サレさんが私のフォルスについて知りたいと言ってきた。もとい、迫ってきた。ははーん、なるほどなるほど、そんなに私のことを知りたいんだねサレさんは。
「いやんばかん、そんなに知りたいのでしたら教えてあげますよ。スリーサイズからでいいっすか?」
「いや、そんなことはどうでもいいよ。僕はキミのフォルス能力について知りたいだけさ」
段々扱いがテキトーになり、スルーされることも多くなってきたかもしれない。ちょっと寂しいけれど、それはきっと私との距離が縮んでるって考えればそれは喜ばしい事だよね?
「私のフォルスっすかー……、それなんですけど、私自身もよくわからなくって! あはっ!」
まず、ここに来てから一度もフォルスを使う状況になったことがない。だから私でさえ、どういった能力があるのかなんて把握していない。
サレさんは一瞬呆れた顔をしたけれど、すぐにいつもの余裕そうな笑みを浮かべた。
「記憶喪失だから仕方ないか。でもひとつの街を滅ぼせるくらいなんだから、相当すごい能力なんじゃない?」
どうやらサレさんは私のフォルスに期待をなさっているようで。
それはそうだよね、街ひとつ滅ぼした(かもしれない)力を持っているのなら、サレさんはそれを利用したいはずだ。それを何に使うのかは、よくわからないけれど。もしかしたら、私のフォルスを使い、人々を服従させるのかもしれない。そして国を乗っ取り、新生カレギア国の誕生!? そしたらサレさんは王子様で、私はお姫様!? ――そんなステキな妄想をしていると、それを察したのかサレさんが私の鳩尾に拳をめりこませた。私はその場に膝をつき、ゴフゴフと咳き込む。怪我人になんてことを。
「とりあえず能力を使ってみてよ」
「はーい、やってみるっす」
サレさんに命令され、私はフラリと立ち上がった。意識を集中させ、私はフォルスを発動させる。
「メヨ、ノシタワ、ハンサレサ!」
――――。
おや? おかしいな、特に何も起こらないだと!? そんなバカな! フォルスの使い方、忘れちゃったのかな?
「何、今のは」
何も起きない事にイラついたのか、私が呪文を唱えたことが気に入らなかったのか、サレさんの眉間にはとても深い皺が作られている。おまけに声色も低い。
「呪文っすよ! 唱えた方が雰囲気出るかなぁと思いまして!」
「ちなみにその呪文って」
「はい! 逆から言うとサレさんは私の嫁っす! ウフフっ!」
「キモい。死ね」
心底嫌な顔をするサレさん。やだなー、私を助けてくれた時点で……いや、拾ってくれた時点でもうサレさんと私は一心同体だ。
「それで、何か効果はあったのかな?」
「いや、それが何も」
辺りを見回しても何の変化も見られず。結局、私のフォルスの能力は何かわからないままだった。というか、フォルスがちゃんと使えていたのかさえわからない。
「何のフォルスかもわからないんじゃ、使えないねぇ。どうやら、助けてやる価値もないただの変態だったみたいだね。あーあ、損しちゃったよ」
腕を組みながら部屋を出て行こうとするサレさん。やだ、どうしよう! このままじゃ私サレさんの役に立てない! 折角助けてもらったのに、恩返しも何も出来ないままサレさんに捨てられちゃう! というか、サレさんと離れ離れになりたくない!
「そ、そんな! いや、剣とか得意かもしないっす! サレさんよりも強かったりして!」
私が声を大にして言うと、サレさんがピクリと反応して立ち止まる。
「へぇ、そんなこと言っちゃうんだ? なら、今ここで試してあげるよ」
「え、今っすか」
「フフ、手加減なんてしてあげないからね」
いや一応私怪我人なんですけど。
執筆:12年5月19日