フォルスが使えない役立たずな私は、もしかしたら違う形でサレさんの役に立てるんじゃないかと思って、なんとなく剣技を披露することにした。すいません、本当は私に剣が使えるかなんてわからないです。ただサレさんに捨てられたくないだけで、咄嗟に口から出任せで提案してしまったのだった。

「うおおおおおおおお! サレさんの愛が激しいぜええええええええ!!」

「避けてばっかじゃ実力がわからないじゃないか。反撃してきなよほら!」

 サレさんが楽しそうに笑い声を上げながら容赦なく剣を振るってくる。私はそれを避けるのに精一杯で反撃どころじゃない。だけど、このままじゃサレさんに捨てられてしまう……それだけは避けたい!

「くぉっ! そうですね、そろそろ私もサレさんを攻めなくてはいけませんね――できればそれはベッドの上でしたかったっす!」

「死ねよクソ痴女」

 私の言葉に目を鋭く細め、うんざりしたように息を吐く。そして、先程よりも動きが早くなるサレさん。サレさんに攻められまくってる私。うん、嬉しい、嬉しいけれどこのままでは確実に負ける。

「いいいいいやああああ! サレさんに捨てられたくないです! ええい、魔神けーん!」

 何も考えずに技を繰り出した。今身体が勝手に動いたと言ってもいいかもしれない。私の技がサレさんに命中し、サレさんは剣を手放してしまった。サレさんの剣が宙を舞い、グサリと地に突き刺さる。こんなことができるなんて、記憶をなくす前の私は本当に剣を使えていたというのか。
 ――ていうか。

「……うそ。勝った、サレさんに勝った! ということは、私はこのままサレさんのお傍にいてもいいということっすよね? フォルスが使えなくても、お役に立てますよね!?」

「そうだね……まぁ、今回はまぐれだろうけど使ってあげるよ」

「はぁ、よかったっす」

 私はほっと胸を撫で下ろす。とりあえず、一安心かな。しかし、サレさんの表情は曇っていた。

「それより、今の技――どこの流技だい?」

 流技、と言われても。記憶をなくす前の私ならわかったかもしれないその答えは、今の私が知るはずもない。

「さぁ? 身体が勝手に動いたっすけど……どうかしたんですか?」

 私の言葉に、サレさんは苦笑いを浮かべた。

「いや。そういえば、そんなに動いて傷はもう平気なのかい?」

「おお、そういえば痛くないっすね。ん? あれ、傷が無くなっちゃってるっすー!」

 包帯をぺろっと解いてみれば、あら不思議。あちこちにあった傷は見事になくなっていた。痛みもなく、絶好調である。それを見て、サレさんは私の腕を取り、じっと見つめ始めた。

「やん、そんなに見ないで下さいっ、妊娠しちゃいますぅ!」

「傷を治す能力……もしかして、のフォルスの能力? ふーん、だとしたらがフォルス暴走で街を滅ぼしたんじゃなくて、別の犯人がいるのかな」

 シカトされた。
 とりあえず一人でぶつぶつ言ってるサレさんの右手に、先ほど私がつけたであろう傷を発見した。試しに「治れ」と念じて手をかざしてみたらサレさんの傷がすっと消えた。

「ふぅ、つまらぬものを癒してしまったっす。いや、つまらなくなんてないっすけどね」

 サレさんにニカッと笑いかけるも、またシカトされた。



執筆:12年5月19日
修正:20年12月3日