私が従姉妹のお姉ちゃんの家に転がり込んで1週間が経とうとしていた。
もちろん、このことはあの日家族に伝えてある。
家族は私が真剣に何かを悩んでいるのだと知ると、小さな家出を許してくれた。
従姉妹のお姉ちゃんも私にとても優しく接してくれる。
最初ここに来たときは驚いていたけど事情を話したら一緒に、一生懸命悩んでくれた。
…あの日以来、多紀から連絡はこない。
私は多紀にとって本当にただの道具だったみたいで、逃げ出した私はもう用済みということなのかもしれない。
少しだけ、期待していた私は相当バカだと思う。
多紀のことを必死に嫌いになろうとする私。
だけどそれはなかなかできなくて。
自分にどう言い聞かせても私はまだ多紀が好き。
なんで、こんなに好きなんだろう
こんな気持ち、早く捨てて多紀に対抗できるくらい強くならなくちゃ。
「、ごめんね。今、カレー作ってるんだけどたまねぎ切らしちゃってて。
他の料理も作ってるから私、手が離せないの。お使い行って来てくれるかな?」
従姉妹のお姉ちゃんが舌を出しながらえへ、と笑った。
私は従姉妹のお姉ちゃんからお金受け取りながら頷く。
「うん。じゃあ行ってくるね。たまねぎだけだよね?」
「うん、お願いね」
私は従姉妹のお姉ちゃんの声を背中で受け止め、家を出た。
向かうところはここから近くのスーパー。
今は夕方だからタイムサービスもやっているころだ。
たまねぎが値引きされているのかはわからないけど。
私がスーパーに入ろうとしたときだった。
「!」
後ろから声をかけられた。
反射的に振り向けば、そこには…
「…、多紀!?」
今、私の目の前に多紀がいる。
どうして、こんなところにいるのよ。
こんな状態で、心の準備もなしにいきなり会いたくなかった。
「…っ!」
私は一目散に逃げ出した。
「待ってよ!!」
多紀は流石にスポーツをやっていることだけあって、私はすぐに追いつかれてしまった。
そして多紀が私の手首を掴む。
お互い、見つめ合いながら息を整える。
初めにに口を開いたのは多紀だった。
「何で…逃げるの…?」
「…そんなの、私の勝手、じゃん」
まだ息が整っていない状態で、途中切れながら言葉が発せられる。
「何で僕から逃げ出したんだよ!お前、何考えてるかわからない」
私は無神経にそう言った多紀に怒りを覚えて強めの口調で言った。
「だって、それは多紀が…!!」
「僕が…?」
「多紀が、私を道具みたいに言うから…私はね、多紀のことが好きなんだよ!!
白とか黒とか、そんなの関係なく好きなのに…多紀は私のことなんて!!」
私は俯いて叫んだ。
すると、突然多紀が私を抱きしめた。
「ちょっと、黙ってくれない?」
「は!?」
私の唇に、多紀の唇が重なった。
多紀はゆっくりと私の唇から自分の唇を放すとはぁ、と一息つく。
「が僕の目の前から消えて気づいたんだ。僕は、本当にのことが好きみたいなんだ。
容姿だけじゃない。のこと、全部好き。道具なんかじゃないよ」
「うそ…」
信じられなかった。
「本当。今までの自分が恥ずかしい。できればやり直したい。だから…」
きっと、また嘘でもついて私が困るところを見て笑う気だ。
だけど…
「僕のところに戻ってきてよ…!」
多紀はそう言って涙を流した。
その言葉、本当に信じていいの?
ううん、信じる。
私は多紀を信じるよ。私、黒の多紀も白の多紀も好き。
嫌なところも全部含めて多紀が好き。
「もう、逃げるのはおしまいにする…ごめんね、多紀」
本当はこの一週間多紀に会えなくて辛かった。
すごく寂しかった。
離れれば離れるほど、日に日に多紀を想う気持ちが強まってどうしようもなくて。
だけど多紀は私を道具としてしか見てない、そう思ってて会えなかった。
会いたくなかった。会えばきっとつらいから。
「おかえり、」
「…うん、ただいま、多紀」
私は泣きながら多紀と手を繋いで歩き始めた。
執筆:03年12月24日