「……。」

「……。」

無言のまま、あたしとヒューバートは図書室で勉強をしていた。
一緒に勉強って言ったのに、何故今こうして個々で勉強しているんだろう。
わからない問題なんて公式に当てはめちゃえば解けちゃうし…。
なんとなくぎこちない空気だし、これじゃあ一人で勉強していた方がよかったかもしれないと少し後悔。

でも、ヒューバートから声を掛けてくれたのはすごく嬉しかった。
このまま上手く友達になれたらいいんだけど…この雰囲気では無理だろうな。

勉強もそろそろ飽きてきたし、何か面白い本でもないかなぁ。

なるべく音を立てないように立ち上がり、本を探し始めた。
ヒューバートはあたしに目をくれる事も無く黙々と教科書とにらめっこしていた。
こうしてみると、ヒューバートも努力してあたしの成績を抜いたのがよくわかる。
あたしと何も変わらないんだ。彼だって、頑張って勉強して結果を出したんだ。

「おっ!」

ふと、目にとまった本。
砂漠戦隊サボテンジャーの写真集…。
あたし、これ大好きなんだよね!
でも、周りに語れる友達はいないし…特撮ってステキなのになぁ。

…今ここにはヒューバートしかいないし、読んじゃおうっ。

サボテンジャーの写真集を手にして、席に戻る。
教科書の上において、ニヤニヤしながら表紙を捲った。

「……何をしているんですか。」

あたしが勉強していない事に気づいたらしいヒューバートがジロリとあたしを見ていた。
その怪訝そうな視線が痛い。

「え、えっとー…読書?」

「どう見てもそれは写真集のようですが…。」

「うん、ちょっとした息抜きだよ。あは。」

まさかこんなに詮索してくるとは思わなかった。
もっとあたしに無関心なのかと思ってたのに。

「しかも、これはどう見ても子供向けの偶像ヒーローじゃないですか。まったく、貴女という人は…。」

ヒューバートは呆れながらあたしから写真集を引っ手繰り、パラパラとページを捲っていく。
しかし、その手は徐々にゆっくりになっていった。

「か、カッコイイよね!」

苦し紛れに発言するも、ヒューバートは無言のまま。
ああ、もう…この空気に耐えられない。
幼稚な趣味してるんだなとか、オタクだなとか思われただろうな。
いやー、今日はいい天気だなー…。
あたしが明後日の方向を向いて現実逃避していると、ヒューバートはぐいっとあたしの袖を引っ張った。
その視線は写真集に釘付けのまま。

「…これは、どういうお話なんですか?」

もしかして、興味を持ってもらえたのだろうか。

「あ、あのね!ただのサボテンだったサボテンジャーがある日謎の旅人に栄養剤を注入されて
人間になっちゃうの!そして、突如現れた世界制服を企むサソリマン一味と戦ってねー……。」

熱弁していたあたしは、はっと我に返る。
あらすじを聞かれたとはいえ、ヒューバートにこんなハイテンションで話すなんて、おかしいでしょ。
慌てて話を中断させて、苦笑する。

「ご、ごめんね!なんか、こんな話に熱を込められても困るよねー…えへへ。」

気持ち悪いって思われたかな。
恐る恐るヒューバートに視線を向けてみると、彼の目はキラキラと輝いていた。

「楽しそうですね…子供向けだとバカにしていましたが、見てみます!」

まさかの事態に、あたしは目を丸くする。
いや、だって…今までこの手の話をして興味を持ってくれた友達はいなかったんだよ?
みんな呆れかえったり苦笑いしたりで…なのに、ヒューバートは…!

「うんっ、絶対見てみて!」

あたしは無意識にヒューバートの手を取っていた。

「帰ったら早速見てみます!感想は明日言いますから!」

ヒューバートも、そのままあたしの手を握ってくれた。
わ、あ、あ…なんだか、あたしたちいい友達になれそう!

お互い見つめ合って、手を握っている。
そんな傍から見たら怪しい状態だということを同時に気づき、ぱっと手を離した。

「と、とりあえず今は勉強に戻ろうか。」

「そ、そうですね…。」

写真集を端に避けて教科書を手にする。
また、振り出しに戻ってしまうのではないか。
折角いい雰囲気になれたんだから、二人で何かできないかな。

「…そうだ、問題を出し合おうよ?そしたら二人で勉強できるよね。」

「それ、ぼくも今思ってました。」



02:ふたりの共通点




執筆:11年1月8日