やばいやばい寝過ごした!
昨日遅くまでゲームやってたせいだろうか…。でも今度翔ちゃんと勝負するまでには上達してたいし…!
目覚まし時計はきちんとセットしたはずなのに、いつのまにか止められていた。
きっと起きる気持ちよりも眠気が勝ってしまい、寝ぼけてそのまま止めてしまったのだろう。なんてこった。
走りながら携帯を見ると、着信2件、メール1件。
着信の方は翔ちゃんとなっちゃんから1件ずつ。
恐らく待ち合わせの時間になっても現れない私を心配して掛けてきたのだろう。
メールの内容も大体予想はつくんだけど。
メールを開くと案の定、翔ちゃんからで『先に行ってるぞ』とだけ書かれていた。
やっぱりなぁと思いながら携帯を鞄にしまう…が、なかなか上手く入らずに苦戦する。
ちょっと、このタイミングでかよ!
やはり走りながらだと厳しいか…なんてのんきに考えていた。
だから、全く気付かなかったのだ、目の前に人がいたということに。
気付いた時にはもう既に手遅れだった。
「…う、わぁ!?」
「え…!?」
どんっ。
私は止まることができずに勢いよく目の前の人にぶつかってしまったのだった。
お互いに転んでしまい、私はぶつかってしまった人の上に乗っかってしまう形になっていた。
転んで擦りむけた膝の痛みよりも、突進してしまっただけでなく、
その人の上に乗っかってしまったことのショックの方が大きくて。
「ひゃあああああ!!ごごごごごめんなさい!大丈夫ですか!?」
慌ててその人から降りて、手を差し伸べる。
その人は綺麗な顔立ちをしていて、まるで天使のような美少年だった。
そして、うちの高校の制服を着ている…ということは同じ学校の人か。
やばい、私は天使になんてことをしてしまったんだ。
私が見惚れていると、差し伸べた手がパシンと音を立てながら払われた。
「…え」
払われた手を見て呆然としてしまう。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
「いきなり何?ちゃんと前を見ながら走りなよ」
転んで汚れた箇所を手で払いながら鋭く睨みつけてくる天使こと美少年。なんだこれ。
確かに前方不注意でぶつかった私が100%悪いよ。だがその態度は何だ腹が立つ。
美少年だからって調子に乗っているのか。
「…す、すいませんでしたー」
払われた手が地味にじんじんと痛む。
どんだけ強く払ってくれたのやら。
「ぶつかってきたのに、その態度?キミ最悪だね」
美少年はくどくどと毒を吐き散らす。
こんなに可愛い顔してるくせに、なんでこんなに刺々しいんだこの人…。
これ以上関わりたくないなぁ、と思い私はにっこりと笑った。
「あのー、怪我はないですよね?本当にすいませんでした。それではごきげんよう!」
そして脱兎のごとく、逃げ出した。
どうやら追ってくる様子はない。
もうあなたとは二度と会いたくありません!
どうか学校で会いませんように…!
執筆:12年05月31日