あたしはベッドの上で項垂れていた。
激しい倦怠感に襲われ、特に何をするわけでもなく休日を過ごしている。
久しぶりに実家であるパラディ家に戻ってきたものの、何をしたらいいかわからない。
今日まで休日には何をしていたのだっけかと、思い返すことすら億劫だった。

ヒューバート達がユ・リベルテを発ってからだいぶ日にちが経つ。
彼らは今頃フェンデルにいるはず…。
どうか、無事でいて欲しい。だらしない格好のままあたしは願った。

、そんな格好ではしたない!久しぶりに帰って来たと思ったらまともに顔も見せずに…」

お母様が部屋に入ってきて、あたしを見てため息をついた。
あたしはのそのそと起き上がり、頬を膨らませた。

「今まで忙しかったのに、急に仕事が無くなってどうしたらいいかわからないの」

すると、お母様は一瞬考え込む仕草をし、にこっと笑った。

「それならお友達と遊んだらどうかしら」

「友達なんて…」

そういえば、いないんですけど。
軍に入ってからというもの、学生時代に友達だった皆とはいつのまにか疎遠になっていた。
今、友達と呼べるのはヒューバートだけなんじゃないかと思ったら、悲しくなってきた。

「とりあえず、外に出て散歩でもしてくるといいわ。買い物とか楽しいじゃない?」

「それじゃ、少し散歩に行ってきまーす」

お母様の言うとおり、外に出れば少しは気が紛れるかもしれない。

ヒューバートと共に行けなかった悔しさが。









ぼんやりと商業区を歩く。
すれ違う貴族の令嬢たちはとても華やかで、
あたしも軍に入らなかったらこんな風になっていたのかと思うとうんざりした。

「あ、すみません!そこの人!」

突然後ろから話しかけられた。
私は反射的に振り返る。

「やっぱりそうだ!!久しぶりね…!」

ラフな格好をした、あたしと歳の近そうな女の子が嬉しそうにあたしの手を取る。
えっと、あたしの名前を知っているってことは、人違いじゃないよね。

「す、すいません。どちら様でしょうか」

「あ、酷ーい!友達の名前も顔も忘れたの?私、マーレンよ!」

「え、マーレン!?」

マーレンは呆れたようにため息をついたけれど、すぐに笑顔に戻った。
まさかこんなところにマーレンがいるなんて夢にも思っていなかった。
不意打ちすぎだよ、こんなの…!

「やだー、久しぶりー!いつ帰って来たの!?」

嬉しさがこみ上げてきて、あたしはマーレンに抱きついた。
マーレンもあたしを抱きしめ返してくれる。

「ほんの少し前にね。ユ・リベルテでお店を出す事になったの!」

「そっかー…夢を叶えたんだね、おめでとう!」

「ありがとう…ここまで頑張れたのは、とヒューバートのおかげよ」

あたしとマーレンは目を合わせて笑い合った。
それから、マーレンのお店の前でくつろがせてもらいながらお互いの近況を話し合う。
そして、必然的にヒューバートの話題になる。
マーレンは昔から、今でもヒューバートのことが好きなのだと言う。

「セイブル・イゾレに行く前、に黙ってヒューバートに告白したのは本当に申し訳ないと思ったわ。
だけど、あの時言っておかないと後悔するって思って…まあ、ヒューバートがを好きなのは知ってたんだけどね」

「マーレン…」

あははと自嘲するマーレンは苦しそうだった。
ヒューバートはあれでも一応モテるけど、マーレンは本当にヒューバートのことが好きなんだなって思う。

「それと、数日前にヒューバートとも会えたんだけどやっぱりカッコよくなってたわ!
が羨ましい…あんなステキな人が彼氏だなんてさ。」

マーレンの言葉に、あたしは一瞬耳を疑った。
え、ヒューバートが、あたしの彼氏…?

「ち、違うよ!あたし、ヒューバートと付き合ってないから!!」

あたしが慌てて否定すると、マーレンは目を丸くした。
こんなやりとりを昔もしたな、なんて思ったら懐かしくなった。

「ウソ!何で!?だって、あなた達、昔から相思相愛だったんじゃないの!?」

「そ、そんなの、わからないよ…。」

は、ヒューバートと付き合いたいって思わないの?」

「それは…まだ夢も叶ってないし考えられない」

マーレンは大きくため息をついた。
どうしてわからないかなぁとでも言いたげな表情だった。

「バカ。うかうかしてたら他の女に取られちゃうかもしれないわよ。
仮に私とヒューバートが付き合っちゃったらどう?は祝福してくれるの?」

「そ、それは…。」

考えただけで胸がもやもやした。
ヒューバートが他の女の子とイチャイチャしてたら…そう考えたらなんとも言えない気持ちがこみ上げてくる。
それが例え、友達であるマーレンでもだ。

「もちろん、あなた達の夢が叶ったらの話よ。で、どうなの?」

「…嫌、かも」

あたしが素直にそう答えると、マーレンは苦笑いを浮かべた。

「ほら、答えはもう出てるじゃない」

「…そう、だね。そっか、あたしは…ヒューバートのことが好きだったんだ」

きっと、ずっとずっと前から。
夢を叶えることしか頭になかったと思う。
今までの心地いい関係が崩れてしまうのが怖くて、逃げていただけなのかもしれない。

あたしは、なんて卑怯なんだろう。

「夢が叶ったら、ヒューバートに好きって伝えなきゃ…」



16:ずっと隠れてた恋心




(ありがとう、マーレン。あたしも頑張って夢を叶えてヒューバートに告白する!)
(私の分も幸せになってね、





執筆:11年12月20日