あれから2年が経って、あたしは15歳になった。
結局軍学校の首席として卒業式の答辞を読んだのはヒューバートだった。
あたしは彼に負けてしまったけれど、精一杯やってきた結果だったから悔いは無い。

今は軍に入り、任務を着々とこなしている。
ただ、あたしは救護部隊に配属され、ほとんど戦闘訓練は行っていない。
あたしは武術よりも医術に長けている、また軍学校で医術の成績が良かった貴重な人材という理由だった。
救護部隊になれる者は少なく、光栄に思えと上官に言われた。
でも、あたしが目指していたのはここではない。
戦場に出たり、密偵になったり…そういった任務をこなすことを夢見ていたのに。

「ファーストエイド。」

傷ついた兵士たちの傷を癒す。

「ありがとうございます。」

先輩兵士は傷が塞がったことを確認し、魔物に向かっていった。
最近、魔物の数が増えた上に凶暴になっている。
街も何度か襲われかけたけれど、こうして軍が対応している。
あたしはその援護を任されていた。

、危ない!」

先輩兵士の声を聞き、あたしは武器を構えた。
銃の引き金を引き、襲ってきた魔物の急所に当てる。
魔物は断末魔の叫びを上げて倒れたが、まだ油断はできない。
魔物はまだ数匹残っているのだから。

「助かりました。」

先輩兵士にお礼を言って、また援護に戻る。
救護部隊の者が前衛に出る事は許されていなかった。
前衛で戦っている兵士たちを援護しながら、睨みつける。

とても、もどかしかった。










任務の後、あたしは軍の宿舎に戻ってぼんやりとしていた。
あたしはこのままでいいのだろうか。
着々と前線で戦っている同期たちは実戦を重ねている。
軍学校であんなに頑張ったのに、あたしはみんなにどんどん追い抜かれていく。
そして、みんなに…ヒューバートに置いていかれてしまうのではないだろうか。

、いますか?」

部屋の外から聞こえてきた声に反応し、扉に目を向けた。
この声は、ヒューバートだ。
彼も今日は任務だったはず。終わったのだろうか。

「ヒューバート?入っていいよ。」

あたしはパパっと身なりを整え、ヒューバートを出迎えた。
扉が開き、傷だらけのヒューバートの姿を見て眉間に皺を寄る。
あのヒューバートがこんなになってしまうなんて…。

「すみません、汚れたままの姿で。でも、早くに会わなくてはって思いまして。」

「ううん、それは気にしてないから大丈夫。それよりも傷の手当しなきゃ。」

あたしは急いでヒューバートに駆け寄って、詠唱した。

「ヒール!」

ヒューバートの傷が塞がる。
すると、ヒューバートは目を瞬かせた。

「ありがとうございます。それにしても流石、ですね。高等な術も修得しているのですか…。」

高等だろうがなんだろうが、必要だから無理をしてでも覚える。
そうでなくては人の命を救う事はできないのだから。
ましてや、救護部隊となれば…。

「…医術だけは、ね。それで、どうして会いに来てくれたの?何か急な用事?」

任務の帰りに、怪我の処置もせずに来るなんてきっと大切な用事だったのだろう。
ヒューバートはあたしの目を見て、眉を下げた。

「任務の帰りに貴女の上官から話を聞いたので…心配になって来たんです。」

何の話だろう?それに、心配って?
首を傾げてヒューバートに問いかける。

「上官から…?何の話?」

はどうして前線にこだわるのですか?」

…やっぱり、上官にはバレてたんだ。
任務のたびに前線で戦う兵士たちを睨んでいれば当たり前か。

あたしは無言のままティーセットに手を伸ばした。
ポットからティーカップにお湯を注ぐ。

「あたし、小さい頃に漫画やアニメの主人公に憧れていたの。
それであたしもそうなりたいって思ったのが、軍に入りたかった理由。」

「そんな理由だったんですか…。」

少し呆れ気味のヒューバート。
それでも、口角があがっているからきっと『らしい』とでも思ってくれたのだろう。
紅茶をヒューバートに出して、あたしは苦笑する。

「あはは。軍に入りたかった理由は単純なもので、昔は本当にそれだけだったけれど…。
今まで軍学校で成績優秀で通ってたし、前線を任されて当然だと思ってたから…悔しいんだ。」

俯いて、悲しい顔をヒューバートに見せないようにティーカップで顔を隠して紅茶を啜る。
伊達メガネは湯気で曇り、紅茶はとても熱かった。

「それでも、ぼくはが医療部隊で安心しました。」

ヒューバートの言葉に、あたしは眉間に皺を寄せる。

「どうして、ヒューバートまで…!」

そんなことを言うの。
あたしはこんな救護の任務なんてまっぴらだ。
軍学校で学んだ武術を任務でも活かしていきたいのに。

が傷つくのは見たくありません。」

「そんなの…。」

あたしだって、ヒューバートが傷つくのは見たくない。
気持ちはわかるけれど、あたしだって前線で戦いたい。
ヒューバートならあたしの気持ちがわかってくれると思ったのに。

「それに、ぼくはいつかと一緒の任務に就きたいと思っています。
その時、信頼しているがぼくの背中を守ってくれれば安心です。」

ヒューバートが紅茶を啜る。
そして、あたしに微笑みかけてくれた。

「ぼくはを守ります。はぼくが安心して戦えるように援護してくれませんか?」

「…ヒューバート。」

ヒューバートが、そんなことを考えてくれていたなんて。
まだ二人で任務するなんて決まったわけじゃないのに。
そうだね、もしあたしも前線で戦っていたら回復が大変になってしまうじゃないか。

「ありがとう、あたしこの部隊で頑張ってみる。ヒューバートも頑張って。」

新しい目標ができた。今までとは違う、曖昧な目標じゃなくてきちんとした目標…。
いつかヒューバートと同じ任務に就いて、あたしは彼の背中を守るんだ。
その時の為に、あたしは強くなりたい。



05:新たな目標




(なんだか、愛の告白みたいだったよ。ヒューバートカッコよかった。)
(なっ…!そんなつもりは全くありませんからね!!)
(?…何で怒ってるの?)




執筆:11年1月10日