あたしは着々と任務をこなしていった。
新たな目標ができた今、それを実現させるために日々頑張っている。

「いつも治療ありがとう。」

「どういたしまして。」

今日も一人癒しちまったぜ、と戦隊ヒーローの真似をしながら心の中で呟く。
以前は軍の関係者のみの治療をしていたけれど、今では一般の民衆の治療も任されていた。
毎日術を使うのは疲れるけれど、それがあたしの仕事だから仕方が無い。
今もこうして兵士の女の子を治療していたわけだけど。
そういえば、この子はここ最近よく傷を作ってくるなぁ。
魔物と戦う時、ちゃんと防御してるのだろうか。それとも、余程多くの魔物と戦っているのだろうか。
見た所あたしとあまり歳も変わらなそうだし…そんなに実力のある人なのかな。

「あなたいつも怪我してくるけど、頑張りすぎはよくないよ?」

「うん、ありがとね。」

あたしは驚いて目を丸くした。
この子に名乗った覚えは無かったからだ。

「あれ、何であたしの名前…?」

そう訊ねると、彼女はクスっと笑う。

「私はマーレンよ。はうちの部隊で有名だからね。」

有名、と聞いてあたしは眉間に皺を寄せた。
あたし、自分の知らないうちに何かをやらかしてしまったのだろうか。

「有名…?どうして?」

不安になりながら恐る恐るマーレンに理由を聞く。
するとマーレンはあたしから目を逸らして苦笑した。

「あのヒューバートの彼女なんでしょ?それは有名にもなるわ。」

「…か、彼女?」

まさか、そんな。どうしてそうなった。
ヒューバートに告白なんかされた事なんてない。
あたしだってヒューバートに告白なんてしてない。
そもそも、そんな感情を抱いてもいないのに。
あたしとヒューバートは周りから見るとそんな風に見えるの?
確かにあたしとヒューバートは親友同士だから普通の友達より仲はいいけれど、
恋人同士のようにイチャつくとか、そういったことはしていないはずだ。
普通に友達として接しているのに…一体、何故。

「あんな奴のどこがいいの?」

悶々と恋人疑惑を晴らす方法を考えていると、不意にマーレンが問いかけてきた。
あんな奴って…そう言われてしまうほど、ヒューバートはマーレンに嫌われているというのか。
なんだか、恋人と間違われていた事よりも、そっちの方がショックだ。

「ヒューバートはすごくいい子だよ。」

確かに、嫌われる要素で思い当たる節はいくらでもあるけれど。
それは不器用で素直になれないだけだ。
そして、彼はあたしにとってはかけがえのない親友なわけで…。

「それと、あたしはヒューバートの彼女じゃないから。」

親友を悪く言われてムッとしたあたしは少しキツめの口調で言う。
マーレンはあたしの言葉に目を瞬かせた。

「えっ、はヒューバートと付き合ってるんじゃないの?」

「違うよ。ヒューバートとあたしは親友なの。お互いに恋愛感情なんて抱いてない。
それに、あたしはまだ彼氏が欲しいとか考えてないよ。目標に向かって任務を全うするので精一杯なの。」

「ご、ごめんね。勘違いだったんだね。うちの部隊の人たちにも言っておくわ。」

あたしたちが付き合っていないとようやく理解してくれたマーレンが慌てて頭を下げる。
マーレンが部隊の人にも伝えてくれるのなら、恋人疑惑は晴れるだろう。
それよりも、問題はヒューバート個人の事だ。

「マーレンってヒューバートと同じ部隊なんだよね?」

「ええ、同じ部隊よ。」

あたしは部隊内での彼を知らない。
あたしのいないところでは、どんな感じで過ごしているのかなんて、今まで考えた事もなかった。

「ヒューバートって部隊でどうしてるの?みんなにあんまりよく思われてないの?」

マーレンは口に手を当てて、ゆっくり目を細める。

「彼、いつも無表情だし無愛想だし…みんなもなるべく近づかないようにしてるかな。」

あたしの親友はなかなか評判がよろしくないようで。
避けられている、ということはヒューバートはいつも独りでいるってこと?

「そう、なんだ。」

ヒューバートは確かに無愛想かもしれないけれど、本当は優しいんだよ。
それに、よく笑ってくれるんだよ。みんなそれを知らないだけ。
なんだか、あたしと友達になる前に戻ってしまったのではないかと心配になる。
あの時のヒューバートは友達と呼べる人がいなかったから寂しかったと言っていた。
だから、今もそうなんじゃないかって…。

「誰とも仲良くしようとしないヒューバートがだけとはいつも一緒だから
付き合ってるんじゃないかって噂になってたの。はヒューバートの特別なんだね。」

「…そう、なのかなぁ。」

マーレンの言うとおり、あたしだけがヒューバートの特別なのかなって思ったらなんだか心が躍った。
だけど、それじゃダメだってことも同時に思った。
この先もヒューバートが誰にも信頼されないままだとしたら?
軍にいる以上、このままではいけない。
なんとかみんなにもヒューバートを信頼してもらわなくては。



06:ツライ思いをさせたくないから




(マーレンは最近ここによく来るけど、任務、キツいの?)
(え?…あ、あー、それはのところに来ると治療ついでにお菓子もくれるでしょ?)
(お菓子目当てでわざと怪我するの…?)



執筆:11年1月16日