あたしは、ある日突然現れたそいつらから街を守る任務についていた。
大統領の話によると、リチャード陛下はラムダといういわば悪者的存在に操られていたのだという。
ラムダは自らの体組織を為した魔物…暴星魔物を世界中に放った。
そう、つまりあたしはそいつらから街を守っている。
というのも、先日ヒューバートたちが戻ってきて、大統領に経過報告をしたらしい。
丁度あたしは別の任務が入っていてヒューバートたちと会うことは出来なかったけれど、
無事にフェンデルから戻ってこれたようだ。
ほっと一安心したのも束の間、今度はそのリチャード陛下を操っているラムダを止めに行くとのことだった。
正直…心配で仕方がない。
できることならあたしも連れて行ってほしかった。
だけどあたしがヒューバートたちについていく事は叶わない。
暴星魔物の強さに、救護部隊でも負傷者多数という被害が出ていて、
動けるあたしはどの部隊からも引っ張りだこなのである。
おかげであたしはかなりの戦闘を重ねることができた。
前衛の補助だけでなく、あたしが前衛にまわる機会も多かったから結構鍛えられたと思う。
暴星魔物はとにかく厄介で、普通の魔物よりも何倍も手強い。
ラムダとか暴星魔物とか、最初は本当に何が何だかわからなかった。
それでも、現実を受け止めなければならない。
じゃなきゃ、誰が街を、この国を守ると言うのだ。
「…はぁ、もう!キリがないなぁ!」
倒しても倒しても沸いて出てくる暴星魔物に銃弾をぶち込む。
タフな彼らはそう簡単に倒れてはくれなかった。
「ウォーフ中尉!」
横で戦っていた兵士が声を上げた瞬間、背後から忍び寄る影。
振り向けば、いつの間に後ろに回りこまれたのか、暴星魔物があたしに向かって鋭い爪を振り下ろす。
「…ッ!?」
しまった、と思うのと同時にぎゅっと目を瞑った。
その直後、あたしの身体は宙を浮いた。
驚いて目を開けてみれば、誰かに抱きかかえられていて。
「雷牙招来!」
その人はあたしを抱えたまま暴星魔物をあっさりと倒してしまった。
顔を上げるのが、その人の顔を見るのが怖かった。
だって、あたしが苦戦してた魔物をいとも簡単に倒してしまったのだから。
「大丈夫ですか!?!」
その人、ヒューバートが心配そうな顔であたしの顔を覗き込んでくる。
「うそ…」
認めたくなかった。いや、認めてたまるか。
あたしだってそれなりに強くなったと自負していた。
少しでもヒューバートに追いつけたかなって、思ってた。
それなのに、ヒューバートは以前よりもずっと強くなっていただなんて…!
それこそ、あたしとは雲泥の差の実力…。
そんなことって、あるの…?
「だ、大丈夫だけど…何、今の…?」
何でヒューバートがこんなところにいるのかということよりも、そっちの方がショックすぎた。
ヒューバートは複雑そうな表情を浮かべてあたしをゆっくりと下ろしてくれる。
「…それについては、大統領府でお話しますよ。今は、こいつらを片付けましょう」
結局ヒューバートに残りの魔物を駆逐してもらい、なんとか落ち着く。
何も出来なかった自分に苛立ちながら、ヒューバートを見つめる。
久しぶりに見たヒューバートは以前より凛々しくて頼りになりそうな面持ちになっているではないか。
あたしは、ヒューバートのことが好き…。
この気持ちに気づいてから、何度も会いたいって思ってきたんだよ?
まさかこんな形で会えるなんて思ってなかったから、胸がドキドキして止まらない。
あー…かっこいいな。
なんて意識してしまったら自然と顔がにやけてしまった。
あわわわわわわわわ、こんな顔誰にも見せられないよ!
あたしは慌てて唇を噛み締めて平静を装う。
「何ニヤけているんですか」
それをヒューバートはしっかりと見ていたようで、あたしは目を見開く。
ちょ、ちょっと!何見てるのよ!最低だあああああッ!!
「うるさいなー!別にヒューバートがかっこよくなったなぁとか何でそんなに強いの悔しいとか思ってないし!」
慌てて否定しようとして、あたしははっとした。
思っていたことをそのまま口にしていたことに気づいて激しく自己嫌悪。
そ、相当恥ずかしいんですけど…!
「あ、ありがとうございます…」
恐る恐るヒューバートを見れば、顔を真っ赤にして照れていた。
うっ、なんて恥ずかしい雰囲気なの…!
あたしとヒューバートは部下達を置いていってしまっている事に気づかずに足早に大統領府へと向かった。
ヒューバート達の旅は世界中を巻き込んで終わった。
ラムダを止める事に成功し、リチャード陛下も無事に戻ってきたらしい。
だけど、暴星魔物はまだ世界中で暴れている。
「今後は暴星魔物の対処が課題となりますね」
あたしの言葉に、大統領とヒューバートが頷いた。、
ウィンドル、ストラタ、フェンデルの三国は手を取り合い助け合うと言う事で
良好な関係を結ぶことができたが、事態は深刻だ。
「ああ、既に対策本部をたててあるのだが…知っての通り敵は普通の魔物よりも格段に手強い。
しかし、ヒューバートは一撃で暴星魔物を倒したと聞いたが一体どうやったのだ?」
大統領の問いに、あたしも頷く。
ヒューバートのあの強さは一体何なのか、さっきからずっと気になっているんだ。
「それについてですが…奴らは暴星バリアと呼ばれる障壁を張る能力を持ち、
通常の攻撃では簡単に傷をつけることが出来ないのです。
そこで、僕たちはラムダに対抗できるソフィを構成する光の粒子を使ってダメージを与えています」
よくわからないけれど、ヒューバートはあたし達にはない、特別な力を持っているという事でいいのだろうか。
それにソフィさんが関係している、ということでいいのかな。
大統領はどこまで知っているのだろう、納得したような表情をしていた。
「なるほど…それでヒューバートは一撃であの魔物を倒せたというわけか」
ふむ、と考え込む大統領を見て、あたしとヒューバートは顔を見合わせた。
しばらくして、大統領が「よし」と呟く。
「ヒューバート、君を暴星魔物第三対策本部責任者に任命する」
「はい」
ヒューバートは誇らしげに返事をした。
やっぱりすごいな、ヒューバート。あたしもいつか、彼に追いつきたい。
そして…
「、君も救護部隊でありながら魔物との応戦もよくやってくれていると聞く。
君も暴星魔物第三対策本部に任命する。ヒューバートを支えなさい」
「え…?」
夢を叶えて…。
ぼんやりと考え事をしていたら、あまりにも唐突すぎる大統領の言葉を聞き逃しそうになった。
ちょっと、待ってくださいよお父様。今、なんて…。
「今は第二対策本部に所属していたな…これよりヒューバートの下について、彼を補佐してほしい」
大統領が優しい笑みを浮かべながらあたしの肩をぽんと叩いた。
目を瞬かせながら、大統領と、そしてヒューバートを見る。
ヒューバートも驚愕して口をぽかんと開けていた。
「…は、はい」
…えーっと。
つまり、これって…。
17:チャンス、再び
執筆:12年4月28日