ああ、やっぱり無視されちゃった。怒ってるんだきっと。
気分が落ち込むのと比例してあたしの顔も下を向く。
とぼとぼと歩いていると、何かにぶつかった。

「いたっ。」

何にぶつかったんだろうと顔を上げると、至近距離でヒューバートの顔。
急に立ち止まって振り返った彼にぶつかってしまったらしい。

「午後の授業なんですけど…このまま帰るのもなんですから、その…ぼくと一緒に勉強しませんか?」

窓から吹きぬける生ぬるい風があたしとヒューバートの髪を靡かせた。



01:最初の一歩を踏み出す




執筆:11年1月8日