「アシッドレイン!」
私は術を用いて魔物の守備力を下げ、そこをヒューバートが叩く作戦。
ヒューバートとアイコンタクトを交わし、お互いこくりと頷けば、ヒューバートは前へ出た。
不思議と、あたしたち二人ならどんな敵だって倒せるという自信が湧いてくる。
「リヴグラヴィティ!」
ヒューバートの攻撃が命中し、暴星魔物が体制を崩す。
しかし魔物の攻撃がヒューバートの腕を掠め、ヒューバートはグッと奥歯を噛み締めた。
治療しなくては…!だけどもう一体の魔物があたしの邪魔をして
なかなかヒューバートの回復に専念する事ができない。
ああもう!邪魔な奴らだな、詠唱に集中したいのに…!
「双月!」
そこに、リチャード陛下があたしの邪魔をしていた魔物に一撃を加えた。
すると、魔物の標的があたしからリチャード陛下に変わる。
「リチャード陛下…!」
「早くヒューバートを!」
リチャード陛下は魔物と応戦しながら叫んだ。
ヒューバートは傷を負いながら戦っているせいか、動きもいつもより鈍い。
もう一撃食らえば危ない状態だ。なんとしてもその前に回復させないと!
「キュア!」
私は詠唱に集中し、間一髪のところでヒューバートの治療に成功した。
ヒューバートの動きも良くなり、魔物の攻撃をさらりと軽快に避ける。
「、ありがとうございます!」
ヒューバートがあたしに笑いかけ、すかさず魔物に攻撃を与えるとようやく魔物は倒れた。
あたしとヒューバートは残りの魔物を片付けようと武器を握り直す。
「リチャード陛下、今そちらに…!」
しかし、もう一体の魔物はリチャード陛下の一撃であっさりと倒れた。
リチャード陛下、すごくはりきってるな…それに、強い。
あたしとヒューバートが呆気に取られている中、リチャード陛下があたしに駆け寄った。
「ふう…怪我はなかったかい、」
「あ…はい、あたしは後衛でしたからお二人ほどの怪我はないです」
「そうか、それならよかった。を守れて嬉しいよ」
そう言ってにこりと微笑むリチャード陛下。
紳士だなぁと思いつつ、あたしは苦笑した。
ヒューバートと一緒に戦うことができて、夢が叶った瞬間。
だけど、思い描いていたものと少し違ってあたしは戸惑っていた。
ヒューバートと二人きりを想像していたし、それにもっと二人だけでももっと簡単に敵を倒せると思ってたのに。
結局はリチャード陛下に助けてもらってしまったしなぁ。なんていうか、現実なんてこんなもんなんだな…。
とにかく、夢が叶った事には変わりはないのだから。
「ヒューバートもお疲れ様。その…ようやく夢が叶ったね」
「そう、ですね…」
煮え切らない態度をとるヒューバート。
彼も、あたしと同じことを思っているのかな…。
それとも、あたしがヒューバートが思っていたよりも弱かったからガッカリさせてしまったのか。
もし、失望させてしまったのだとしたら、これから先あたしはどうしたら…もう笑うしかない。
「ごめん、あたしあんまり役に立てなかったよね…あはは」
「いいえ!には助けられましたよ!貴女がいなかったら、ぼくは…」
ヒューバートはブンブンと首を横に振り、あたしの手を取り、ぎゅっと握った。
彼の温かい体温がじわりと伝わる。
「ヒューバート…」
嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
ヒューバートも、くすっと微笑み返してくれる。
ああ、やっぱり大好き。
「そうさ、が援護してくれるから僕らは安心して戦えるのさ。役に立たなかったなんてことは絶対ないよ」
リチャード陛下がそっと私の肩に手を置いて、微笑みかけてくれる。
うわぁ、二人とも優しすぎるよ…あなたたちが神か!
「ありがとうございます、リチャード陛下」
「………」
「どうかしたのかい?ヒューバート」
「いえ、何でもありません」
ヒューバートが難しい顔をしながらリチャード陛下のことを見つめていた。
…な、何だかこの二人に挟まれているとすごく居心地が悪い気がする。
そういえばあたし、リチャード陛下にウィンドルに来て欲しいって思われてたんだっけ。
だからヒューバートは嫉妬してくれてる…のだろうか。期待、してもいいのかな。
それにしても、リチャード陛下はどうしてこんなあたしを連れて行きたいって思ってくれるのかな。
…まぁ、大統領の娘が身分を隠してストラタ兵をやっているのは彼にとって面白いのかもしれないね。
「そういえばヒューバート、パスカルさんとは連絡を取っているのかい?」
「…い、いきなり何ですか!!」
突然のリチャード陛下の問いかけに、ヒューバートがたじろいだ。
しかも、顔がどんどん赤く染まっていく。
「先日、フェンデルを訪問した時にマリクとパスカルさんに会ってね。パスカルさんが君に会いたがっていたぞ」
「な…!」
パスカルさん。
その名前に覚えがあり、あたしは記憶を掘り返した。
確か、アスベルさんたちがストラタに来て大蒼海石を直しに行った時に一緒にいた…。
「パスカルさんって大蒼海石を直してくれた、白と赤の綺麗な髪の女の人…?」
「そうだよ。ヒューバートとパスカルさんは仲がいいらしくてね」
「何を言っているんですかリチャード陛下!
パスカルさんはただの仲間であって、特別な感情などありませんよ!」
リチャード陛下は、仲がいいとしか言ってないのにヒューバートは特別な感情とか言い出ちゃって。
しかも、どうしてそんなに慌てるんだろう。
それって、つまり…そういうことになるんだよね?
「…特別な感情、あるんだ?」
「…!?ち、違うんです!」
顔を真っ赤にしながら必死に否定するヒューバート。
リチャード陛下は隣で可笑しそうに笑っていた。
わかりやすいなぁ…うん、そっか。ヒューバートはパスカルさんのことが好きなんだね。
いつまでもあたしのことを好きでいてくれるはずないよね。
「やだな、どうしてそんなに慌ててるの?
ヒューバートが誰を好きであろうと、あたしには関係ないことだからいいんじゃ…」
違う、こんなことを言いたかったわけじゃないのに…!
あたしははっとして慌てて口を紡いだけどもう遅かった。
ヒューバートは驚愕の目であたしを見ている。
だけど、ヒューバートの慌てて否定してるのを見ていたら無性に腹が立って…突き放したくなってしまう。
折角夢が叶って、あとはヒューバートに好きですって伝えるだけだったのに、
どうやらあたしは自分の気持ちに気づくのが遅すぎたみたい。
あたしはそっとヒューバートから視線を逸らした。
19:終わらない片想い
(パスカルさんも、ヒューバートのことが好きなのかな)
執筆:12年5月19日